MinoritieS→X編.2「NEW NEST-2」
「あなたに来てほしいところがあるんだけど。」
いまいち彼女の真意が見出せないまま、なんとなく私はこのまま帰るのが嫌な気がしてしまって、戸惑いながらも頷いてみた。
「こっち。」
そのままやや来た道を引き返してそのまま通学路を逸れていく。
「あ、そうだ、名前。」
やや路地に入った頃に彼女が聞いてきた。そういえば何も聞かれてすらいない。
「私、
「えっと…わたし、
「うん。」
やや彼女が頷いたのち、私は再び切り出した。
「あの…‥なんで私にこんな風に誘ってくれたんですか?」
少し彼女が振り向いたように見える。
「……あなたが、何かを変えたいように見えたから。」
「え?」
そのまま、スタスタと彼女は歩いていく。
何かを変えたいように見える。
私を見て彼女はそう言った。私自身はよくわからないけど、この状況を良くないと思えているのは確かだ。
でもそれだけで私に?
「ここ。」
考え込み、やや迷走気味の私とは裏腹に、式見さんは真っ直ぐに目的地に向かっていたようで、立ち止まって、顔を上げた。そのまま私も同じようにその先を見る。
「『NEST』……?」
その看板を見上げたのち、何かを言うわけでもなく、式見さんが
入口のドアを開けた。
目配せをしたので私もそれに倣っておずおずと中に入る。
「カフェ……?」
木造の建物内には全体として木の色をそのままに使った空間が広がり、淡い暖色の照明が優しく室内を照らしていた。
屋根の近くの窓から薄く日が差し込み、シーリングファンが回っている。
店内にはいくつかのテーブル席とずらっと並ぶカウンター席。
そして、それらの席にいるのは7人の同年代の女の子たちだった。
「お、言ってる間に来たか、ルナ。」
「あれ、そちらの方は?」
「新入り?」
やや私の存在にザワっと空気が変わったのを見て、式見さんのスッとした声が響いた。
「候補生ってとこ。」
「とか言って〜、どうせなんも言わずに連れてきたんでしょ?」
やれやれ〜とか語尾につきそうな感じでいかにも美少女って風貌の可愛い子が反応した。
「葉さんがまた怒りませんか〜?」
そう言って彼女は後ろのいかにも寡黙でクールそうな彼女に目をやった。
その人はジロっとこっちを…おそらく式見さんの方を見ていた。
「いつもの通りにやれば大丈夫でしょ、それに…」
私の方を少し見た。
「私の練習に立ち止まってくれた人が『私たち』の音楽を嫌いであるはずはない。」
ギョッとするような言い方。
「その自信どっから来るんですかほんとに…」
それでも特に他の人たちが何か特別な反応を示す訳でもなく、全員が立ち上がると、なんかいそいそと準備を始めた。
とりあえず手近のカウンター席に腰掛ける。
「ドリンクはいるかな?」
「はっ!?」
あまりに彼女たちの挙動に注目することに集中していたせいか、後ろのカウンターの中にいたその人に気づかなかった。振り返るとそこに老紳士が立っていた。
いでたちはいい意味で年不相応の腰のまっすぐさに加え、顔に十分に蓄えられ、綺麗に整った白い髭が綺麗さを引き立てる。こういう年の取り方も良さそうだよねと思わせてくれるタイプの老紳士だった。
「え、あ、え、えーと、ちょっと時間もらっていいですか?」
「はい。ごゆっくりと。」
やや頭を下げて、再び老紳士はグラスを拭く作業に戻ったようで、そのまま私はカウンターにひっそりと立つメニューを見つけて、眺めだすとどこからともなくくつくつと笑い声が聞こえてきた。
「……あまりそういう笑い声を立てるものではありませんよ。」
「ふふっ…だってちょっと面白かったんだけど、おじいちゃんにあのギョッとしてたあれ。」
