第5話 魔法使いは外れジョブ

【クエスト時間制限 残り50日】


GM=ゲームマスターは自分が言いたいことだけ言って、光を放ちつつ異空間に消え去った。


四谷の身体は完全に女性化していた。意識のない四谷を箱崎・新堂・グレンダなど女性陣が介抱する。


四谷が女性化し倒れこんだ時、鳥居はしっかりと四谷の胸を揉んでいた。


鳥居「こいつ、マジで女になったんじゃねーの?」

時館「いっつも女を馬鹿にしたり、魔王みたいな酷い作戦ばっかりするから罰があたったのよ」

箱崎「でも何だかんだ言ってもクエストを引っ張って皆を助けてくれたじゃない」

新堂「あー、そういや、あたしが盗賊に捕まった時、こいつ、あたしを見捨てようとしたんだ」

箱崎「でも、カハベルさんたちと討伐隊を連れてきて助けてくれたじゃない」

時館「くすえちゃん。結果よければ全てよしってわけじゃないんでしょ?紅末も盗賊団に捕まった時に牢番に強姦されそうになったじゃない」

グレンダ「いつまでも過去のことをどうこう言ってもしょうがないだろ。だが本人の意識が戻るまでファストトラベルも使えない」


新堂「しっし・・鳥居と二繁は四谷に触るな。あ、宇喜多さんは医学生だからこっちきて四谷の様子見て?」


新堂「どう?」

宇喜多「熱が酷そうだ。呼吸も荒い。だけど、薬も何もないのにどうしろと…」

箱崎「私も宇喜多さんも生物魔法を使えるはずだから」

宇喜多「でも、生物魔法ってどうやるのかさっぱり分からない」

箱崎「私もさっきジョブチェンジしたばかりで、使い方は分からないけど、四谷君は患者に手をかざして目を閉じて念じるように祈っていたのを覚えている」

時館「カハベルさんがガーゴイルに倒されて重症になった時はそんな感じだったね」

宇喜多「まあ、やるしかないか・・・ヒーリング」

箱崎「ヒーリング」


二人の生物魔法の力で30分ほどで四谷は目を覚ました。

もともと二次成長前で中性的だった四谷だが、女性化しても顔立ちには大きな変化はなかったが、短かった髪は腰まで伸びる黒髪ロングになっていた。


四谷「ううう・・なんか酷い夢を見た気がする・・・って、夢じゃなかったのか?」


勇者職業・娼婦のステータスは・・上半身 筋力-50%  下半身-40%など、おおよそ戦闘には不向き・・いや足手まといな存在になり下がった。

それに伴い、それなりに筋トレをしていた腕もちょっと力を加えれば折れるように細く見えた。


四谷「ううう。なんだよこれ! まあ、なっちまった物はしょうがないが・・・これって次にジョブチェンジとか元の世界に戻った時に男に戻れるのか?」

新堂「GMはそんなの一言も言わずに消えちゃった」

四谷「マジかよ。」

時館「マジハシスターズ」

四谷「そういう寒いギャグはやめて」



宇喜多「え?魔法使いは外れジョブなのか?」


四谷「そうだよ。身体能力のパラメーターは2割ダウンだし。魔法もランク1じゃあ殆ど戦闘能力はない」

時館「まあ、あたしも一発目は魔法使いで弱くて吃驚したんだけどね。異世界転生はチート系じゃなくコツコツ系もあるし、ランク10になればジョブチェンジしたり上級職になったりするから」

