第130話  プールサイドの水着美女

 サエマレスト・リゾートのホテル最上階にあるプールからの眺めは最高だった。

 地上30mから眺めるビーチの白い砂浜と青い海のコントラストもさることながら、サマーベッドに横たわり、水と戯れる水着美女たちを眺めるのは最高の目の保養なのだ。


 ジェスティーナ、サクラ、ステラ、セレスティーナ、フェリン、リリアーナの6名。

 護衛が水着を着る必要があるのか、と言われるかも知れないが、周りに溶け込んで違和感なく警戒するのが要人警護の鉄則なのだ。

 サクラはスカイブルーのビキニ、護衛4名もそれぞれカラフルな水着を付けている。

 それぞれタイプは違うものの何れ劣らぬ美女揃い。


 たまには息抜きも必要だと、今日は一日休みにしたのだ。

 ヴァレンスとアーロン・リセットも誘ったのだが、王女殿下の水着姿を目にするなど不敬の極みと丁重に辞退されたのだ。


 そう言えば、ジェスティーナの水着姿を見るのは今日が初めてだ。

 白地にパステルカラーの花柄のビキニがよく似合っている。

 一糸まとわぬ姿は何度も見ているが、太陽の下、健康的な水着姿はジェスティーナをより魅力的に見せている。

 ジェスティーナの話では南国リゾートに行くからと、わざわざ特注した水着で、『やっとカイトに見せられた』と喜んでいた。


 やや細めだが、理想的なプロポーションに愛らしく美しい顔立ち、腰まで伸びた金色の髪を高い位置で結んで、動く度にハイポジションのポニーテールが揺れる。

 それはオレがポニーテールフェチと知った上での確信犯的犯行なのだ。

「どう、この水着似合う?」とジェスティーナ。


「とても素敵だよ、その水着、ジェスティーナの美しさを際立きわだたせてるね」

 オレは最大限の賛辞を贈った。


 それを聞いたジェスティーナは「ありがと…」と照れながら言った。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 午後からは水着美女たちを『空飛ぶイルカ号』に乗せてエメラルド諸島まで飛んだ。

 リゾート候補地として有望な3つの島、エルメ島、クリスタ島、シュピーレン島をジェスティーナとサクラに見せておきたかったのだ。

 距離70km、時間にして20分足らずでエルメ島の最も広い砂浜に着陸した。


 エルメ島の海は礁湖ラグーンにより、外洋からの荒波を消波し、熱帯の水中生物にとってはまさ天国パラダイスとなっていた。

 ちなみにラグーンとは、サンゴ礁により外洋から隔てられた水深の浅い海域を指す。

 エルメ島や周辺の島々は、元々は海底から隆起した岩礁帯に過ぎなかったが、気が遠くなるほどの長い年月を掛けてサンゴの死骸が堆積し形成されたのである。

 そのことでラグーンの外縁までは浅い海が続き、様々な種類のサンゴが生息し、その死骸が波に洗われて砕かれ、風化して堆積したのがエルメ島の白い砂浜ビーチであり、島そのものなのだ。


