第114話 ツインテールの天才美少女

 その夜、オレはジェスティーナと8階の居住スペースで過ごした。

 婚約者フィアンセなのだから、当然と言えば当然のことである。


 オレの居住スペースに来たのは今夜が初めてで、ジェスティーナは物珍しそうに部屋を見て回った。

 8階の居住スペースには、大きめの寝室にキングサイズのベッドが2つ、広いバルコニー付きのリビングとプライベートダイニング、書斎、応接室、パウダールーム、バスルーム、ウォークインクローゼット、カウンターバー、トランクルームがある。


「ここがカイトの部屋なんだ。

 内装もお洒落で私好みだし、気に入ったわ」とジェスティーナはニコニコしながら言った。


「この上はドーム型のペントハウスで、壁が透明になるから、ベッドに寝ころんだまま星が見られるんだ」


「へ~、それはいいわねぇ。

 ところでカイト、ここで一緒に過ごした女性は何人いるの?」


「えっ」

 オレはジェスティーナの言葉に動揺した。


「惚けても無駄よ、正直に答えて…

 婚約者フィアンセとして聞く権利があるわ!

 いつの間にかジェスティーナの話し方は、詰問調きつもんちょうに変わっていた。


 オレは観念して、これまでに関係した女性の名を上げた。

「え~っとトリン、アスナ、サクラ、ステラ、クラリス、エミリア、リーファ、あとはここのメイド数人かなぁ…」


「はぁ~?、呆れた…

 周りにいる女性、ほとんどじゃない…

 男ってみんなこんな感じなのかしらね~」

 ジェスティーナは首を横に振り溜息を付いた。


「オレが女性といると、何故かみんな言い寄ってくるんだよ」


「さすがはカイト、モテる男は辛いわねぇ」とジェスティーナは皮肉っぽく言った。

 オレは女戦士ヴァルキュリーの名を上げなかったが、どうやら彼女たちは『関係した女性』にはカウントされないらしい。


「ところで、今夜はわたしの相手をしてくれるんでしょ」と上目遣いでオレ見た。


「はい、王女様のお望みのままに」

 その夜、オレとジェスティーナは星の見えるペントハウスで深夜まで愛し合った。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 次の朝、オレとジェスティーナが8階のプライベートダイニングで朝食を取っていると、誰かがドアをノックした。


