「例えば」

例えば、そう例えば。

自分が女ではなく、男であったならば私は君を抱きしめて笑うことができただろうか。

友人のフリをしなくても、よかったのだろうか。

手を取り、引っ張ってあげることができただろうか。

同じものを持って、笑いあうことができただろうか。

好きなものを好きと言って分け合うことができただろうか。

「だいすきよ」

 口に出す言葉を選ばないことができただろうか。

「はい、先輩。私も先輩が大好きです」

 本当は全て見透かされてるのではないだろうか。

そう思う時もある。

きっと不安に思う気持ちが、そう思わせているんだろうけど。

「おいで」

「……はい」

 頬を染め、私の言うことを素直に聞いてくれる君が可愛い。

これは恋情なのか、家族愛なのか、友情なのか。

まだ、私には分かっていない。

だからね、隠し事をしながら抱きしめる私を許してね。

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