第貮話(B-2後編):行動開始〝変えると誓った未来の為に〟

 ――宴会場えんかいじょう


心配しんぱいするな。今日きょうわたしまない」


 かった……。なら、あのはなし出来できる。


「ネモフィラ中隊長ちゅうたいちょう

「なんだ? とうか、おまえまんのか? わたし遠慮えんりょすることはないぞ?」

「いえ、自分じぶん結構けっこうです。したがまだ子供こどもなのか、美味うまいとは、あまりおもえなくて」


 これはこれで、事実じじつだ。


「それで、ネモフィラ中隊長ちゅうたいちょう真面目まじめなおはなひがあるので、あとで二人ふたりすこそといただけませんか?」

「ふぇ!? 急に? あ、いや、ひゃい!」


 ん? なんか、反応はんのう微妙びみょうへんだが、最近さいきんは、こういった反応はんのうにもれてきてしまっている自分じぶんもいる。


あやしい……」

「ぬおぅ!!」

「ひゃあ! って、ライか」

「はい。ばれてないし、もしないけどジャジャジャジャーン……」


 その台詞せりふ、そんなに元気げんき淡々たんたんうような台詞せりふだったか?


あやしいですね、お二人ふたりさん」


 眼鏡めがねつるゆびちクイッとあげながら、ジトでこちらをのぞむ。この女性ひとは “ ライ・トイパ ” 。おれ小隊しょうたい……ラピスラズリの一人ひとりで、ひと歳上としうえ先輩せんぱいだ。


「やめろ、ライ。そううのを下世話げせわってうんだぞ」

「はーい」

「んでも、アウイン先輩せんぱい、この二人ふたりよく二人ふたりっきりで特訓とっくんとかしてるんだぜ?」

こえなかったか? アイス。それが下世話げせわだってってんだ」


 ライとアイスをめようとしてくれたのが、ノゼアンのあに、 “ アウイン・ソーダライト ” みっ歳上としうえ先輩せんぱいだ。


「ちっ、つまんねぇなぁ。アウイン先輩せんぱい……」

「おーまーえー。先輩せんぱいかってまんねぇとはなんだコラ」


 ノゼアン、アイス、ライ、アウインの四名よんめいが “ ラピスラズリ ” のメンバーだ。


 そのまま、そんな談笑だんしょうつづけ、小一時間こいちじかんほどったころ。ノゼアンが、腹踊はらおどりをはじめたあたりで、二人ふたりそとへとた。


「そそそそそ、それで、真面目にゃ……。真面目な話とはなん……話って、ななな、なあに? ラズ 」


 そしておれは、淡々たんたんはなしはじめる。ハリフにはいりたかった理由りゆうを、あのた、未来視みらいしことを。そして、その未来みらいえるために、ちからしてしいことを――。


◆◇◆◇◆◇◆◇


「……なるほどな」


 すべてをかくさずにはなしをしたあと中隊長ちゅうたいちょう 反応はんのうだった。まぁ、そうだろう。こんなこときゅうわれても、その反応はんのう当然とうぜんだ。


しんじてなんか、もらえませんよね……」

だまれ、このド天然てんねん

「え?」


 何故なぜ機嫌きげんわるい。

 さわことでもっただろうか……。


「いや、いだろう。おまえのそのはなししんじてやる」

「あ……有難ありがと御座ございます!」


 期限きげんわるいままだが、中隊長ちゅうたいちょうしんじる。とってくれた。


「だが、ただしくえば、ふかしんじてはいない。おまえうから、しんじてやる。ということだ」


 ?? よくからないが、しんじてくれるということい……んだよな?


「おまえきたえてもやるし、剣技けんぎ情能力じょうのうりょくわたし出来できかぎりはおしえてやる」

「!! 本当ほんとう有難ありがと御座ございます!!」

「ただし!」

「え!? ただし?」


 条件じょうけん……か? むずかしいことければいいが……。


「ただし、これからさき二人ふたりときだけでいから……」


 ?? ん? どんな条件じょうけんうつもりだ?


