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     1.


 澄み渡った星空だけは現実味を帯びていた。白い息が温度の無い闇に舞う。止まった時間、欠落と継ぎ接ぎだらけの世界。この町は今も、あの日のままだ──。


「放火…が、流行ってるんですね。ここ最近………」

「へぇ?」


 時折、音のない砂嵐に画像が乱れ狭間が露出する。冷たく暗い世界の上に重なる色褪せた世界。その二つは荒い画質により拙(つたな)く継ぎ合わされ、誰に対するでもなく繋ぎ目は静かに平凡を装っていた。




「さっき、テレビで知りました。電気屋の」

「お前。何しに戻ってきた?」

「何って?」

 高等学校の屋上。フェンスへと凭れ、夜の街並みを漠然と眺めていた優人(ゆうと)はふと相手を振り向いた。

「ここが僕の生まれ故郷だから……じゃ、理由にはなりませんか?」

「戻る程の価値が?」

「分かりません…」

優人は視線を戻した。

「分からないけど──、」


「人を外れて、お前は何処へゆく?」


相手に対し、優人はそれに沈黙で返した。

「───分かりません。まだ……」









「鵺さんの姿のモデルは────千代(ちよ)さんのお兄さん…??」

「らしい。死別した兄だと聞かされた」

 屋上に二人、座り込んで他愛のない話から身の上話になっていた。

「最初は…、千代さんを利用する気だった?」

「ああ。手懐けて置いて、俺にもし都合の悪い事になったら食ってしまえばいいと思っていた」

「妖(あやかし)らしい発想だとは思うけど」

煙草を吸いつつ、鵺は目許で笑ってみせた。

「自身でも知らぬ内に徐々に転じて今の姿に至る。何でこんなホストかぶれになったかまでは知らないがな」

「ホストかぶれ…。自覚あったんですか」

「やかましい───」



 

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