なんか気になりだしたらずっと気にしてる
俺は再び愛香の隣に座っていた。
「び、びっくりしちゃった……そうなんだぁ……」
「な、なんだその顔はっ」
こんなにやにや顔の愛香って見たことあったっけ? 顔崩れるっていうほどまでではないが。
口元にあった右手は、今右ほっぺたに添えられてある。
「蛍雪くんが、唯菜のこと……ふふっ」
「だからなんなんだその顔ぉ~!」
こちとらこんなに気持ち爆発しとんじゃーい!
「えへ、ごめんねっ。でもそっかぁ~」
(だからって改めてこっち見られると、それはそれで)
説明しよう! 唯菜とは
妹とはいっても、なんと! 愛香と唯菜は双子なのである! 我が学年には双子は二組いて、そのうちの一組が皆月姉妹。
顔はそっくり。身長もほぼ一緒。驚いたときとかもほぼ同時に似たような反応するし、髪型もこれといって決まった髪型をしているわけでもないので、
だがしかぁーし! 幼稚園のころから唯菜と愛香と遊んできた俺様ともなれば、一瞬でどっちがどっちなのかもわかるんだぜ!
まず声の感じ。顔の表情、特に目元辺り。笑ったときの感じ。しゃべっているときの一瞬の間の感じ。確かにそっくりはそっくりだから、感じ感じ~ばっかりだが、それでもわかるったらわかるんだよっ!
(たぶん最もわかりやすいのは、寝癖っぽいの? たまに髪がぴょこっと出てるときがあるのは、唯菜の方が多い)
あとこれはちょっとしたポイントなんだが、俺の嘉戸崎は『かとざき』で、皆月は『みなつき』である。かとさき&みなづきじゃないからなーはいここテスト出るよー。
「唯菜の、どんなところを好きになったの?」
(あ、愛香が、す、す、す、とか、そんなこと言ってる)
「ど、どんなって言われてもな……気づいたらって感じというか、いつの間にかっていう感じとか、そんなんだしなぁ……」
「そっかぁ」
「なんか。見つけるとドキってする感じか?」
俺何言ってんだろ。チョコ食べよ。うま。
「わぁ~っ。ずっと前からそうだったの?」
もぐもぐごっくん。
「それがよくわかんねーんだよなー。言われてみればそんな気もするし、でもよくわかんないし、でも文化祭らへんのときは明らかになんか俺変だったし」
なんていうか、家にいててもすげー唯菜に会いたいと思うようになった。
文化祭は先月あった。一緒に舞台発表の準備頑張った。盛り上がった。よかった。
「唯菜も、もしかしたら蛍雪くんのこと、好きなのかなぁ」
「ぅえぇ!?」
見てる感じでは特に変わった様子ねぇぜ?!
「蛍雪くんとおしゃべりしていたら、楽しそうにしているもん」
「そ、そんなもんか?」
「うん」
そりゃまぁ、どうせ遊ぶなら楽しんでもらえるように~とかくらいは思っているがっ。
「お付き合い、しちゃうのかな~」
「ぉつきっ?!」
愛香はクッキーサンドバナナ味を開けてもぐもぐし始めた。
「や、やっぱこれ、ぉ、ぉつき、する、あれ、だよな」
何言ってんのかよくわかんないが。
もぐもぐごっくんした愛香。
「うんうん。両想いだったらお付き合いしなきゃねっ」
「りょりょりょぉおもっ」
なんかさっきからよくわからん単語を愛香から聴かされまくってんだが!?
「蛍雪くんは、告白……したい?」
「こくはっ!! よ、よくわかんねーけど、でも、なんか、一緒にいたい」
「わぁ~っ」
また右手がほっぺたへ。
「なんか。なんかさっ。なんかよくわかんねーから! だから愛香に相談してみたっ」
俺は立ててたひざを下ろしてあぐらの体勢に。
「うん、もちろん応援するよっ。私は唯菜のお姉ちゃんだし、蛍雪くんのことも、大切だもん」
「愛香ぁ~」
やはり持つべきものは友!! 愛香は両手ぐーで気合入れてくれた。
「……でっ。俺はどうしたらいいんだ?」
「う~ん。応援するって言ったけど、私もこんなこと、初めてだから……」
お気持ちだけでもありがてぇぜっ。
「でも唯菜なら、たぶん大丈夫だと思うよっ」
ぇ、唯菜は俺のこと……その、そんなにそんな感じなんだろうか?
