第2話 紅末①

箱崎 紅末 (はこざき くすえ)は病弱だった。


毎月五万円もする薬を飲まないといけない基礎疾患の持主だった。学校の体育の授業は全部見学であり学校自体も休みがちだった。クラスでも友達と呼べる生徒は少なく、また中学3年にしては、胸部装甲は発育しており、しばしば男子の目線が気になる年頃だった。


それが何の因果か このデスゲームの2週目クエストからプレイヤーとして参加することになった。ある日の帰り道、教室を出ようとする際に、クラスのクイーンだった新堂衣宇に突然


「ねえ、箱崎さん。友達になってください」と言われて、訳の分からぬまま「ハイ」と答えると、この異世界に転移していた。


職業ルーレットで戦士(剣)という当たりを引いたものの、元の身体能力の低さからロングソードも持ち上げることが出来ず。最初のクエストではゴブリンすら倒すことができなかった。


3週目のクエストでは四谷が加わったものの、トロールの襲撃で新堂は捕食され、箱崎は左腕を食べられた。


四谷には「自分はゴブリン倒してランク上げをしてくるので箱崎さんは村にいて死なないでください」

と放置されるありさまであった。しかし四谷がゴブリン狩りをしている間に、村はトロールに襲われ、箱崎は村人を守る時間稼ぎの盾になってトロールに食べられた。


その後、四谷がトロールの攻撃をかわしつつゴブリンを倒しランク10になって料理人にジョブチェンジし、四谷の料理人スキルでトロールの胃袋を見つけ、それを包丁で切り裂いたおかげで、新堂と箱崎は蘇生し、なんとかトロールを対しクエストをクリアした。


箱崎にとって四谷のことは、このデスゲームに加わるまで、殆ど会話をしたこともないクラスメイトに過ぎなかった。ただ、助けてもらってことは感謝していた。


クエストクリア後、四谷と一緒に下校したが、四谷君の言っていることは、なんだかよくわからないが、とても深い闇を抱える少年と知った。




4週目のクエストが始まった当初、カドゥムレットというムカデのようなモンスターと戦った時、とどめを刺す手段として、四谷に「ロングソードを手越しで持てないか?」と言われ、箱崎1人では持ち上げられないロングソードを四谷の手が持ち上げる形で倒した時は、なんだか結婚式のケーキ入刀みたいな形になり照れを感じた。


箱崎紅末は、ある意味、男子を軽蔑し、自分の世界に閉じこもり気味になる存在だった。四谷友助とは性格的には似た部分でもあるが、いままで育ててくれた両親などへの感謝の念を欠かしたことは無かった。その点が、四谷友助と決定的に違ったのだ。

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