アゲハ蝶を口に含む
子どもの頃、家のいろいろな場所に蜘蛛の巣があった。
自転車置き場だったり、ポストだったり、玄関の近くに置いてあった鉢植えだったり。
僕はその蜘蛛の巣を見つけては、近くに落ちていた棒切れでくるくると巻きつけて遊んでいた。
何も考えていない子どもだからだろうか、それを綿飴だと言いながら振り回していた。
小学生の時だったろうか、ある夏休みの日、幼馴染のせっちゃんが肩くらいある髪を後ろで一つに纏めながら「面白いことがある」と言って、僕に虫取り網を持たせ、アゲハ蝶を捕まえに行くことになった。
太陽の下で鈍い光沢を帯びた黒色があっちに行ったり、こっちに行ったりしている。
「面白いことってなーに?」
「ひみつだよ、あっくん」
せっちゃんは楽しそうに赤い虫取り網を笑いながら振り回して、アゲハ蝶を追いかけて捕まえていた。
僕も僕もというようにブンブンと虫取り網を振り回して真似をして蝶を追いかける。
「……あ」
ようやく一匹捕まえることができたのが嬉しすぎて、僕は網からだす時、アゲハ蝶の翅を潰してしまった。
ほろほろと崩れ落ちた翅と手に付いた粉みたいなのが気持ち悪くて顔をしかめる。
「あーあ、それじゃあ、エサにできないね。」
いつの間に後ろにいたのだろうか、せっちゃんがクスクスと僕の手を覗きながら笑っていた。
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