第21話 踊る銀ねこ亭
即座にソニアとメイド2人が戦闘態勢に入る。
現れたのは冒険者崩れと思しき、ならず者3人だった。
「美女を
男たちは、こちらに近寄り挑発する。
やれやれ、厄介な奴らが現れたものだと思ったが対処せねばなるまい。
「お前らのような無礼者に食わせる物はない」
既にソニアとリア、レイの3人は短刀を抜き、戦闘態勢に入っている。
「お、ねえちゃんたち、威勢がいいな…
後で可愛がってやるからな、楽しみにしてろ」
ならず者のリーダーは舌なめずりしながらそういった。
「野郎ども、男は殺して構わねえ、だが女は生かしとけよ!」
そう言うと
男1人に女4人など、楽勝だと思ったのだろう。
ソニアたちは、訓練通りチームワーク良く反撃する。
相手は、かなりの
このままでは埒が明かないと判断し、オレはキューブを使うことにした。
キューブには自在に防御障壁を展開する機能があるのだ。
「ソニアたち、一旦下がれ」
オレの意図を察したソニアたちは引き返す。
オレが念ずると目の前に透明なキューブの防御障壁を展開した。
「女ども、逃がさんぞ」
そう言って、追って来た奴らは突然現れた透明の壁に激突し、鈍い音と共に地面に反っくり返った。
この状態を例えるならば、何も知らずに突進して、コンクリートの壁に激突したようなものだ。
奴らは、ようやく起き上がったが、一体何が起きたのか分からず呆然としている。
「な、何が起きた?」
ソニアたちが、すかさず、そいつらの喉元に剣を押し当てる。
「ひっ、助けてくれ」
ならず者たちが助命を嘆願する。
「命が惜しければ、武器を捨て、今すぐこの場から立ち去れ」
ソニアがそう言うと、ならず者たちは武器を放り出し脱兎のごとく走り去った。
こういう奴らが出没するかと思うと先が思いやられる。
オレたちは身を案じ、その日は周囲に防御障壁を張り、その中で寝た。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
翌朝、日が昇ると簡単な朝飯で腹を満たし、すぐに出発した。
4時間ほど、ひたすら走り、王都郊外で車を下り、徒歩で検問所へ向かう。
王都の検問所は、特に問題もなく無事通過し、いよいよ王都フローリアに入った。
この先は車が使えないので、どこに行くにも基本は徒歩となる。
まずは宿の確保が最優先課題だ。
王都フローリアは人口80万人ほどの大都会だ。
ちょうど祭の時期らしく、露店がたくさん並んでいた。
メインストリートから1本入った路地を歩いていると『踊る銀ねこ亭』という看板を見つけた。
居酒屋兼食堂を併設する宿屋らしい。
食事もとれるし、王都の宿はここが良さそうだ。
ドアを開けて中に入ると威勢のよい女の声がした。
「いらっしゃ~い。
おや、いい男だね~、食事かい、それとも泊りかい?」
女将と
「両方お願いしたいんだが、部屋は空いてるかな?」
「はいな、今ならまだ空きはあるよ。
2人部屋は2食付きで銀貨2枚。
相部屋なら2食付きで1人小銀貨3枚さ。
6人まで泊まれる特別室も空いてるから、そっちにするかい?
宿賃は、大銀貨3枚とちょっと高いけどね」
「じゃあ、2人部屋を3つでお願いしようかな」
「え~、カイトさま、みんな一緒の部屋がいい」とトリンが異議を唱える。
さすがに、それはちょっと勘弁して欲しい。
「オレは一人部屋が良いんだがな」
「ご主人さま、ここは防犯の事も考えて、同じ部屋の方が宜しいかと」
ソニアもトリンの意見に賛成のようだ。
そこに女将が口を挟む。
「部屋の中は3つの小部屋に仕切られてるよ。
夕食も名物料理、特別にサービスしちゃうからさ~、特別室にしときなよ」
「ね~、カイトさまぁ、そこに決めようよ~」
トリンは子犬のような目をしてオレに懇願した。
「ソニア、金の方は大丈夫か?」
「はい、全く問題ございません」
今回の旅では、金勘定はすべてソニアに任せているので、彼女が問題ないと言えば問題ないのだろう。
「それじゃあ、特別室で、とりあえず2泊でお願いしようかな」
「あいよ、2泊だね、まいどあり~。
宿賃は前金で大銀貨6枚だよ」
ソニアが巾着袋から大銀貨を取り出し、女将に支払った。
2泊で大銀貨6枚、日本円に換算すると1泊3万円くらいか、ちょっと高いな。
「それじゃ、部屋に案内するから、あたしに付いておいで」
そう言うと女将は2階へと通じる階段を上がり始めた。
階段を上がりながら女将に聞く。
「今日は祭りなのかい?」
「ああ、年に一度のフェスティバルさ…
大通りには屋台も出るし、山車が街を練り歩くよ。
明日の夜は花火も上がるから見に行くといいよ」
部屋は女将が言った通り、特別室には寝室が3つあり、それぞれに2人分のベッドがある。
調度品や寝具も思ったより上等だ。
「良さそうな部屋じゃないか。
それじゃ部屋割りはオレが決めるからな。
いいか?文句なしだ」
ソニアとトリンで1部屋、リアとレイで1部屋、オレは1人で寝るから」
「え~っ、トリン、カイトさまと一緒がいい~」
とトリンが駄々をこねた。
「こどもか?」
トリンはオレと一緒じゃないと安眠できないと屁理屈を
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