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(満たされない、満たされない、満たされない……飢え死にそうだ!!)


 闇に轟いた咆哮(ほうこう)。──いっそ、“無”だ。この世に只の一人生き残って、俺は………。




((──ずっと、どっかに穴が空いてんだ。“此処んとこ”に…。喰っても呑んでも満たされねぇ、これは何だ? それを満たすもんを、寄越せ………))






『──“希死念慮(きしねんりょ)”という。自殺願望とは違い、ただ漠然と死を望む思念の事だ』

 パチパチと焚き火が燃える。

『…俺は。死にたいのか………?』

『さあな』

パチンッと薪が小さく音を立て、ゆらゆらと揺らめく炎をただ見つめた。

『鵺、』

『……ん?』

『生きよ。』

『……………』

 ニカリと笑む。屈託なく──。






「アイツが言ったんだ」



『お前は。きっと、永く生きるだろうから。私の後には小夜に縋れ。小夜もいずれは子を生すだろうから、後々はその者らへとでも縋れ。なに、心配は要らぬよ。お前は強い妖だからな───』



 優人(ゆうと)は、膝を抱いて鵺を見やった。

「まだ。満たされませんか? 鵺さんは…」

「……よく、判んなくなっちまったな」

 優人はゆっくりと瞬いた。──きっと、千代(ちよ)……亡き自身の先祖は。鵺に自身らと寄り添わせながら、彼の胸に空いた心の穴を少しずつでも満たしてやろうと考えたんじゃないかな…。

「──くしゅっ…!!」

小さくくしゃみをして、首を竦めた優人を横目に鵺は一つ溜め息を吐いた。

 ふわりと首筋に巻き付いてきた鵺のファーを模していた、尾…?に驚きまた瞬いてから。優人は鵺を見た。


「…何だって、こんな子守り役を俺なんかに───…」


そう零して頭を掻いた鵺へ、クスリと笑って。優人は鵺の尾へと顔を埋(うず)めた。



「ありがとうございます──」




 

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