第參話(B-3前編):望まぬ再会〝燃えゆく村〟

今日きょうもー、むらはー、平和へーわー、そのものー、でしたー」

「ちゃんとやるっすよ」

「おまえノゼアン、そんなことったって、毎日まいにち平和へいわそのものじゃねぇか。意味いみあんのか? これ」

意味いみいことなんて、中隊長ちゅうたいちょうもラズライトくん……じゃないやラズライト小隊長しょうたいちょうもさせないっすよ」

「んなこたかるけどよぉ」

「まぁ、おまえらにはつまらん任務にんむえにしてもうわけないとおもうよ」

「べっつに、あやまってしいわけじゃねぇんだよ」


 駐在ちゅうざい任務にんむいてから、やく一月ひとつき何事なにごともなくここまでている。いままで文句もんくなかっただけでもマシなほうだろう。


おりゃぁただ、なんために、このむらってんのかってのをりてぇだけだから」

「そうだな。おまえたちにも、事情じじょう説明せつめいしなきゃ、だよな……」

「まぁ、っすね」

しんじても、えるかは、からんが……」


 きちんと、はなさなくては……。アウインとライにもあとで……

 と、ようやけっしてはなしはじめようとした、その時。


小隊長しょうたいちょう!!」


 ライがあせった様子ようすはしり、もどってきた。


「!? どうした、ライ。」

くろ装束しょうぞく集団しゅうだんが!! むらが!!」

け! アウインは?」

「はぁ……はぁ……はぁ……。すいません。あせりすぎました。むらみなみがわでっ、……黒装束くろしょうぞくまとった集団しゅうだん発見はっけんしっ、……すこ様子ようすていたんですが、もりはなはじめたのでっ、……いまはアウイン先輩せんぱいが、消火しょうかしながら……応戦おうせんしてます!!」


 ライは、あらいきのまま、報告ほうこくをしてきた。


◆◇◆◇◆◇◆◇


 サパンウッドむらは、休戦きゅうせん以前いぜんから、戦争せんそう最中さなかにあっても、その人里ひとざとはなれたもりなか隔絶かくぜつされた環境かんきょうため兵役へいえき以外いがいとく戦争せんそうとはかかわってこなかった。基本的きほんてき平和へいわで、敵襲てきしゅうなど微塵みじん想定そうていされていないむらだ。そもそもがこのむらに、戦略的せんりゃくてき価値かちい。唯一ゆいいつ、このむら価値かちがあるとすれば、それは……。


 はしつづけること十数じゅうすうふん俺達おれたち四人よにんは、アウインのところへと辿たどいた。


「アウイン!!」

にぃちゃん!」

「遅いですよ!! 隊長たいちょう!!」

まない……状況じょうきょうは!?」

てのとおり! すいません! すで半数はんすうむらはいってしまってます!!」

「ちぃっ! クソっ!!」

わたしに、アイスをあずけて、隊長たいちょうたちは!!」

「わかった!! まない!! ここはまかせる!! アイス!!」

「オケオケ、承知しょうちぃー!!!」


 ――唯一ゆいいつ、このむらねら理由りゆうがあるとすれば、間違まちがいない。トリシュナだ……。未来視みらいしときから、薄々うすうすおもっていたが、トリシュナの “ 血統けっとう ” が、ねらいだろう……。え……!!


 全力ぜんりょくはしり、全力ぜんりょくてきつ。躊躇ちゅうちょ容赦ようしゃも、すべて、まえすすむ。トリシュナを、グレンを、むらを……。すで数名すうめい村人むらびと遺体いたいた。こころきしむ。だが、まることは出来できない。おれにとって、一番いちばんまもるべきものは……!!


「ラズライトく……隊長たいちょう!!」


 ノゼアンがさけぶ。おれもノゼアンもライも、各々おのおの黒装束くろしょうぞくとの戦闘中せんとうちゅうだ。

 一人ひとり一人ひとりは、けっしてつよくはない。人並ひとな以上いじょう訓練くんれんしてきたつもりではあるが、それでもおれたち程度ていど通用つうようする相手あいてだ。なんとうか、あやつ人形にんぎょうのような、ぎこちないうごきすら見受みうけられる。