 その珊瑚の海で、シュノーケリングで熱帯魚を観察ウォッチしたり、異空間収納から取り出したカヌーに乗ったり、泳いだりと無人島のビーチを楽しんだ。


 夕方になり日が傾き始めた頃、オレは野営キャンプの準備を始めた。

 今日はこの島でテント泊の予定だ。

 オレは慣れた手付きでウィングタープとテントを設営した。

 竹集成材で出来たキャンピングテーブルをタープの中央に広げ、その廻りにキャンピングチェアを並べ、即席の砂浜のレストランをオープンさせた。

 さながらサエマレスタ・リゾートの砂上のレストラン『La Luna』のようだ。


 あとはウィングタープの両端にランタンを吊り下げ、テーブルにもキャンドルランタンを置いた。

 そして砂浜側には、バーベキューグリルと焚き火台を設置する。


 ステラとフェリン、リリアーナが焚き火台で燃やす薪代わりの流木や朽ちたヤシの木を拾ってきてくれた。


 市場で買った牛肉と魚介類をバーベキューグリルで豪快に炭火焼きにした。

 粗挽き胡椒と塩だけのシンプルな味付けだが、素材の持ち味が一番引き立つのだ。


 今日はビールはないので、赤ワインと白ワインで乾杯した。

 大自然の中、初めてのアウトドア料理の旨さにジェスティーナもサクラも感動していた。


 やがて、水平線に夕陽が落ちて、空はオレンジ色に染まり、その後は天上から群青色の夜のとばりが降りてきて、美しいマジックアワーの時を迎えた。

 刻々と変わる空の色を眺めながら、美味しい食材に舌鼓を打てるとは、何とも幸せなことだ。


 食事が終わると焚き火の周りにみんな集まり、他愛も無い話で盛り上がる。

 

 いつの間にか空には満天の星が広がっていた。

「うわ~、何この星空……」

 星の多さにジェスティーナが驚いている。

「これをジェスティーナに見せたかったんだ」


 砂浜に寝そべり、時を忘れて皆んなで星空を眺めた。

 そして流れ星が流れる度に、小さな声で願い事を呟くジェスティーナの横顔が可愛かった。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 翌朝エルメ島を後にし、シュピーレン島へ向かった。

 シュピーレン島はエルメ島から直線距離で3kmにある近い島だ。

 海抜570mの主峰を取り囲むように島の7割が山岳地帯で、そこから海へ向かい3本の川が流れており、一部の砂浜を除き、その殆どがジャングルなのだ。

 飛行船から眺めると手付かずの大自然が広がり、滔々とうとうと流れる川、その上流には、滝が数カ所あり、観光地候補としては有望である。


 シュピーレン島の比較的平坦な砂浜に飛行船を着陸させた。

 タラップを降りると濃厚な緑と水の匂いがした。


 この島のジャングルには、猛獣や猛禽類、爬虫類のたぐいが生息していてもおかしくない雰囲気だ。

 この島をリゾート化する前に、詳しく調査する必要があるだろう。


 シュピーレン島に30分ほど滞在し、次の島『クリスタ島』へ向かった。

 島と言っても『環礁かんしょう』と呼ばれるたぐいの島で、中央部は水深数メートルの浅い礁湖ラグーンで、それを囲むように珊瑚で形成されたリング状の陸地が続いている珍しい島だ。

 陸地も、せいぜい海抜5m程度で、嵐や高波の際には水没してしまうこともありそうだ。


 飛行船に乗り、上空から眺めるクリスタ島は絶景の一言だった。

 珊瑚の砂で形成されたリング状の陸地にはヤシの木と緑が生い茂り、その外縁部は群青色の濃い外海の色、内側の礁湖ラグーンはエメラルドブルーからライトブルーのグラデーションに珊瑚礁の白が交じり、綿飴のような薄い白い雲を纏い、まるで宝石のような美しさだった。


「なんて綺麗な島なの……」とジェスティーナが絶句してしまうくらいの美しさだ。

 女性たちは飛行船の窓から眼下の絶景に見とれていた。

 こんな美しい環礁に建物を建てるなら、水上ヴィラが似合うだろうなとオレは思っていた。

 水上ヴィラとは、浅い海に丸太などで土台を作り、その上に建てた豪華な宿泊施設を指し、それぞれの水上ヴィラ棟と島を桟橋で繋げて行き来できるようにしている。

 水上ヴィラはテラスから直接海に飛び込んだり、シュノーケリングが楽しめたり、プライベート感満載な人気宿泊施設なのだ。


 本当は『クリスタ島』にも1泊したいところだが、連れは女性ばかりなので、2日連続で野営と言う訳にも行かず、オレたちはそのまま領都シュテリオンベルグに戻った。


あとでジェスティーナとサクラと相談した結果、リゾート候補地としての評価は、エルメ島がS評価、クリスタ島がA評価、シュピーレン島がB評価と言う事になった。

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