MinoritieS→X編.3「NEW NEST-3」


「んじゃ、今日は解散!!お疲れ!私は寝る!!」

やけ気味に風凪がそう言っていたのを聞いて、私はPCの通話を閉じた。アメリカとの時差は地域により大きく異なるが、今の時間はどう足掻いても深夜だ。時間が悪いとはいえ、よく付き合ってくれたと思う。

それぞれが何かを話しながらそれぞれの帰り道へと向かう。阿澄さんの歓迎会に関してはまた今度ということになった。

「根性ない私ですが、……なんとかもう一度頑張ってみようと思います。」

「うん、これからもよろしく。」

阿澄さんのそんな言葉に私も応じた。

「では、これで。」

彼女の帰路につく様子を確認して私はほっと一息をつく。なんと言うか、いろんな意味で。

「『お稽古の時間』はもうとっくに終わっておりますよ?」

後ろからじいやの声がした。

「うわ、びっくりした。……ああ、そっか。」

なら、私もそろそろ帰ってもいい頃合いということだ。

「流奈。」

「ん、葉、何?」

相変わらず彼女は鋭い眼差しで私を見ていた。

「さっきの阿澄さんへの言葉、流奈にもそのまま言っておく。」

「…………うん。」

「じゃあ、これで。」

そのまま彼女も薄暗い道へと消えていった。

「全てが終わった時、勝つのはお嬢様か、それともか……私は楽しみでございます。」

じいやのそんな言葉に私は苦笑する。

「あなたって本当、お気楽ね。」

「いつだって、真剣勝負というものは傍から見たら娯楽でございますよ。」

「そうかもね。」

そう言って、もう一度少し笑ってみたけど、拭いきれないものばかりだ。

「……あとは私次第。」

今から飛び込む場所だって観客席から見たらエンタメにすぎないのだ。堅苦しく思う必要もないと考えても、そんな言葉がもう一度私に突き刺さる。


私と父の最大の戦いが始まろうとしていた。

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