 オレがドアを開けると、そこに立っていたのはスーと、世話係のソフィアだった。

「カイトお兄ちゃん、おはよ~」


「お早う、スー、こんな朝早くからどうしたの?」

 スーの愛称で呼ばれるスージー・ローズマリーは、今日も金髪ツインテールで、天使が舞い降りたように可愛いい美少女だった。


「カイトお兄ちゃん、昨日、#ぱそこん__・__#見せてくれるって言ってたから、スー来たんだよ~」

 なるほど、オレは昨日そんなことを言ったのを思い出した。


「カイト様、お早うございます、スーがどうしてもカイト様の部屋に行くって聞かなくて…」


「いや、いいんだけど、まだ食事中なんだ」と言いながらもオレはスーとソフィアを書斎へ招き入れた。

 パソコンのある机の右側に椅子を2つ用意してスーとソフィアに座らせた。

 電源を入れるとスーは興味深げにモニターに見入った。


「へ~、これがパソコンって言うんですねぇ」とソフィアも物珍しそうだった。


「そうなんだ、難しそうだけど慣れれば簡単だから、ソフィアも一緒に覚えたらいいよ」


「それじゃ私も覚えますね」


 オレはスーとソフィアにパソコンの仕組みやキーボードとマウスの使い方、OSや表計算ソフト、Webブラウザの操作方法などを順に教えた。

 スーは質問もせず、食い入るようにオレの説明を聞いていた。

「どう?、スー分かる?」


「うん、お兄ちゃん、分かったよ。

 スー、やってみたいな…」と言うのでスーと席を替わった。


 背丈が120センチほどのスーには、椅子の座面が低かったのでクッションを敷いて高さを調整した。

 オレはパソコンを再起動して、先程教えた操作をやらせてみると、スーは完璧に再現して見せた。

 ソフィアは何度か質問してきたが、スーが質問することはなかった。


「カイトお兄ちゃん、#ぱそこん__・__#って面白いね~」とスーが笑っている。

 どうみてもスーは8歳くらいの小さくて可愛い女児にしか見えない。

 実年齢は12歳でIQ180の天才であることは理解しているが、実際にその能力をの当たりにすると、目を見張るものがあった。


 スーは一切聞き返すこと無く、全て完璧に記憶した。

 そして少ない情報から補完して間を埋める推理力にも優れていたのだ。

 ものの30分ほどで教えたことは全てマスターした。

 しかもブラウザでキーワードを入れて情報を検索できることを知ると、もの凄い集中力でWebブラウジングし始めた。

 たとえるならば、乾いたタオルが急速に水を吸いこむように、スーは知識を吸収していった。


 スーがパソコンに夢中になっているので、食事が途中だったオレはプライベートダイニングへ戻り食事を続けた。

 あんなに夢中になってパソコンに集中できるのだから、教えがいがあると言うものだ。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 食事を終えたオレは、幹部スタッフとの打ち合わせに出席するため、2階にあるミーティングルームに向かった。

 出席者はオレとアスナ、サクラ、エミリア、執事長のローレン、メイド長のソニア、それにバレンシア商会から転籍した管理職の4人クリス、セレナ、スタン、クレアの合計10人である。

 何故か部外者のジェスティーナもオレの席の隣にちゃっかり座っているが、それは気にしないことにした。


 議長は副社長のアスナだ。

「それじゃあ、会議を始めるわね。

 今日の議題は『設備・サービスの改善計画』についてね。

 みんなから提案のあった改善案をまとめたのがコレよ」

 そう言ってプロジェクターで壁に改善計画の一覧を映し出した。


 その内容は下記の13案だった。

 ◎新たな源泉を掘削し、ホテルの屋上に露天風呂を作る。

 ◎メインホールの一部を仕切ってブティックを作り、女性用の服を販売する。

 ◎ホテルのライトアップと舗道や樹木のイルミネーションを実施

 ◎予約システムの改善(部屋ごとの予約状況をカレンダー形式で表示したい)

 ◎定期的なステージショーの実施

 ◎飛行船による遊覧飛行サービス

 ◎エステ&リラクゼーション施設の設置

 ◎敷地内のトレッキング&ハイキングサービス

 ◎湖の中島まで往復ハイキング

 ◎湖畔でバーベキュー

 ◎季節の果物収穫体験

 ◎湖畔にプライベートヴィラ建設

 ◎中島にプライベートヴィラ建設


「随分と色々な案が出たなぁ」


「それじゃあ、上から順番に提案者に聞いていきましょう…

 1番目の提案者は、え~っとローレンさんね」


 ローレンが自分の案を説明した。

「皆さん、このリゾートには2つの温泉があるのはご存知ですね。

 しかも2つとも違う泉質で、それはこの一体が火山帯にあるお陰なのです。

 実は、この湖はカルデラ湖と言う分類の湖で大昔の大爆発で辺りの土砂が吹き飛んで、そこに水が溜まって今の湖が出来たのです。


 地下から噴出してきたマグマが、この辺りに溜まっていた水と接触して気化することで起こる所謂いわゆる水蒸気爆発と呼ばれる現象で、その破壊力は凄まじい物なのです。


 このリゾートの背後にあるミラバス山を中心とする周囲の山々は、現在休火山として火山活動は止まっていますが、その名残りで地下には膨大な量の地熱があり、地下水が温められて、それが地表に噴出すると温泉になるのです」


「なるほど、それで辺りを掘れば、また温泉が出る…とローレンは言いたい訳だね」

 オレはローレンの話が長くなりそうなので、途中で遮って結論に導いた。


「カイト様、まさにその通りでございます。

 しかも、この辺りはミラバス山の伏流水が湧き出す湧出口に近く、掘ればかなり高い確率で温泉に行き当たるのです」


「なるほど、それは分かったけど、掘るのにどれ位予算が掛かるの?」


「掘削装置は既にありますので、そのメンテナンス費用と消耗部品の交換費用、屋上まで温泉を汲み上げるポンプと配管の購入費、それと浴槽の建設と脱衣場や水道配管、排水、その他諸々で、概算でございますが、ソランスター金貨換算で120枚(円換算で1200万円)くらいかと思います」


「へ~、もっと掛かるかと思ったけど、それくらいで出来るんだ」


「はい、前回の2本の源泉は金貨100枚位でしたので、今回は屋上という事もあり2割ほど多めに見積もりました」


「よく調べてあるね、さすがは執事長だ、ありがとう」とオレはローレンをねぎらった。


「ローレンさん、ありがとうございます、それじゃ次の案に進みます」

アスナが議事を進めた。

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