「そ、そんなに唯菜は、それ……大丈夫そう、なのか?」
「うん。男の子のお話をするときは、蛍雪くんのことがいちばん出ていると思う。蛍雪くんとおしゃべりしていると、いつも楽しそうだし。その後でも、しばらく楽しそうな感じだよ?」
「そっ、そうだったのか……?!」
俺そん時しゃべれたぜいぃいやっほぉーぅ! で心ん中大忙しっスから!
「私も楽しいから、自信持っていいよっ」
また両手ぐー出してくれた。
「まぁ、愛香がそこまで言ってくれるんなら、間違いないんだろう」
遠慮なく双子のお姉ちゃんの言葉を信じさせてもらうぜ!
「蛍雪くんは、すぐにでも唯菜とお付き合いしたいの?」
「すすすすす!?」
すぐ!? それはすぐすぎないか!? あいやすぐすぎないのがいいのかだめなのかもよく知らないが!
「文化祭から二週間は経っているもん。その間、ずっとそのくらい好き……だったんだよね……?」
俺は…………黙ってうなずくしかできなかった。
「じゃあ……告白、した方がいいと思うなっ」
「ここおくこくぉこぉく」
うん、でも愛香からそう言われると、そうした方がいい気がする!
「ど、どうやってその、それ、すればいいんだ?」
「蛍雪くんが想っている気持ちを、そのまま言えばいいと思う。おしゃべりするの、得意そうだし」
「ちょ、これとそれとは違うような気があばばば」
確かに俺は、学校に行けばいろんなやつとしゃべりにしゃべりまくってっけどさ!
「蛍雪くんのこんな気持ちを、唯菜がお断りするところなんて、想像できないよ。だから大丈夫っ。きっと大丈夫だからっ」
やけに自信ありありだな愛香さんよぉ!
「そんなに俺っていいやつかぁ?」
「うんっ。私だって、いちばんおしゃべりしている男の子は、蛍雪くんだと思うもん」
「愛香もかよっ」
実ににこっとしている愛香スマイルである。
「どこで告白するの?」
「どっ!? も、もう場所決めんのか!?」
てかもうそれする流れなってんの!?
「私たちは幼稚園から知っているから、告白するならすぐにしても大丈夫だと思う」
「……く、詳しいっスね愛香さん」
「わ、私もあんまり詳しくはないよ。蛍雪くんじゃない、別の男の子からの相談だったら、もっとわからないことだらけかも。唯菜のことも、もちろんよくわかっているつもりだし」
「双子ばんざい」
声ではそう言いながらも頭の中ではこここくはゆゆゆいなにこくはくはくは。
「学校は……だめだよね。お外も……他の人に見られたら、恥ずかしいし……」
俺は恥ずかしいかどうかを突破して自分のことでいっぱいいっぱいすぎて~、ってなってるんだろうな、きっと。
「……やっぱり、唯菜のお部屋がいいのかなぁ」
「敵の本拠地で決戦だと!?」
そりゃまぁ幼稚園からの仲なんで入ったことくらいはあるが!
「今日は唯菜、いなかったよ」
「今日とか急すぎぃ!!」
思い立ったが吉日すぎやせん?!
「さすがに今日は急すぎるよね」
肩をちょっとだけすくめててへしてる愛香。
「じゃあ、来週の日曜日は、どうかな?」
「らららいしゅー?!」
来週?! 来週もう決戦なのか!?
「唯菜は用事、なかったと思うよ」
「そ、そっか」
でもそうだよな。平日学校の後とかよりかは、日曜日の方がじっくり戦えるだろうか。
「蛍雪くん、誘えるよね?」
「ぇ、あ、ぉう、おぅ」
あれ、これもう決戦決定系流れ!?
「頑張ってっ。蛍雪くんなら、きっと大丈夫っ」
両手ぐーがさらに縦にちょっとだけ揺らされていた。なんだか愛香の後ろから強烈な光が降り注いでいるような気がした。
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