「うん?」とあたりを見回すと、カウンターの4席向こうにノートPCとウェブカメラが置かれている。荷物といつの間にか置かれていたお冷やを近くに動かすと、どうも最近話題のネット会議アプリケーションが起動しており、ユーザー名に「Huna Yamakita」とある。
「お、」
私に気づいたのかそのままそのフウナさんの画面がカメラ映像になる。
「ヤッホー、初めまして候補生ちゃん。」
「あ、は、はい、どうも…」
「ルナから何も聞いてないんでしょ?」
「あ、いやその…そうですね、はい…」
ほぼ何にも聞かなかった私もそれはそれでどうなんだと思うんだけど。
「まあ、ルナはあんな感じの傾向にあるから気にしないでいいよ。」
急に映った映像にはどこかの暗闇の中ににぽつんと一つの光と共に置かれた、どちらかというと浮かんだようなとも言えそうな形で一台のピアノが置かれていた。
眼前の人物はやや値の張る1着とも取れそうなドレス風の服に身を包み、黒い髪にゆるくウェーブがかかっている。
彼女の居場所がわからない上に、自然光のない暗闇のせいか、彼女のいる場所に時差すら感じてきた。
「候補生ちゃんって器楽はやったことあるの?」
ごそごそと準備を進める彼女は何気ない感じで聞いてきた。
「あ、えっと一応…経験はあったというか…」
「ふーん、やってた楽器とかは?」
「えっとその…………バリトンサックスを。」
そこでグラスがチンと鳴った。
「おー、またすごいものやってるねぇー。」
「いえ、そんな全然………私なんか全然吹けませんし……それに…」
それに、と言いかけてしまい、その先を空振りながら探っている。
「なんかあったの?」
いやにもごもごとしていた私に何かを感じたのか、画面越しの彼女はこちらを見て首を傾げた。
「いや、その……今日退部したので。」
「おー、それはそれは。」
ガタガタと椅子を動かすとピアノの前にそれを置き、そっと彼女は座る。それすら気品あるなと思った。
「ねぇ、候補生ちゃん。」
「はい。」
「音楽に本当に必要なものってなんだと思う?」
スピーカー越しのピアノがタランと喋るように鳴った。
「え、えーと……」
突如ふりかかる難問に手をこまねく。数学の文章問題はとりあえず一旦飛ばすような私には今代わりにできる問題はなかった。
それに一瞬気を取られた私はドラムスティックのカウントに遅れて反応した。
振り返ると同時に私は音に包み込まれた。
「!?」
圧倒されるほどの音が眼前に迫ってくる。呆けたのは束の間、私はその正体を理解した。
(「My First Stories 9」の……「黄金美の激唱」!)
ゲーム界屈指とも称される名戦闘曲の一つであるそれが軽やかなアレンジと私の耳に飛び込んできたのだった。少し辺りを見ると先程のPCの画面越しの彼女がピアノを弾いている。それと同時に彼女がスッとメロディパートへと動き出した。管楽器の鮮やかで強いイントロから移り変わっていく。
ややピコピコ調の名残の残っていた原曲がピアノの奏でる軽やかな足音でアレンジされていく。
「すごい…」
画面の向こうの彼女は鍵盤の上で踊るように動く指とともに微笑んでいた。やがて聴き入っていたそのメロディに一本の聴き馴染みのある音色の旋律が入っていく。
「式見さんのヴァイオリン…!」
揺れていた。彼女の持つその艶めくような飴色の楽器が音を響かせるとそれは空間全体を揺らしていく。ゲームの中の戦闘コマンドを選ぶ画面を越えて、確かな強さを持った音が私の耳に届いていた。
やがて曲が一巡したのちに少しずつ曲自体の移り変わりに入っていく。糸のようにメドレーでつながっていったその先の楽曲に変わると彼女達の音の様子もまた一変した。
(これ…「穿てレオン・ギドラス」だ…!)
