愛するってなに?

彼が私ではない人を愛しているのは、途中から分かっていた。

話している時は上の空、携帯は絶対に見せようとしないし、趣味じゃないと言ってアーティストの曲を聴いたり、比較するようなことを言い始めたり、忙しいと言われて約束を断ることも多くなった。

浮気している。

そう考えては、たまたま友人から勧められたんだ、たまたまそういう話をしているだけ、と頭の中で言い訳を並べて見ない様にしていた。

知らないモノが積み重なっても、彼の近くにいられるのならよかった。

本気で人を好きになったのが初めてだったから、その人が私の元から去るのが怖かったのだ。

怖かった、不安だった。

メッセージに並んでいく言葉がそれを表していた。

「じゃあ、今すぐきてくれるよね?

今すぐきてくれるよね?

こないんだ。

じゃあ、だめだね。

何が駄目なのか、わかる?

あー、やっぱりやめよう、嘘だよ。

冗談。

失礼しました。お騒がせしました。

ちゃんとした場所が無くちゃ駄目駄目。

ばいばいおやすみ」

よく分からない言葉の羅列。

今なら分かる。

ああ、確かに気持ちが悪い。

本人から「別れてくれ」と言われてしまうのも納得できた。

ただ、あの頃の私は何も分かっていなかった。

みっともなく縋りつくことも、泣くこともできず、ぽっかりと開いた穴を持て余しながら頷いて話を終わらせ、彼と会わなくなって好きがなくなった後に後悔と怒りを抱いた。

もう人を好きになったりするもんか。

男は皆、裏切るんだ。

今思えば、随分と子どもっぽいことを本気で思っていた。

歳を重ねるたびに、何であんなくだらないことを思っていたのだろうと余裕を持てるようになってきた。

そして、また私は恋をする。

だけど、初恋の時よりも厄介な恋だと分かっている。

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