第57話 少し遠回しな恋文
◆十一月二十日土曜日
今日のお出かけ楽しかったです。本当にありがとうございました。これでしばらくは暴走せずにいられると思います。……ちょっと嘘ですけど、下手なことを書くとまた青野さんが逃げてしまいそうなので、そういうことにしておきます。
『アンバードリーム』は本当に素敵だと思ったので、また一緒に行きましょうね。普通だと表に出てこないような作品をたくさん見られたのも良かったですし、お店の雰囲気も好きでした。この先もずっと、私のお気に入りの場所になると思います。
メイド服を買ったとき、学校の知り合いに遭遇してしまったのは焦りました……。山吹君と上手く話を付けてくださってありがとうございます。もしかしたら、山吹君からは学校でも何かしら訊かれることもあるかもしれませんが、次は私の方でどうにかしてみます。青野さんを頼ってばかりではいられません!
あ、明日はメイド服姿をお見せするので、楽しみにしていてくださいね?
プロジェクションマッピングも綺麗でした。ハグしてくれたことも、本当に嬉しくて幸せでした。約束通り、私の写真をパソコンの壁紙にしてくださいね? パソコンをつける度に私を思いだしてくださると嬉しいです。(こんなお願いするの、結構恥ずかしいですね……)
そして、私の家庭の事情とか、聞いてくださってありがとうございました。
本当にたいしたお話ではなくて、よくある家族間の軋轢でしかなくて、私と同じ状況でも黙って耐えている人はたくさんいると思います。特別な支援をされるほどの何かがあるわけではないと自分でも思います。
それでも、私の気持ちを尊重してくださって、すごく救われた気持ちになりました。
両親から離れたことが間違いじゃなくて、自分らしさを大事にしていこうと思えたこと、良かったと思います。
今日は本当にありがとうございました。青野さんのおかげで、ようやく私は私になれているように感じています。
あと……間接キスなんて、青野さんにはたいしたことないでしょうけど……すごく、ドキドキしました。今夜は少し、眠るのが遅くなりそうです。
◆十一月二十一日日曜日
こんなことを伝えるべきではないのかもしれませんが、私の率直な気持ちを伝えるのもこのレポートの意義だと思うので書いてしまいますね。
正直、青野さんが赤嶺さんと一緒にお出かけするのは嫌だなという気持ちはあります。でも、私は別に青野さんの恋人ではないので、私生活にいちいち制限をする権利も何もないとはわかっています。
青野さんは、青野さんの思うとおりに生活してくださって大丈夫です。ただ、私が嫉妬したり悔しい思いを抱いたりしてしまうのは、許してください。
青野さんにとっては、こういう気持ちを抱かれるのは少し面倒かもしれません。それでも、私も全く動じずにいることはできなくて……。
こんなことを書くと、青野さんが余計に私に気を遣ってしまうだろうこともわかっています。そういう狙いがあるのも事実です。
面倒くさくてごめんなさい。青野さんなら、こんな私でも受け止めてくれるかなと虫のいいことを考えて、お伝えしてしまいました。
それはそうと、先ほど火鈴から青野さんのことを訊かれたのですが、何かあったんですか? 年齢とか、私とどういう関係なのかとか……。
今日、『アンバードリーム』で会ったそうですが、何かあったのか尋ねても答えてくれなくて。
別にやましいことをしたわけではないと思いますが、あまりややこしい事態にならないようにしてくださいね?
一応、火鈴には、私の青野さんに対する率直な気持ちを伝えておきました。
これでたぶん火鈴も落ち着いてくれると思いますが……。
◆十一月二十二日月曜日
青野さんのお部屋で絵を描くとはかどります。いつもお邪魔してしまって申し訳ない気持ちもありますが、これからも私のワガママに付き合っていただけると嬉しいです。
それで、先ほども少し話しましたけど、改めて火鈴のことです。その……ダメ、ですからね? 本来私が決めることではないと承知していますが、やっぱりダメです。火鈴とはあまり仲良くしないでください。火鈴には青野さんの連絡先は教えませんし、火鈴からの青野さんと少し二人で話したいというお願いも勝手に断っています。
私の気持ちは伝えていますから、火鈴もそれで納得してくれていると思います。あとは、青野さんがあえて接触しようとしなければ大丈夫なはずです。
青野さんが、あえて接触しようとしなければ、大丈夫なはずです。
大事なことなので二度書きました。
まぁ、青野さんは私に対しても距離を取る方なので、大丈夫だとは思っています。それでも、もし男性的に何か抑えがたいものを感じたときには、ちゃんと私にしてくださいね?
何をとは言いませんが。
何をとは言いませんが。
これも大事なことなので二度書きました。
ちなみに、ちょっとしたお知らせですが、これを書いている私は顔が熱いです。
青野さんからするとバカみたいなことかもしれませんけど、色々と想像してしまうとやっぱりダメですね。明日も学校があるのに、今夜もなかなか寝付けないかもしれません。
青野さんからすると私がまだまだ子供で、すごく面倒くさいことを書いているだろうこともわかっています。
いつもごめんなさい。でも。
こんな私を、いつも笑って受け入れてくださる青野さんのこと。
こんな私を、いつも笑って受け入れてくださる青野さんのこと。
……大事なことですが、続きは書きません。
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