「時のマグネロシリーズ」のライバルキャラ「レオン・ギドラス卿」との「時のマグネロ -雨と雷の物語- 」での戦闘曲。古今東西で多くのアレンジが施され、私自身も動画サイト「Emi-aim.net」の投稿で何回も聞いたが、彼女たちのアレンジもまた新鮮だった。迫力のある重低音と管楽器や弦楽器でギドラス卿の不気味ながらも冷徹でクールな印象を上乗せして、原曲の持つどことないキャッチーさをパーカッションと…あまり聞き馴染みのない音で彩りのように加えていく。
(すごい、すごいすごい!!!)
ダンっと最後の音が鳴ると一瞬あたりが凄まじいほどの静寂で埋め尽くされ、ワンテンポ遅れて私の拍手の音が響いた。
圧倒されていた。私はいくら言葉にしようにも稚拙で矮小な表現に落ち着いてしまいそうで、ただ拍手のみが現れた。
「ふふっ、お気に召したようで。」
画面の向こうにいたピアニストの彼女は茶化すように言った。
「それで、なんだと思う?」
えっ、と思うが、おそらく曲の前に放たれたあの質問だろう。
「楽しさ。」
それを繋いだのは私の眼前にいた式見さんだった。
「私たちはそれに楽しさを見出すことが必要だと思ってる。」
「楽しさ……」
「伝統、格式…構成……いくらでも主義主張があるけど、誰かがそれを最優先にするくらい、私たちは楽しさを求める、それだけ。」
その言葉を反芻するあまり、私は今までの景色を思い返す。
「ねえ、それは楽しかった?」
見えない誰かの声が脳内を反響する。でも、それって、
「それは理想じゃないですか…」
握る拳に不意に力が入る。わかっている、何も間違ったことはあなたは言ってないのだ。ただ、私に受け入れるだけの時間が欲しいだけ。
「そうね、理想よ。」
そのまま式見さんが続けた。
「でもそれは誰もが求めることができて、求めなきゃ手に入らないもの。」
わずかに一歩、私に歩み寄る。
「あなたにもできるよ。どんなに躓いたってきっと、音楽が楽しむことを拒んだりはしない。」
そうですよね、と安易に頷くこともまだできないままに目を伏していると、そのまま彼女が言う。
「なら、あなたが証明してみる?」
「え?」
「じいや!」
「はい。少々お待ちを。」
振り返った先にいる老紳士はそのまま何処かへと消えていく。
「え、急に、何を?」
「葉、彼女用の楽譜とか今ある?」
「ある。」
「え、え?」
あたりをキョロキョロとするしかない私を尻目に何かが進行している。
ステージの左後方にいた葉と呼ばれた
先ほどの目つきのきつい彼女(中性的な見た目をしていたので便宜上)から手渡された紙切れを式見さんは私にリレーしてきた。
「え、これ……」
見慣れた五線譜だった。そしてたぶんもうそう何度も見ることはないだろうと思っていたものだ。
「あなた用の……えーと、バリトンサックス用のさっきの楽譜よ。」
「え、いつ、え、え!?」
「ごめんなさい。さっきの『面接』、葉とじいやが聞いていたの。」
「め、面接!?」
先ほどのアレって何かの試験だったのか、という意味で画面の彼女を振り返って見る。というかアプリケーションに表示されている会議の参加者数が確かに明らかにおかしかった。
としたら、もしかしてあのグラスの音も何かの合図…?