鳥居「そういや四谷、お前、またジョブチェンジしたのか。前回は魔導士だって?さすがにMP高いな」

四谷「もう8回ジョブチェンジして、戦士が一回も無いんだけどな。GM、絶対にルーレットに小細工しているだろ。」

箱崎「農民→料理人→魔術師【生物】→鍛冶屋→魔術師【熱】→盗賊→狩人→魔導士→娼婦だよね?」

新堂「まあまあ、あの変態GMに何を言っても無駄だよ」

箱崎「私は今回、生物魔法使いになって嬉しい」

宇喜多「え?なんで?」

箱崎「生物魔法は人の傷を治すことが出来るんです。軽い病気も・・多分」

新堂「紅末はね。人の病気やケガをなおす仕事に就くのが夢なんだ」

箱崎「私、実は難病持ちなんです。ママも私も毎月5万円もする薬を飲まないと生きていけない。だから将来はお薬の研究をしてママと私の病気を治したい」


宇喜多「夢を折るようで悪いけど、研究者になっても好きな研究が出来るとは限らないよ」


四谷「現状じゃあ勇者はMP上限が低いから、生物魔法でたくさんの人を助けようなんてMPがすぐに底をつくから無理だけどな」


グレンダ「しかし、今回のクエストは伝染病の死者を減らせか・・・やはり、防衛医大の学生の宇喜多君がプレイヤーに選ばれたのはこういう訳か」

四谷「グレンダさんの時は麻薬問題。二繁の時はブラック企業だったもんなあ」

鳥居「え?そーなの?俺の時はよく分からんかった」


宇喜多「マジかよ・・・そんな事言われても、まだ防衛医大3年の俺に何が出来るって言うんだよ。ワクチン?ペニシリン?そんなの50日で作れる訳ねーよ」

二繁「俺が言うのもなんだが、諦めたらそこで試合終了。俺でも出来た。お前も出来る」


四谷(そうだな。やっぱ褒めてやる気を出して貰わないとこのクエストはムズイ)

四谷「ワクチンやペニシリンは無理でも、感染予防をちゃんとやれば、この世界ならパンデミックの被害を出来るだけ小さくできるんじゃないのか?医学知識で異世界チート。救世主やってみろよ!」

新堂「お!四谷君が人を褒めた。少しは人間的に成長したのかな?この中二病君」

時館「まあ、すぐ地金が出るよ。四谷は勇者というより魔王だから。それにしても宇喜多さんって医者の卵なの?将来安泰って奴かな?唾つけちゃおっかな?宇喜多さーん。どんなアニメや漫画が好きなんですか?」


宇喜多「うは・・・そんな急に言われても・・・俺は受験とか勉強が忙しかったからアニメとか漫画はあまり読んでないんだ。まあ強いて言うならブラックジャックだな」

時館「はーい。模範的回答いただきました」


四谷「まあ、無駄話してもしょうがないんだし。イジャ大陸ってことはラドドーボから船で行かなきゃダメだな。とりあえずラドドーボにファストトラベルで移動でいいすよね?みなさん?」

新堂「あ、四谷君。敬語禁止って前に言ったよね。もっと本音を出して心を開きなさい」


・・・ファストトラベルで、メリ大陸西の港町、ラドドーボに移動・・・


箱崎「懐かしいね」

時館「カハベルさんとここまで旅をしたんだよなあ」

新堂「あの時は時間制限ギリギリでクリアだったね」

四谷「カハベルさん・・・あの時は、この世界は現実じゃなく、ゲームの世界だと思っていた。俺はあの人をNPCと思って利用しただけだった。でも、本当はここは異世界で、あの人はちゃんと生きていたんだ」

新堂「カハベルさんに鍛えてもらったお陰で私も強くなった。あの人には感謝しかないよね」

四谷「でも、クエストをクリアする度に、次のクエストが始まるまで何年も経過して、もうあれから何年が経過したんだろう」

グレンダ「感傷にふけっている所悪いけど、とりあえずイジャ大陸行きの船の手配と、ファティナ様に連絡して援助を仰がないと」


船賃と手紙代は勇者補正で只で請け負ってもらった。ただしファティナ様に手紙が着くまでに何日かかるか分からない。この世界には伝書鳩のような伝書鳥という生物が居て、ある程度の速度で手紙をやり取りできるが、伝書鳥が行き来できる街は少なく、大魔法使いファティナは同じ国に定住しているのではなく、竜術士を倒すために殆ど旅をしているからだ。おなじ文面の手紙をたくさん書いて、多くの街のギルドに貼りだしてもらって運よく目にして貰うのを期待するしかない。

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