二人ふたりときだけでいから、わたしこと、ネムってんで……」

「え?」

「あわあわあわあわ。わたしってばなんてことを……」


 そんなこといのか? いや、このひとは、時々ときどきへんではあるが、尊敬そんけいする上官じょうかんであり、小隊長にここまでれてきてくれた教官きょうかんであり、ここのつも歳上としうえ大人おとな女性じょせいでもある。愛称あいしょつびに抵抗ていこういとえばうそになるが……、


「そんなこといなら、そうさせてもらいます」

「はう……」

「これからもよろしくお願いします。ネム」

「はうぅぅ……」


 その宴会場えんかいじょうもどるなりアイスに「お! 中隊長ちゅうたいちょうおんなかおしてんぞ!! ふー!! なにしてきたんだ? お? ナニか!?」などとからかわれたが、何故なぜからかわれたのかは、考えても分からなかった。

 ちなみにアイスはアウインと中隊長ちゅうたいちょうにぶっばされていた。


◆◇◆◇◆◇◆◇


 それからというもの、ウルトラマリン中隊ちゅうたい多忙たぼう日々ひびつづこととなった。


 まず、翌日よくじつより一月ひとつきほどは、中隊長ちゅうたいちょう命令めいれいでサパンウッドむらちかくのもりなか臨時りんじ駐屯地ちゅうとんち設営せつえい作業さぎょうはじまった。これには、第二だいに小隊しょうたいの “ アメジスト ” と、第三だいさん小隊しょうたいの “ アクアマリン ” がたる。


 第四だいよん小隊しょうたいの “ サファイア ” と、中隊長ちゅうたいちょうのぞく、第一だいいち小隊しょうたいの “ ウルトラマリン ” の面々めんめんは、ウルトラマリン中隊ちゅうたいりてくる感情獣かんじょうじゅう討伐とうばつ依頼いらい設営せつえい作業さぎょう二隊ふたたいられているぶんまでこなす。と、ったかんじだ。


 ラピスラズリはとうと……、


「おまえらは、発足ほっそく仕立したてだ。まずは小隊しょうたいとしての、連携れんけいだとか、合図あいずだとか、練度れんどげておけ」


 との、中隊長ちゅうたいちょうのお言葉ことばもあり、ひたすらに特訓とっくんはげんでいた。


◆◇◆◇◆◇◆◇


 ――一月ひとつきったころ


今日きょうはこのへんにしておくか」


 中隊長ちゅうたいちょうが、その訓練くんれん終了しゅうりょうげた。


つかれたっすー」

「おまえ情力じょうりょく訓練くんれんぶんらくだろ」

なにってんすか? ハリフの人達ひとたち感情刀かんじょうとうほどじゃないにしろ、ランリの心情刀しんじょうとうだって情力じょうりょく制御せいぎょ必要ひつようなんっすよ?」

「へ? そうなん?」

「アイスくんらなかったの? プッ」


 ノゼアンは、ハリフではなくランリに所属しょぞくしていた。それを中隊長ちゅうたいちょうちからり、ハリフの小隊しょうたいであるラピスラズリへと、いた。そのため現在げんざい正式せいしきなノゼアンの所属しょぞくはランリのままであり、譲与じょうよされている武器ぶきは、 “ 心情刀しんじょうとう ” である。


「まぁでも、こればっかりはランリじゃないひとらないひとおおいっすからね。仕方しなたないっすね」

「まぁ、わたし説明せつめいしたがな。いていなかったんだろう。このお調子者ちょうしものは」

「ひっ! すすす、すいませんでした! 中隊長ちゅうたいちょう!!」


 この人達ひとたちで、かった。


中隊長ちゅうたいちょう!!」

「うぉ! なんだラズライト小隊長しょうたいちょうきゅうさけばれたら吃驚びっくりするではないか」

「はっ。すみません」

「いやまぁ、いいが。で、なんだ?」

「そろそろ、我々われわれラピスラズリにも、訓練くんれんだけでなく、任務にんむなどをけさせてください!」


 一ヶ月いっかげつ訓練くんれんをしてきた。つぎ実戦じっせん経験けいけんみたい。それに、おれ我儘わがままで、中隊ちゅうたい全員ぜんいんんで迷惑めいわくをかけている。すこしでも、貢献こうけんしたい。


「ふむ。…………かろう。明日あすより任務にんむまわしてやる。だが、しばらくは、わたし同行どうこうしよう」

有難ありがと御座ございます!!」


 こうして、おれたちは任務にんむに……実戦じっせんることになる。


 ――このときおれたちは、まだらなかった。感情獣かんじょうじゅうが、どれだけおそろしく、そして、かなしい存在そんざいであるか、ということを――。


◆◇◆◇◆◇◆◇


 そして、任務にんむをこなしはじめ、二ヶ月にかげつち、中隊長ちゅうたいちょう同行どうこう必要ひつようくなったころ。ほぼ同時どうじに、臨時りんじ駐屯地ちゅうとんち設営せつえいわり、おれたちラピスラズリに正式せいしきなサパンウッドむら外郭がいかく森林しんりん臨時りんじ駐屯地ちゅうとんち駐在ちゅうざい任務にんむ命令めいれいが、中隊長ちゅうたいちょうよりくだった。

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