第248話 シュテリオンベルグ公爵の内示
王都フローリアのクラウス国王から呼び出しがあった。
オレは『ゲート』を使って『秋桜の館』を経由し、国王の待つ謁見の間に向かった。
「陛下、お早うございます。
私に、御用でございますか?」
謁見の間にはクラウス国王の他、軍務大臣のリーン伯爵、内務大臣のブース子爵、王国親衛隊長のポラーレス男爵の4人がいた。
「おお、カイト殿、待っておったぞ。
此度の褒賞について事前に内示したいと思ってのう」
「褒賞でしたら、先日エレナを嫁にいただきましたので、それで結構でございます」
「そう申すな…
カイト殿が褒賞を貰わぬと、他の者が貰い難いではないか」
国王が言いたいのは、一番の勲功を上げたオレが褒賞を辞退すれば、他の者が貰い難いから貰っとけと言うことらしい。
そう言えば、くれる物は貰っておけと、ジェスティーナが言っていたのを思い出した。
「良いか、これは『内示』であって『決定』ではないから、他言無用じゃぞ」
国王は、オレに念を押した。
「
国王は、内務大臣に褒賞の内容を読み上げさせた。
「1つ、シュテリオンベルグ伯爵を2階級
はぁ?、オレが公爵?
オレは目が飛び出るほど驚いたが、内務大臣の話が続いていたので言葉を飲み込んだ。
「2つ、シュテリオンベルグ伯爵の公爵
「3つ、シュテリオンベルグ伯爵にハフナー公爵が使っていた王都屋敷とその敷地、並びにその使用人120名を譲渡する」
「4つ、褒賞金としてスター金貨20万枚を授与する」
オレは、余りの大盤振る舞いに、開いた口が塞がらなかった。
スター金貨20万枚は、日本円換算で200億円、一番最初に貰った褒賞金の4倍である。
続いて、今回の侵略戦争でオレと共に活躍したジョエル・リーン伯爵の褒賞案が発表された。
リーン伯爵は1階級
なるほど、クーデターの首謀者として反逆罪で失脚した貴族の爵位と所領、並びにその財産を褒賞に当てると言うことか。
国庫からは褒賞金のみ支出すれば良いのだから、さほど懐も痛まない訳だ。
各部隊の将軍には、武功に応じて爵位の
部隊長クラスや下士官クラスにも武功に応じ、褒賞金を授与する。
「どうじゃ?、カイト殿」
「はぁ、他の方々はともかく、私は明らかに貰い過ぎかと…」
「何を申す、国家存亡の危機を救ったのだぞ、そなたの勲功を考えれば、これでも足りぬくらいじゃ」
国王はオレの勲功を読み上げてみせた
◎情報大臣として各国の情報を集約して同盟軍の戦いを終始優位に進めたこと
◎王都における反逆者の特定と証拠収集、クーデターの事前阻止
◎王都近郊に潜んでいたデルファイ公国軍の秘密工作員炙り出し
◎デルファイ公国軍の侵攻阻止、並びに敵兵4万人の捕縛
◎ボム・ポーションや反重力クレーン付き漁網、デルファイほいほいなど、非殺傷兵器の開発
「カイト殿は、儂の娘3人とエレナを嫁にするのじゃから、公爵くらいの爵位でないと対外的にも面目が立たんではないか」
なるほど、国王はこの国の王女を3人も娶る男が伯爵程度の爵位では、釣り合わないと考えているのだ。
しかし、公爵ともなれば貴族のトップである。
ソランスター王国には、王弟であるアルテオン公爵家を筆頭に、アストラ、ヴェルシュターク、レイアース、ハフナーの5大公爵家があるが、ハフナー公爵家がクーデター未遂事件により失脚し、代わりにシュテリオンベルグ家がその一角を担うことになる訳だから、名実ともに相応しい家格に成らねばならない訳だ。
因みに、旧ハフナー公爵領は、王都の南西360kmにあり、セントレーニアよりやや広めの領地である。
豊かな自然環境に恵まれ、風光明媚な森と湖があり、中心都市のエッセンは、人口30万人の大都市で、魔道具製作や工業が盛んな職人の街として有名だ。
「褒賞の内示、
有り難く、頂戴致します」
「そうかそうか、ではこの内容で進めようぞ」
「ありがとうございます」
「ところでカイト殿、反逆者どもの刑が確定した」
「どのような刑となったのですか?」
国王は内務大臣に刑の内容を説明させた。
クーデターの首謀者であるゼノス将軍は、国家反逆罪により官位剥奪、財産没収の上、死刑が宣告された。
同じく首謀者であるハフナー公爵は、国家反逆罪により爵位剥奪、領地財産没収の上、死刑が宣告された。
ボルテーロ侯爵、ガメイ子爵、シュミット男爵も国家反逆罪により、爵位剥奪、領地財産没収の上、死刑が宣告された。
なお、彼らの計画に関与した副官や臣下、それに成人した直系の子や親は、身分と財産を剥奪され20年~無期の懲役刑となり、強制労働が課せられた。
その家族らは、王都から追放となった。
「う~ん、やはり、そうなりますか」
国家反逆罪は、それほどの重罪なのだ。
「ところで、ゴラン帝国の帝都が焦土と化した件は聞いておろう」
帝都レクサグラードにワイバーン30体余りが襲来し、
オレはワレン族の族長イシスが娘2人をオレの側女にするため来訪した際に、その話を聞いて驚いたが、彼らが復讐したいと言う気持ちも良く分かり理解をった。
「レクサグラード宮殿や官公庁が多い帝都の西半分が焦土と化し、復興には莫大な労力が必要じゃろうし、彼奴らは当分攻めて来れんじゃろうのう」示していた。
エルドバラン将軍は、帝都に皇帝を助けに戻ったが、帝都を襲った未曾有の災害に対処するため、皇帝の救出どころの騒ぎではないだろう。
また、デルファイ公国では、国王を始め公国の中枢にあった者らを全員捕縛し、ソランスター王国軍主導で暫定政権の樹立に向けて動いている。
暫定政権が安定化すれば、民間人主導で共和制の新国家建設を模索するらしい。
ソランスター王国軍4万人は、デルファイ公国の王都エルミーナに3ヶ月ほど駐留することが決まった。
国王は、一週間後、王宮の大広間で行われる晩餐会の場で褒賞を授与することを知らせ、その際は3人の王女とエレナ、アスナの5名の婚約者を伴って出席するが良いぞとオレに言った。
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