「どうした! ノゼアン!!」


 黒装束くろしょうぞく蹴落けおとし、ノゼアンのほうかえる。


「あっち! あっちに! 自分じぶんらと同年代どうねんだいくらいの子達こたちたたかってるっす!」

「!? グレン!!」

隊長たいちょうのっ! お友達っ! ですか!?」


 ったてきを、べつてきてたり、たてにしながら、べつてきりながらのライからのいかけ。


おさななじみっ! たちだっ!」


 みじかかえしながら、てきる。


隊長たいちょう! ここはっ! わたしまかせてっ! ノゼアンくんとっ! そっちってください!!」

「しかし!」

承知しょうちっす!! くっすよ、ラズライト隊長たいちょう!」

「だが!! ここもライ一人ひとりでは……!」

問題もんだいっ、ありませんっ!」

「そうはっ……!」

「ラズライトくん!! 問題もんだいない。いま証明しょうめいしてあげる……!」


 ライの感情刀かんじょうとうが、あわひかりはじめる。情力じょうりょくはじめたのだ。


「!? やめろ! ライ! 訓練くんれんでもおれたちまだ一度いちども!」


 成功せいこうしていない。感情刀かんじょうとう能力のうりょく解放かいほうをするには、相当そうとう情力じょうりょく消耗しょうもうする。つよい “ おもい ” が必要になる。そしてそれは、おおくの場合ばあい、トラウマとことしている。訓練時くんれんじには、ラピスラズリの全員ぜんいんが、解放かいほう出来できなかった。


「いけるよ。だっていまわたしきみちからになりたいから!!」


 感情刀かんじょうとうひかりつよくなっていく。


得得とくとくたれ! “ ガザニア ” !!」


 やいばいろつばかたちわる。ライは、感情刀かんじょうとう解放かいほう成功せいこうした。


「このままぁ!! 黄絹幼婦こうけんようふみだり!! ってください!! ラズライトくん!」


 完全かんぜんうごきがまっていたおれうでが、グッとかれる。ノゼアンだ。


「行くっすよ! ラズライトくん!!」


◆◇◆◇◆◇◆◇


 はしる。全速力ぜんそくりょくはしる。まだとおくだが、える。悪友ともたちが、そしてグレンが。グレンはながし、相手あいて攻撃こうげきけるだけでもキツそうだ。


「ラズライトくんこうにかうっす」


 こう。ノゼアンが目線めせんでグレンのほうす。


自分じぶんは、このへん片付かたづけつつかうっす!!」

「わかった。まない!」

今日きょうあやまってばっかっすね、ラズライトくん

「それはそうなるだ「あやまられるより、たよられたいっす。なんために、自分じぶんらをあつめたっすか? えらんだんすか!?」

「!!」


 なにも、かえせなかった。ノゼアンのとおりだ。 “

たよれる ” と、おもったから、 “ しんじられる ” と、おもったから、この四人よにんえらんだんだ。


まない、ノゼアン……」

「ほら、ま「いや」

「っす?」

まかせた!」

「!! 合点がってん承知しょうちっす!!」


 かえらない。はしる。こちらにるわれるけんかわし、反撃はんげきすらもせず、ただグレンのところはしる。仲間なかまを……しんじているから、まかせられる……!!


「グレン!! よくちこたえた!!」

「ラズ……ライト……!?」


 グレンがおどろいたかおをしている。それはそうだろう。ぐんうわけがないとおもっているはずだし、ましておれるなどおもいもよらないだろう。


「ああ、そうだ。おれだ! 有難ありがとう……。有難ありがとうグレン、ここまでちこたえてくれて!! ここからは俺達おれたち出番でばんだ! あとまかせろ!!」


 ここからは、いや、ここからおれ役目やくめだ。先程さきほどていたかんじだと、この黒装束くろしょうぞくは、ほかやつとは、ちがうらしい。


「ああ……、ぐん……。に……っ…………」


 そこでグレンは意識いしきうしなった。無理むりをしていたのだろう。バタッとそのくずちた。

 ぐにでも介抱かいほうしてやりたいところだが、ゆるせグレン。いま此奴こいつたおすのがさきだ。


「はぁ……。何処どこから情報じょうほうれたからんが、いささ面倒臭めんどうくさい、なっ!」


 うがはやいか、うごくがはやいか、またたきのに、黒装束くろしょうぞくりょう短剣たんけん逆手さかてかまえ、まえた。

 マズイ! けられない!!


「っす!!」


 キンッ!

 甲高かんだかおとひびく。


「ノゼアン!?」

「っすよ!」


 かえした反動はんどう一瞬いっしゅんすきき、ノゼアンのタックルが黒装束くろしょうぞくばす。


こうは!?」

余裕よゆうっすよ」


 ブイっとをこちらにける。ノゼアンがつよいのはっていたが、ここまでとは。


「そうか。なら、まないがグレンをたのむ!」

承知しょうちっす!」

目覚めざめたらグレンは絶対ぜったい無理むりをしようとする。くれぐれもたのむぞ」

まかせるっす!」


 ノゼアンがグレンをかついでいく。黒装束くろしょうぞくうごきはない。やはり、ねらいは……。

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