第13話 美少女錬金術師をスカウト

 オレはすぐに思い出した。

 そうだ、ステータス情報のイベント一覧だ。


 その場でステータスを開いて、イベント情報を見てみると、あったあった。

錬金術師招聘れんきんじゅつししょうへい、難易度D、HP1000、LP2000」

 おぉ、結構良いポイントだな。


 オレが突然黙り込んで、人指し指を宙で動かし、見えない何かを操作するのを見てトリンはポカンとしていた。

「錬金術師の弟子って言うことは、当然錬金術は使えるんだろう?」


「はい、私は師匠の元で10年間、厳しい修行を積みましたので、基礎錬金術はもちろん、応用錬金術もある程度は使えます」


「ほ~、なるほど10年も修行したのか…

 で、例えば、どんな錬金術が使えるんだ?」


「はい、例えばポーションですと、回復・治癒・増強系は全て作れます」

 トリンは自分のポーション・レパートリーを披露し始めた。

 ・スタミナポーション(体力回復薬)

 ・ヒールポーション(怪我治癒薬)

 ・キュアポーション(病気治癒薬)

 ・マナ・ポーション(魔力回復薬)

 ・ブーストポーション(瞬間増強薬)

「その他に、エリクサー(万能霊薬)も薬効20%までなら作れます」


「ほ~、色々と作れるんだな…

 勉強不足で申し訳ないけど、ポーションの需要ってどれくらいあるの?」


「ポーションは、民間薬と比較にならない位の効果がありますので、どこでも売れると思います。

 ですが、ポーションを作るには、原料となる薬草が必要です」


「そこまで色々できると言うことは、錬金術師としてキミは1人前なんだね?」


「はい、師匠からは、まだ半人前だと言われてましたが、私も16歳になり、成人は過ぎておりますので、もう1人前だと自覚しております」


 この娘、錬金術師として十分に使えるな。

 ここに住まわせてポーションを作らせ、どこかで売れば現金収入になるし、これはスカウトしない手はない。


「ところで君は、これからどうするつもり?」


「はい、どこかの国で錬金術師として仕官できればと思っております」


「そうか…、仕事探してるんだったら、うちで働かないか?

 それに君を助けたのも何かの縁だしな…

 オレの頭には『目指せイベントクリア』と言う言葉がチラついた。


「カイト様に仕官?、ですか?」


「そう、この館に居れば、少なくとも衣食住に不自由はしないと思うよ。

 ご飯も美味しいし、客間もたくさん空いてるからね。

 それに、お望みなら専用の工房も用意しよう」


「確かにご飯、美味しかったです。

 あの、失礼ですが、カイト様はご領主様なのですか?」


「あ、いや、どこかの国に属している領主ではないんだけど…

 まあ、領主って言えば、領主かもなぁ…」

 転生して女神様からこの館と領地をもらったと言う方が正しいが、それは伏せておこう。


「ここの暮らしに貨幣は不要だから、すぐに報酬は払えないけど、その内ポーションが売れるようになったら、働きに応じた報酬は当然支払うつもりだ。

 それにポーションの作成に必要なモノは、こちらで全部用意するよ。

 ソニア、何か問題あるかな?」


「特に問題はないかと存じます」


「悪い話では無いと思うなんだけどなぁ、どうだろう。

 あ、それに君、何でもするからご飯食べさせてくれって言ったよね」


「は、はい、確かにそう申しましたが、突然のお話なので、少々戸惑っております」

 トリンは黙りこんで考えていたが、暫くしてこう答えた。


「私、決めました。

 カイト様に救っていただいたこの命…

 私のような者で宜しければ、カイト様にお仕えさせていただきいと思います」


 こうしてオレの目論見通り、錬金術師トリンと主従契約を結ぶこととなった。

「あとで契約書を作っておくね」


「契約書なんて要りません」


「いや、こういう事は最初にハッキリさせて置いた方がお互いの為なんだよ」


「分かりました、それでは、これから宜しくお願いします」


 トリンが主従契約に同意すると、ステータス画面が開いてイベント達成のファンファーレが鳴り、『イベント達成おめでとう』の文字がスクロールした。


 そして少し間をおいて、今度はステータス画面のメッセージが点滅した。

 メッセージの内容はこうだ。

「錬金術師新規契約に伴い、消費LPが120ポイントに増加しましたのでお知らせします」

 なんと、錬金術師と契約するとLP消費ポイントがアップするのか?


 今回のイベントクリアでLPは2000ポイント増えたけど、基礎ベースポイントが毎日20ポイント多く消費されるのは痛い。

 もっとLPを稼がなければならないが、その方法は後でじっくり考えよう。


 それよりも、まずはトリンが住む部屋だ。

「ソニア、トリンの部屋、どこが良いだろう?」


「そうですね、とりあえず6階の真ん中の部屋は如何でしょう?」


「了解、ところでトリン、君の持ち物は何かあるの?」


「いいえ、何もありません…

 身に付けていた物以外、遭難した時に全て流されました…

 今、生きているだけでも奇跡です」


「そうか、何もかも流されてしまったんだな……

 必要な物があったら、ソニアに言って用意してもらうといいよ。

 あと、この館や部屋の使い方もソニアから聞いてくれ」


「カイト様、何から何までお気遣いありがとうございます」


「そうだ、トリン、今日の夕食は一緒に食べよう。

 色々と話も聞きたいしね…

 あと、トリンの世話は、ソニアに全部任せた」

 オレはトリンのことをソニアに丸投げした。


「それじゃ、また夕食の時に…」


「はい、カイトさま、それでは一旦失礼致します」

 トリンは一礼するとソニアの後について部屋を出て行った。

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