電話越しの君

 携帯に繋げたイヤフォンから楽しそうな声が聞こえてくる。

最近、彼女さんと別れたらしい。

「……もう一回、付き合いたいとか思わないの?」

 呟く様に聞けば笑い声が返ってきた。

「思うことは思うけど、それが重りになったら意味ないじゃん。付き合うってことになって、それが理由で別れたのに」

 ああ、それにっと彼は確認するように言葉を吐く。

「嫉妬ってくだらないじゃん。感情と行動はワンセットなんだよ。嫉妬したとしても、そこからどう動くかが大事だと思うんだよ。嫉妬するにしてもそこまで考えないと。……好き勝手に生きた結果、誰かが我慢するのは違うじゃん?」

「嫉妬したり、するの?」

 純粋な疑問が口からこぼれる。

「んー、するよ? 嫉妬も嫌いも好きの一部でしょ? 好きだから嫉妬するし嫌いになるんじゃない?」

「哲学的なこと言われた」

「えー?」

 ケラケラと笑う声が聞こえてくる。

随分と楽しそうだな。

「……じゃあ、もう恋なんてしないの?」

「うーん……それはないと思うな! だって、恋って楽しいじゃん? あ、俺と恋、してみる?」

「ふざける様なら切りまーす」

 待って、と引き止める声が聞こえない様に電話を切ってから息を吐いた。

熱くなった頬を覚ます様に、冷えてる手を押し付ける。

「……ばーか……」

 冗談でもやめて欲しい。

「あんたみたいな浮気者、好きになったら困るのは分かってるんだから」

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