雨が降る公園
静かな夜だった。
雨が降る前のじめじめとした空気と、野良猫だろうか、黒い影が此方をじっと見ている。
街灯の本数が少ないのか、公園の中心まで明かりは届いてなかった。
冷めてしまった唐揚げを片手に、りんご飴を頬張りながら、
「天気予報によると今日は降らないって言ってたし、前回のリベンジ!」
と、言えば困ったような笑い声が聞こえてきた気がする。
「俺ね、こうやって、君と遊びに行くのが大好きで、夏になったら一緒に海にも行きたいし、冬になったらちょっと遠出して旅行に行くのもいいなって思ってて」
ひょこひょこと動きに合わせて、結んである前髪が犬の尻尾のように嬉しげに揺れた。
後ろから聞き慣れた足跡が聞こえてくる。
「君の口から親友だって聞けて、本当に本当に嬉しかったんだよ? 俺はね、ずうっと前から親友だって思ってたから。だからね、君も認めてくれて、俺と同じ気持ちだって分かって本当に本当に嬉しかったんだ」
へにゃりと恥ずかしそうにユキトは笑う。
街灯の明かりが届かないからか、後ろにいるはずの彼の顔がよく見えない。
「だからね……これからも君の親友でいたいし……できたらね、できたらでいいんだけどね、俺、君のヒーローになりたいんだ……」
彼の口が開いたのに音が聞こえてこない。
天気予報では雨は降らないって言ってたはずなのに、ぼたぼたとユキトの頬に水が落ちる。
「ねえ……聞こえないよ……」
ごとんっと手からりんご飴が落ちた。
「約束したんだ、約束したんだから守らないといけないんだよ……」
笑顔を作るために引きつった口元で言葉を紡ぐ。
本来伸ばされてる手が未だに来ないことが限界だった。
「……どうして、俺を残していっちゃったの……」
彼の名前は空気に溶けて消えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます