第171話 エルメ島リゾート開発会議(中編)
続いて宿泊棟以外の建物について説明を行った。
5.海中展望塔(マリンタワー)
・エルメ島沖300mの海上に直径16mの円柱形の海中展望塔を建設する。
・海上部10mは、カフェと土産物店、海中部15mは、海中展望室とする。
・展望塔中央部にエレベータと螺旋階段を設置して海中展望室への昇降に使用する。
・海中部分の円柱形の外壁は、厚さ70cmの透明なアクリルガラスを使用。
・陸上から海中展望塔までは橋を掛けて徒歩で行き来する。
・橋の途中にダイビングとシュノーケリング用の海面へ降りられる階段を設置。
・橋の途中にプレジャーボートと大型クルーザーの係留場所を設置する。
6.ビーチテラス&カフェ棟、砂上のレストラン&バー
・昼間はアクティビディのレンタル管理拠点とカフェとして営業。
・夜はサエマレスタ・リゾートの砂上のレストラン&バーとして営業。
・内部にはレストランの食事を提供できる本格的な厨房を備える。
7.リゾートスパ棟
・男女別の露天風呂とエステ&スパを建設。
・掘削工事を行い、温泉が出れば露天風呂に温泉を引く。
8.リゾートモール&ライブバー棟
・ショッピングアーケードのような3階建ての円柱形リゾート・モールを建設。
・1~3階はリゾートモールとして海産物や土産物、雑貨店を営業。
・リゾートモールに出店する店は、領内から公募し応募多数の場合は選考。
・3階と屋上は昼はカフェテラス、夜はライブバーとして営業。
9.天然のプラネタリウム(定員120名)
・丘陵地に寝転がって星を見るための天然の円形のプラネタリウムを作る。
・ゲストはリクライニング・ベッドに寝ながら、星を見ることが出来る。
10.従業員宿舎棟(5階建て3タイプ、男性棟120室、女性棟120室、家族棟60室)
・従業員用の宿舎として300室(360人分)を確保。
・5階建て宿舎3棟の中央に2階建ての食堂、休憩施設、男女別大浴場を作る。
11.その他
・各建物間は幅5~8mほどの舗道で結ぶ。
・各棟の移動は電動ミニバス(24人乗り)と電動カート(4人乗り)を利用。
・建物の共通仕様は、白壁、屋根は
12.アクティビティ(案)
・水中展望塔
・シュノーケリング・ツアー
・ダイビング・ツアー
・カヌーとシーカヤックのレンタル
・レジャーフィッシング(プレジャーボート)
・グラスボート・ツアー(アクリル製の透明ボート)
・サンセットクルーズ、サンライズクルーズ(大型クルーザー)
・ジップライン1(高層ホテル棟屋上~ビーチテラス間、全長780m、高低差75m)
・ジップライン2(低層ホテル棟屋上~ビーチテラス間、全長320m、高低差25m)
・天然のプラネタリウム
・スパ&エステ
・ウォータースライダー
・プールバー
「以上がエメラルドリゾート第1期計画の概要です。
説明だけでは分かりにくいと思いますので、実際に建物の中に入ってみましょう」
オレがそう言うと、会場は騒然とした。
「中に入る?、そんなこと出来る筈が無いだろう」
「何を言ってるんだ、まだ設計段階の建物にどうやって入ると言うのだ」
「まさか!、もう完成して、これから現地へ行くとでも?」
メンバーからは口々に非現実的な事を言うなと
「皆さん、落ち着いて下さい。
これを使えば、設計中の建物に入る事が出来るんですよ。
サクラ、皆さんにAVRグラスをお配りして」
「はい、畏まりました」
サクラは予め用意していた人数分のAVRグラスを一人ひとりに配って歩いた。
メンバーは、オレの言葉を
AVRとは拡張仮想現実(Augmented Virtual Reality)のことを指すのである。
少し大き目の眼鏡のような形状をしたAVRグラスを掛けると、両眼のレンズ部分に設計(BIM)データ内の拡張仮想空間が映し出され、建物の中を移動することが可能となるのだ。
眼鏡の端からは現実の世界が少し垣間見えるので、VR酔いすることも少ない。
AVRグラスの映像は限りなく現実に近いものだ。
「皆さん、AVR グラスをお掛け下さい。
今は、まだ何も映っていませんが、私がスイッチを入れると設計データの中の画像が映し出され、設計図の中の仮想空間を歩き回ることが出来ます。
これは拡張仮想現実と言う技術を応用したものです」
メンバーは、半信半疑ながらAVRグラスを手に取り、こんなもので本当に見えるのかなどと言いながらもAVRグラスを掛けた。
「実際に使用する前に、3点ほど注意事項があります。
1つ目ですが、AVRグラス使用中は、絶対に椅子から立ち上がらないで下さい。
歩き回ると壁にぶつかったり、転んだりする可能性があり、危険ですから絶対に立ち上がらないで下さい
2つ目、仮想空間の中で歩く時は、椅子に座ったままその場で足踏みして下さい。
そうすると仮想空間内を歩くことが出来ます。
3つ目、方向転換は椅子に座ったまま、向きたい方向に回転すると方向転換できます」
「皆さん、いいですか~、それではAVRシステムを起動しますよ」
オレはスイッチを入れた。
「おお~、何だこれは」
「まるで本当に島にいるみたいじゃないか」
「え、何コレ、本物みたい」
メンバーからは一様に驚きの声が上がった。
「はい、今皆さんは仮想空間にいます。
つまり、私が設計した建物の前にいると言うことです。
私もAVRグラスを掛けますので少々お待ち下さい」
そう言ってオレはAVRグラスを掛けた。
するとオレの目の前には鮮やかなエメラルドブルーの海が広がっていた。
このシステムの凄いところは、映像に合わせて音も再現してくれるところだ。
もちろん、ビーチの映像はオレが以前撮影してきた動画から合成されたものだ。
心地よい波の音や風の音、歩けばキュッキュッと鳴る砂の音まで再現され、
振り返るとプロジェクトメンバー全員が、オレの方を向いて立っていた。
着ている服は、全員現実世界と同じだ。
どういう仕組みか分からないが、AVRグラスを掛けると今着ている衣服や、体型、顔形までが精密に仮想世界に於いて再現され、現実と何ら変わらないように見えるのだ。
しかも全員がAVRグラスを賭けていない素顔の状態で仮想空間にいるのだから不思議なものだ。
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