第263話 神域の守護者
それは前触れもなく突然現れた。
轟音と共にミラバス山の山頂火口から現れたのは、巨大な
翼を広げると、その大きさは80mにも達し、全高は優に60mを超える巨大な竜だ。
巨大竜が襲来するような災厄は想定していなかったが、魔物の襲撃や自然災害を想定して予め災害対応マニュアルを制定しており、それに従い従業員たちは
異変に気づいた護衛達が、すぐに迎撃体制を取った。
ステラはこれまでに体長30mほどのワイバーンやアースドラゴンと戦ったことはあるが、これほど大きなドラゴンと戦ったことはなかった。
しかし、持ち前の正義感で
他の
オレが『ゲート』で自室へ戻るとジェスティーナが待ち構えており、オレの手を引き一緒に屋上に駆け上がった。
そこには巨大な
「随分とデカい竜だな…
いったいどこから現れたんだ」
「火口から突然現れたのよ!」
ジェスティーナが説明してくれた。
眼下を見ると執事長のローレンとソニアを含むメイド達が、
その時、階下からナツナとミナモが現れてオレにこう言った。
「カイト様、ワイバーンに乗って
「危険過ぎないか?
ブレスの直撃を受けたら黒焦げだぞ」
「大丈夫です、十分に距離を取って近づかないようにしますから」
「分かった、ブレスの射程に入らないように十分に注意するんだ」
「はい、分かりました」
ナツナとミナモは、竜笛を使って森に隠れていたワイバーンを呼び出した。
2頭のワイバーンは、鳴き声を上げて竜笛に答えるとこちらに向けて飛んで来た。
そしてアクアスター・リゾートの屋上に着地するとナツナとミナモの姉妹を背中に乗せて飛び立った。
ナツナとミナモはワイバーンに乗り、空から
なぜ
女神フィリアは、神域に近づくなと再三言っていたが、もしかするとこの事を言っていたのかも知れない。
オレは、女神フィリアに電話を掛けてみた。
いつもなら3コールくらいで電話に出る女神フィリアが、今日に限って電話に出ないのだ。
う~ん、困った。
これは絶体絶命のピンチである。
オレとジェスティーナは、あまりの事に声も出せず、ただ見ているしかなかった。
いつの間にか、フローラやエレナ他、残っていたスタッフ全員がオレの後ろに集まり恐怖に震えていた。
いざとなったら、リゾートを放棄し『ゲート』で公爵邸へ逃げれば良いが、その前に何か手は有るはずだ。
その時、メイド長のソニアから、電話が入った。
「カイト様、
これから緊急退避しますが、カイト様はどうされますか?」
「オレたちは『ゲート』があるから、いざとなれば、公爵邸へ避難するよ。
それより、飛行船が離陸したら
「飛行船には、自動防御システムが付いていますので、その辺は大丈夫です」
「そうか、すまないが
「分かりました、私たちはとりあえず王都へ向かいます。
カイト様も無理なさらずに…」
そう言い残し、ソニアは電話を切った。
それからすぐに
それに気付いた
すると飛行船の自動防御システムが起動し、飛行船全体を強力な防御バリアが包み込むと
飛行船『空飛ぶクジラ号』は急速上昇を続け、あっという間に空の彼方へと消えた。
ステラは、
オレは何か
唯一頼りになりそうな二人の女神はエルメ島でリゾートの建設中であるし、女神フィリアからも連絡はない。
そうこうしている内にも、
残されたの手段は、イチかバチかになるが飛行船『空飛ぶイルカ号Ⅱ』の簡易反撃システムのみである。
『空飛ぶクジラ号』の自動防御システムは、
問題は『簡易反撃システム』である。
ワイバーン襲来の際は、見事に効果を発揮し撃退に成功したが、こんな巨大な
しかし、もう考えている暇はない。
オレは異空間収納から『空飛ぶイルカ号Ⅱ』を取り出した。
『空飛ぶイルカ号Ⅱ』は、安全装置が働き屋上の床30cm上空で静止した。
オレはハッチを開け『空飛ぶイルカ号Ⅱ』に乗り込むとジェスティーナたち、残っているスタッフを全員飛行船に乗せた。
「全員いるか確認してくれ」
するとジェスティーナが残りのスタッフ全員が居ることを確認してくれた。
「カイト、どうするの?」
「イチかバチかになるけど、飛行船の『簡易反撃システム』に掛けてみる」
「えっ、大丈夫なの?」
「ワイバーンの時はうまく行ったけど、攻撃されないと反撃できない仕組みだから、何とも言えないけど…」
もし『簡易反撃システム』が起動しなくても『自動防御システム』があるから、飛行船に被害は無いだろう。
しかし、攻撃されなければ反撃できないので、
オレは『空飛ぶイルカ号Ⅱ』を離陸させると、巨大な
既にオレの領地にある施設は、半分以上が破壊され、本館と湖岸側の主要施設が残っているのみである。
やがて、強力なブレスが放射され『空飛ぶイルカ号Ⅱ』に渦を巻いた2000℃の火焔が迫った。
その瞬間、自動防御システムが起動し、飛行船を強力な防御バリアが包み込み、
船内には、けたたましいアラートとアナウンスが響き渡った。
「本船は未知なる敵から攻撃を受けました。
これより、反撃を開始します、反撃を開始します。
衝撃にご注意下さい、衝撃にご注意下さい、衝撃にご注意下さい」
アナウンスが終わると船体の前部と翼部12ヶ所から、砲塔が迫り出し、反撃を開始した。
それは高出力レーザー砲であった。
敵と見なされた
そして畳み掛けるように小型ミサイルを発射した。
凄まじい爆音を立て小型ミサイルが全弾命中すると、さすがの
異世界テクノロジーの結晶である飛行船の強力な打撃力により、何とか
船内のアラート音は別の音に変わり、違うアナウンスが流れた。
「出力低下、出力低下…
緊急着陸します、緊急着陸します。
エネジウムパワー・カートリッジを交換して下さい」
今の攻撃でエネルギーを使い果たしたようだ。
オレは僅かに残った推力で飛行船ポートの上まで移動し、着陸ターゲットの真上に着陸させた。
オレはハッチを開けると飛行船ポートに常備しているエネジウムパワー・カートリッジを交換した。
簡易反撃システム起動時はリセットボタンを押す必要があるのを思い出した。
コンソールを開けると赤いリセットボタンがあり、それを押すとシステムが再起動し普通に飛ばせるようになった。
その間に護衛のステラと
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