第170話 エルメ島リゾート開発会議(前編)

 エメラルド・リゾート株式会社の第1回リゾート開発会議が市庁舎エルドラードの会議室で開催された。

 今日は出資企業のメンバーが全員集まり、エメラルド・リゾートの第1期工事であるエルメ島のリゾート開発プロジェクトの概要をオレが説明し意見交換するのだ。


 因みに第2期工事は環礁ラグーンの島クリスタ島、第3期工事はジャングルの島シュピーレン島の予定である。


 今回の会議にはジェスティーナとアルテオン公爵、アスナとリカールのバレンシア父娘、そして秘書のサクラも同行している。


 オレにハニートラップを仕掛け、資格停止処分となっていたロランドとマリエルのアランベルグ父娘も復帰し、この会議に出席していた。

 開会前に二人でメンバー全員に頭を下げ謝罪していたが、その後は何事も無かったかのように普通に振る舞っていた。

 生き馬の目を抜くほど厳しいと言われるセントレーニアの飲食業界で、アランベルグ・グループはアルカディア・グループに継ぐ第2位の地位をキープし続けているのだが、やはりこれくらい強いメンタリティがなければ、この業界では生き残れないと言う事だろう。


 今回の会議は3ヶ月前には開催が決まっていたが、オレは割り当て可能な全ての時間を建築デザインに割いて、何とかこの会議に間に合わせたのだ。


 壇上にある120インチのスクリーンにはパソコンの画像が投影されるようになっていた。

 また、会議室の大きなテーブル上には、ホログラフィ・プロジェクターで投影した、エルメ島の全景とオレがデザインした建物が3D映像で投影されていた。

 ホログラフィ映像を初めて見たメンバーたちは、腰を抜かすほど驚いた。

「カイト殿、これは何ですか?」

「すごい技術ですな~、まるで本物を見ているようだ」

 そう言ってゼビオス・アルカディアは、ホログラフィ映像の精巧さに感動していた。


 それもその筈、これはオレが作ったBIMデータを、2人の女神に提供してもらったホログラフィ・プロジェクターを使って投影した映像であるからだ。

 因みにBIM(Building Information Modeling)とは、コンピューターで現実と同じ建物の立体モデルを作成して、平面図や立面図、断面図、展開図、屋根形状、パース図などの図面の他、その建物に使用する壁材、建具、設備、部材、家具などの配置、性能、品番、数量、価格など建築設計で取り扱う全ての情報を一元管理できるシステムを指す。


「ゼビオス殿、この方がイメージが湧くと思いませんか。

 施工を始めてしまうと、後から変更するのは難しいですから、最初に実際の建物と同じような建築モデルを作成して十分に検討を行うのです」


「確かにそうですが、ここまで精工で凄い技術だとは思いませんでした。

 我々の世界の技術とは掛け離れすぎてて、頭が付いていきませんわい」とゼビオスは頭を掻いた。


「我々が思いも付かない技術を、カイト殿は当たり前に使っておられるが、貴方が同じ企業グループでホントに良かったと思います」と同業のエルビン・サエマレスタも驚きを隠せなかった。

 しかし、30分後に彼らが更に腰を抜かすほど驚くであろうことをオレは知っていた。


 メンバーのザワメキが収まったところで、設計者であるオレが説明を開始した。

「第1回エメラルド・リゾート開発会議にご参加下さいまして、ありがとうございます。

 本日は、資料は配布しませんが、映像で詳しくご説明して行きますので、ご質問等ござましたら、随時ご発言下さい」


 オレは、予め用意したプレゼンテーション用の動画を使ってリゾートの概要を説明した。

 スクリーンには、飛行船から撮影したエルメ島の動画が映し出されている。

「エルメ島は領都エルドラードの沖合30キロに浮かぶ全長4.5km、幅は最短部で2kmほどの小さな島で、海岸線は岬や湾など曲線部が多く周囲は16kmもあります。

 島で最も高い場所は海抜80mほどの緩やかな丘で、山と呼べるものはありません。

 鮮やかなエメラルドブルーの海は透明度が極めて高く、周囲にある環礁ラグーンで守られた浅瀬は熱帯魚の楽園で、手つかずの珊瑚礁が広がっています」


「今回の開発ターゲットは、東側に広がる全長3kmの白砂のビーチとその周辺部です。

 周りには南国ムード漂う椰子の木や、鮮やかな赤いハイビスカス、白と黄色のプルメリア、ピンクのブーゲンビリアも咲いており、まさに地上の楽園です。

 ビーチの東側は高さ20mほどの岬になっており、突端まで岩場が続き、その左右は白砂のビーチとなっています。

 今回エルメ島に建設するのは、16階建ての高層ホテル1棟、2階建ての低層ホテル8棟、ビーチヴィラ80棟、プライベートヴィラ21棟で総客室数533室の一大プロジェクトです」

 オレは、メンバーに3D映像を見せながら各建物の概要を説明していった。


 1.高層ホテル棟(16階建て9タイプ240室)

   東側の砂浜から内陸に約300mの位置に建設する。

  B1F 動力施設、浄水施設、倉庫、貯蔵庫

   1F フロント、レストラン、カフェ、バー、大浴場、プール、エステ&スパ

   2F ミニショッピンクモール、レストラン、カフェ、イベントホール

   3F スタンダード・トリプルルーム    18室

   4F スタンダード・フォースルーム    18室

   5F スタンダード・ツインルーム     24室

   6F スタンダード・ツインルーム     24室

   7F スタンダード・ツインルーム     24室

   8F スタンダード・ツインルーム     24室

   9F スーペリア・ツインルーム      21室

  10F スーペリア・ツインルーム      21室

  11F デラックス・ツインルーム      18室

  12F デラックス・ツインルーム      18室

  13F ジュニア・スイート(125平米)   12室

  14F エグゼクティブ・スイート(166平米) 9室

  15F プレミアム・ストート(250平米)   6室

  16F ラグジュアリー・スイート(400平米) 3室、スイートラウンジ

   RF 空中庭園、カフェ&レストラン、展望露天風呂


 2.低層ホテル棟(2階建て6タイプ8棟192室)

   砂浜と高層ホテル棟との間にテラス付きの低層ホテルを建設する。

   50~70平米のバス・トイレ・テラス付きの1~2部屋


 3.ビーチヴィラ(4タイプ80棟80室)

   ビーチから30m~40mの位置に建設。

   70~100平米のジャグジー・トイレ・テラス・ミニプール付き2~4部屋


 4.プライベート・ヴィラ(3タイプ21棟)

   東側の高台周辺とビーチエリアに建設する。

   各部屋は120~500平米のVIP専用ヴィラ


  ①エメラルド・ヴィラ(500平米) 1棟

   専用ビーチ、専用プール、海上展望塔連結型のテラス付の3階建てヴィラ

   海上展望塔の最下階は海の中の部屋があり水族館のように魚が見られる

   6ベッドルーム、リビングダイニング、ラウンジ、トイレ4、浴室1、ジャグジーバス2


  ②プラチナ・ヴィラ(240平米)  4棟

   専用ビーチと専用プール付き、テラス付きの3階建てヴィラ

   4ベッドルーム、リビングダイニング、トイレ3、浴室1、ジャグジーバス1


  ③ゴールド・ヴィラ(120平米) 16棟

   水上ヴィラタイプ、テラス付きの2階建て

   2ベッドルーム、リビングダイニング、トイレ2、浴室1、ジャグジーバス1

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