「まぁ、うちのチームに入るかもってことでいくつかね。面接って言っちゃうとかしこまった感じになるだろうしってことで、雑談形式にしてたんだけど。」
うちに足りないポジションだったし、楽器もありそうだしねー、とにやにやとしながら言う。
「え、楽器……あるんですか?」
その時、カウンター席の横にある謎の扉がぐわんと開くと中から老紳士と真鍮の色を帯びた管楽器が出てきた。
「ございましたよ。」
「えぇ…!?」
見慣れた形と色をしていた。今まで吹いていたものとは違うけれど、確かにそれはバリトンサックスだった。
楽譜と楽器。そして面接をしたのだから次は恐らく………
「吹けってことですか。」
「できる?」
「……やってみます。」
動揺はしたが、不思議とどこか落ち着きもあった。いつもの手慣れたように楽器を扱い、肩からかけて手に持つ。
「マウスピースはこちらでございます。」
老紳士から手渡されたそれをはめ込み、楽譜を見る。
少し、難しいかもだけど。
ややゆっくりとそれを吹くと聞き慣れたいつもの音が響く。そして私の手で少しずつ黄金美の激唱が紡がれていく。たどたどしくも、少しずつ。
そこに弦楽器がやってきた。少し見ると隣の彼女がヴァイオリンを響かせている。
少しの間、セッションが響いていたが、それに触発されて何かが弾けそうな雰囲気が漂う。周りの人たちが少しずつ準備をした。
「1、2、3、4!!」
それを合図に、一気に音が響く。その瞬間わかったような気がした。彼女たちの求めたい楽しさとはこれだったんだと、私自身も気づいた、手が届いた。
拙い演奏かもしれない。まだ誰かに認められているわけじゃないのかもしれない。
でもそれでも、
この音を紡ぐ私たちが今は主役だ。
一曲をやりきった。
それの達成感とともに再び私に確かな手応えが戻ってきた。
私はまだ音楽が好きで、まだ何かができる。そんな感触全てが。
「ふっふーん、いいねいいねー、今のよかったねー。」
画面上の彼女が私たちに言う。
「そうね、どう?」
式見さんのがやや葉さんに目配せをする。
「……合格。さすが寺ヶ丘静央の吹奏楽部。」
「え、あっ……」
そうだ、制服だったと気づいたので、一瞬合格の意味をわかっていなかった。
「……あとはキミ次第。」
ぐるりと回り、私を見た。その目に一瞬私は身じろいだけど、しっかりと見据えた。
「阿澄灯、寺ヶ丘静央2年、担当はバリトンサックスです。よろしくお願いします!」
深々とお辞儀をした私にパチパチと拍手の音が響く。
「じゃあ、みんなも自己紹介しようか?流奈はしてそうだし、私から。」
画面越しにいた彼女は再び私を見た。
「
「あ、リーダーなんですね。」
てっきりヨウさんか式見さんがそうなのかと思っていたが。
「まあリーダーって言っても私がこのチーム始めたからなんだけどね。今は留学の関係で海外にいるんだけど、近々帰国すると思うよ。」
「海外留学…ピアノでですか?」
「そうそう、じゃあ次は誰かな?」
人知れず感嘆していたが、そのまま自己紹介が続く。
「
管楽器も弦楽器もできるなんて人間、世の中そんなにいないんじゃないだろうかと思うが。少なくともさっきのトロンボーンは物凄く良かったと思うんだけど。
「はーい、
オーケストラなんかでも打楽器系は意外と侮れない。タンバリンやシンバルなんかを操る彼女自身の技術もそうだが、それに彼女自身も華のある見た目をしてるなぁと思うし、さっきの黄金美の時のカウントも彼女だったけど、演出なんかでも貢献が大きいんじゃないかと思う。
この人も絶対すごい人だ。
「
どっちもできるってことは大分ギター歴が長そうという勝手なイメージが私の中にある。ちょっとハスキーだけど、低めな声もいいなと思う。バンドとかにそれこそいそうだけど。
「お、私かな?…
見たことのある顔の一人目。
私自身がサックスをやっていたことからわかるけど、純粋に本当にうまいと思う。さっきのセッションも私が初見であんまり上手く吹けてなかったのもあるけど、時にメインパートにもなるサックスの腕前の差は如実に感じていた。彼女はアルトサックスらしいから一概に比較はできないけど、教えを乞うたほうがいいかも知れない。
あれ、でも同級生って言ってたけど…吹奏楽部で会ってはいないはず…。
「ベース担当の
