第17話 ヤーナ

新堂たち勇者一行が巫女洞窟に着いたのは昼過ぎだった。


宇喜多たち数人はジフォンバフォ。この世界の牛みたいな家畜の牧場で別れた。

予想通り、ジフォン島でも伝染病は蔓延していたが、バフォ使いの関係者は一人も発症する者はいなかった。


宇喜多たちはバフォの身体を少し刻み、カサブタが出来るのを待っていた。


ヤーナ「お久しぶりだべ。勇者様方。私はすっかり歳をとってしまいました」


ほどなくして、四谷と箱崎がクロスボウを2つ携えて巫女洞窟にやってきた。

鍛冶スキルを持った四谷が組み立てることで この世界で作った武器もプレイヤーは使うことが出来る。


四谷「アォユーさんの事は残念でした」

ヤーナ「あの子は、最後は孫に囲まれて幸せな最後だったと思いますだ。ただ四谷さまに遭いたい。遭いたいとこぼしていますた」


四谷(やはり6週目のゴールディア王国のクエストをクリアした時にファストトラベルでこちらに来るべきだった。もうジフォン島に来ることもないとタカをくくっていた俺のミスだ)


ヤーナ「しかし、四谷様? なんだか髪も伸びて、まるで女の子みたいになっとりゃせんですか?」


四谷「なんか、こんどは勇者の都合でジョブチェンジして女になりました」

ヤーナ「そっただことがあるんだなあ。長生きはするもんだべ」


そこに初老の男がやって来る。


ヤーナ「あんたー。45年ぶりに勇者様がやってきただ」

初老の男「おひさしぶりです。カッツです」


カッツ・・ジフォン島で四谷たちがオークと戦った時、島にやってきた傭兵の一人。


新堂「まさか、お二人は・・・」

ヤーナ「そ、私の旦那様」

カッツ「お互い、いい年だが仲良くやってます」


四谷「ところで、竜術士ラジーが落としていたインクの瓶って、まだありますか?」


(ジフォン島での災害は竜術士・ラジーによって仕組まれたものだった。彼は人々の魂をドラゴンに捧げる、血の儀式を行う邪悪な存在だった。ジフォン島にオークがやってきて島民を襲い始めたのも彼の策略。

オークと人を争わせ、どちらが死んでもその魂は輪廻の輪から外されて、ドラゴン復活の生贄になる。いやドラゴンは既に復活しているが、その力は万全の物ではない。ゲームで言うなら、MPやHPが完全回復していないという意味だろう。

血の儀式ではいくつかの魔法陣を特殊なインクで描く必要があり、そのインクの1つを勇者との闘いで落として逃げて行った)


ヤーナ「あー、あの瓶だべ。確か巫女洞窟の神棚においてあるべ」

四谷「それ、譲っていただくことは出来ますが?」

ヤーナ「他ならぬ勇者さまからの頼み、喜んで差し上げます」

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