第16話 友助・紅末

田楽巫女バイクダム・・その一人であったアォユーは10年ほど前に天に召された。


火山島・ジフォン島は農耕できる土地は少なく、墓地は農耕に適さない溶岩台地の上にあった。


四谷「俺は・・・この世界に来て、カハベルさんやアォユーさんの人生を大きく変えてしまった。本当は感謝されるつもりなんかまったくなく、自分の為にゲームのようにクエストをやっていただけなんだ。アォユーさんが俺を好きだと言ってくれたのは竜術士・ラジーとの闘いで守ったからだけど、あんなのは吊り橋効果みたいなもので、俺はアォユーが好きだったとか愛していたからじゃないんだ。」


四谷「アォユーのお爺さんに『オーク退治が終わったら、この島で鍛冶屋をやらないか」と言われた時も、「俺にとって鍛冶屋の仕事は手段なんで続けるつもりはない」って断ってしまった。勇者の都合でクエストが終わると、この世界を去らなきゃダメってのは分かっていたけど、アォユーに告られて、俺と結婚したかったと言われるなんて思わなかった。」


箱崎「カハベルさんの時と言い、アォユーさんの時といい、クエストクリアしても悲しいね。あ、四谷君、私ね。3週目のクエストでトロールから村を守った時、シーカスって子供を助けたんだ。」


四谷「ああ、村には行った時、挨拶してくれた男の子だったっけ?」

箱崎「4週目のクエストの時、あの村に言ったら村は滅びていて誰も居なかったでしょ?」

四谷「そうだったっけ?」

箱崎「でもね。五週目のクエストの時、コルトネルの街であの子に会ったの・・・もう凄いおじさんになって、頭もつるつるだったけど。」


箱崎「だから、クエストで誰かを助けた事は、次の世代にも繋がっているんだよ」

箱崎「もう四谷君は、人類を滅ぼそうなんて残念な考えを捨てて」

四谷「やっぱりその話題にもっていくか。」


箱崎「私ね、四谷君との子供が欲しい」

四谷「さらっと重たいこと言うよね? 魔法使いの子供は脳が魔力に耐えられず     狂戦士化するんだぜ」

箱崎「でも、ファティナ様に魔力をドレインしてもらえば大丈夫じゃないの?」

四谷「そうなると、おれは人類を滅ぼす力を失うと?」


箱崎「四谷君も本当は分かっているんでしょ? 人類の中には自己中心的で人の痛みが分からない人もいるけど、そうじゃなく人を慈しむ人もいるって」

四谷「だから、俺はそういう自己中心的な奴らはみんな殺す。そうじゃない新堂さんや箱崎さんみたいな人は生かして、人類を次のステージに導く」


箱崎「それって四谷君、たった一人で出来る?仲間もいないのに出来ると思う?」

四谷「いまはいなくても、仲間は募るし 出で来なけりゃ一人でもやるさ」

箱崎「いまの四谷君はネアンデルタール人と同じよ。自分一人でなんでも出来ると思って、人を頼らないんじゃあ、結局は失敗するよ」

四谷「ジャンガニーさんやジャードォーさんには、ちゃんとお礼を言って共闘したさ」

箱崎「でも、あの人たちは人類を滅ぼそうなんて言われたら、絶対に協力しなかったよ。私と一緒で邪魔する側になるよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る