見たことのある顔の二人目。どおりで同じ学校な訳だと思うけど、彼女も別に吹奏楽部で見た訳じゃない。
ベース担当ってことでなにかと低音を担当する私とは似たようなパートをするってことだし、仲良くはできるかもしれない。
「あ、じゃあ次はうちか。ドラム担当の
ドラム・ピコドラ(?)担当の赤目梨花さん。
ピコドラって言うのは自作のドラムマシンみたいなものであるらしく、時にメロディも担当できるほどに音の特徴と応用力を持つ楽器(彼女談)らしい。自作の電子楽器は本当に私の知らない世界だ。
というか、髪の一房に赤メッシュなんて入れてる人、リアルで初めて見たかもしれない。
そしてヴァイオリン担当の式見さん、そして、
「
手を差し出した彼女に応じて私も握手をする。
「よもぎさん…」
「葉はシンセと私たちの曲のアレンジを引き受けてくれてんだよね〜。」
山北さんのその言葉に私は人知れず感嘆する。
ものすっごい大事な人たちばかりで、この9人、誰が欠けてもこのチームが成り立たないような、そんなバランスを感じている。
「よ、よろしくお願いします。」
「…うん」
寡黙な彼女が言葉少なに挨拶を終えたところで穂積さんが反応する。
「そういえば〜、10人になったらなんか発表するって言ってませんでした?」
「おー、そんなこともあったね〜、準備できてる?」
「うん。」
山北さんの声に式見さんが応じて、彼女は据え置きの楽器たちの方へと移動する。その方へと全員の視線が向いた。
「発表が2つあります。1つは…チーム名を変えます。」
「おー、マジで?」
「今の『Minorities』もいいと思うんですけど…」
遠見さんや涼川さんが反応する。
「安心して、別に大幅に変えるわけじゃない。私たちのスタンスが変わるわけじゃないから。」
式見さんは油性ペンを取り出すと楽器を挟んで向かいの白い壁に大きく何かを書いた。
「『MinoritieS→X』……それが新しい私たちの名前?」
「うん。10人になったからローマ数字のXを加えた。」
郷間さんが呟くと式見さんが頷いた。
「その矢印は…一体?」
私がそんなことを言うと、何も知らない他の人たちも考え込む。
「……装飾?」
「いや、装飾ではないでしょ…」
赤目さんが首を傾げてそんなことを言えば、穂積さんがすかさずツッコむ。
「この場所から次のステージへ。この『NEST』から『NEXT』へ。だからSからXへ矢印が伸びる。」
「なるほどね、面白いじゃん。」
からからと画面外の山北さんが笑った。
「で、その次のステージっていうのはなんですか?」
穂積さんが聞いたそんなことに式見さんが反応する。
「そうね、それに関しては事前に風凪と葉にも話は通したんだけど…それがもう一つの発表にもつながるの。」
2人を見ると、ニヤついてる山北さんに対して四方木さんは表情ひとつ変えていない。兎にも角にも式見さんが言うということらしい。
「『ガールズ・ネクスト・モンスター』……最近聞いたことくらいはあるでしょう。」
その言葉を聞いた途端、ハッと息を呑み、私自身がとんでもない場所へとこれから飛び込もうとしていることに気づいた。周りの空気もピンと弦を張りつめさせたように緊張感が漂う。
「………出るんですか?」
私が聞いたそんなことに式見さんが表情を変えずに答える。
「………そろそろみんなも、あてのない練習に飽きたでしょ?」
はーっという誰かの吐く息がしたのを皮切りに私以外のそれぞれの目の色が変わったような、そんな気がした。
「まーあ、帰国するのを決めたのって、それもあってのことでさー。」
山北さんのそんな言葉が聞こえてきた。
「でも、そんな大事なことなのに、最後の一人が私でいいんですか?」
「それも込みで決めた、ってちゃんと言えばいい?」
四方木さんが私を見てそう言った。
「もう一度言う……あとはキミ次第だから。」
キュッと胸を締め付けるようなそんな感覚を覚える。
きっと大変だ、辛くないわけなんかない。
もしかしたら私はもう一度嫌いになるかもしれない。
でも、もしもう一度ここで、この新しい巣の中で私は音楽を。
そう思えば、自然と私は深々と頭を下げていた。
「よろしくお願いします!!!」
その日、私はもう一度、音楽の力を手にした。
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