第貮話(B-2中編):小隊長へ〝変えると誓った未来の為に〟

 ――ハリフ入隊にゅうたいよりやく半年後はんとしご


「ではこれより、任命式にんめいしきおこなう!」


 場内じょうないにネモフィラ教官きょうかん――もとい中隊長ちゅうたいちょうこえひびく。


「ラズライト・シーハ! 壇上まえへ!!」

「はっ!」

現時刻げんじこくって、貴様きさま曹長そうちょう任命にんめいする! また同時どうじに、ハーモニー・リメイク・フィーリングス所属しょぞく、ウルトラマリン中隊ちゅうたい第五だいご小隊しょうたい “ ラピスラズリ ” の発足ほっそくをここに正式せいしきみとめ、同小隊どうしょうたい小隊長しょうたいちょう任命にんめいする!」

つつしんで拝命はいめいいたします」


 こえ上擦うわずってはいないだろうか……。かなり緊張きんちょうしている。のぞんだ結果けっか、いや、努力どりょくしてった結果けっかなのだから、もちろんうれしいが、それとこれとはまた別次元べつじげんはなしだ。


 ここからさきは、緊張きんちょうのあまり、いまいちおぼえていない。小隊員しょうたいいんとなる、ノゼアン、アイス、アウイン、ライがそれぞれ点呼てんこされ、その、ウルトラマリン中隊ちゅうたい矜恃きょうじをネモフィラ中隊長ちゅうたいちょうかたり、しき終了しゅうりょうとなる。


「これにて任命式にんめいしき終了しゅうりょうする!」


 わった……。緊張きんちょうぎてつかれた……。


頑張がんばったね、ラズ」


 そんなつかてたおれにネモフィラ中隊長ちゅうたいちょうは、降壇こうだんする間際まぎわおれにだけこえるように、そっとやさしく声をけてくれた。


「さて、堅苦かたくるしいしきわりだ! なので、…………宴会えんかいだ!!」

「「「おーー!!」」」


 そして宴会えんかいはじまる。ウルトラマリン中隊ちゅうたいは、とうよりも、ネモフィラ中隊長ちゅうたいちょうは、宴会えんかいきらしい。ことあるごと宴会えんかいもよおされる。しかし、おれはあまりにはなれなかった。中隊長ちゅうたいちょうは、さけよわく、からざけであるためおれ面倒めんどうなくてはならなくなるからだ。あの試験しけんも――。


◆◆◆◆◆◆◆◆


 ――適正てきせい測定そくてい試験しけん二日目ふつかめ


見事みごとだ……」


 おもわずこえれてしまった。それだけ、その姿すがた鮮烈せんれつだった。


 たけばいほどあるオグルぞく青丹アオニ副騎士ふくきし団長だんちょう殿どの相手あいてに、手本てほんせると前提ぜんてい条件じょうけんきとはえ、ものの数分すうふんで的である風船ふうせんすべてを、つぶしきった。


「とかんじで、自身じしんよりおおきい体格たいかくのモノとのたたかいは、あせらずに相手あいてふところはいみ、はやさで圧倒あっとうするのが接近戦せっきんせんける常套じょうとう手段しゅだんだ」

「デハ、アイス・パースランド。初メヨウカ」

「よっしゃ!! いっちょやってやるぜ!!」


 ――アイスの結果けっかは、むっつと善戦ぜんせんただのお調子者ちょうしものではなかった。つづいて数名すうめい大体だいたいふたつからよっつ。そして、ノゼアンはなんやっつという結果けっかし、「今年ことしみな、なかなかやるなぁ」と、中隊長ちゅうたいちょうがボヤいていたのをのがさなかった。


「ネモフィラ中隊長ちゅうたいちょう

「ん? なんだ、ラズライト訓練兵くんれんへい

「この試験しけん例年れいねんはどんな様子ようすなんですか?」

「ああ、基本的きほんてきには、ひとれれば、適正てきせいとして問題もんだいないからな。みなひとふたれるかれぬかだよ」


 成程なるほど、アイス・パースランド。おぼえておこう。

 そして、おればんた。


つづイテ、ラズライト・シーハ!」

「ちなみにだが、ラズ。わたし当時とうじここのつだよ」


 このひと本当ほんとうに……! いいところおれけてくる。期待ぷれっしゃーおおぎるのもかんがえものだ。


「デハ、始メ!」


 まずは一気いっき間合まあいをめ、ふところはいる。されたみぎからのかがんでけ、そのまま姿勢しせいひくたも背後はいごまわりつつ、がり右肩みぎかた風船ふうせんひとつ。


「っもらった!!」


 そのままのいきおいで背後はいごまわるが、ひだりからのまわりがんでくる》。けるのはタイミングてきおそらく無理むり


「ならば!」

「ホウ。ヤルナァ訓練兵くんれんへい


 そのままどうめ、そのあし支柱しちゅうに、鉄棒てつぼう要領ようりょう一回転いっかいてんし、そのまま青丹アオニふく騎士きし団長だんちょうあしだいに、さらに跳躍ちょうやく


「これで、みっつ!!」


 あたま風船ふうせんる。

 ちっ! 中隊長ちゅうたいちょうはここまでのながれで右肩みぎかたふたとしていたのに……!

 そう。おれは、先程さきほど中隊長ちゅうたいちょううごきを模倣もほうしている。


つぎ!!」


 ちゅういているおれけ、しっかりひだりアッパーがせまっている。

 ……ながす!!

 自身じしん左腕ひだりうで相手あいて左腕ひだりうではらい、うですべるようにり、そのまま左肩ひだりかた風船ふうせんふたつをつぶす。

 よし! いつつ!! ……問題もんだいどうだな。中隊長ちゅうたいちょうおれでは、体格たいかくちがう。あのはやさがせるか、がきもだ。


「フェニクサりゅあ剣技けんぎ其乃參そのさん。“ 一日万機いちじつばんき ”!」


 場内じょうない歓声かんせいつ。


其乃六そのろく。 “ 歳月不待さいげつふたい ” !!」


 斬撃ざんげき回数かいすうはどちらも正式せいしきなものの八割はちわり……か。せっかく中隊長ちゅうたいちょう個別こべつ指導しどうをしていただいたというのに、なさけない……。だがまぁ、これで


ここのつ!!」


 いつのにか、場内じょうないすべての試験官しけんかんおよび、訓練兵くんれんへいたちめ、おれ試験しけん観戦かんせんしていた。


 中隊長ちゅうたいちょうは、この時点じてんすべつぶしきっていたため、ここからは自身じしんかんがえなければいけない。

 のこしてしまった右肩みぎかた……。どう処理しょりするべきか……。ひだりからまわるか? いや、ねてみぎにそのまま……? いや……。


訓練兵くんれんへい。いや、ラズライト・シーハ! アッパレダ!! シカシわれモ、コノママ全部ぜんぶラレルワケニモイカナイデナ! スマンガ、つぶレロ!!」


 かんがえているひまなどかった。実戦じっせんだったら、相手あいて感情獣かんじょうじゅうだったら、ここでおれんでいただろう。

 ほんっと、自分じぶんあまさに、嫌気いやけがさすよ……。


 轟音ごうおんともに、おれ試験しけん前半ぜんはん終了しゅうりょうした。


◆◆◆◆◆◆◆◆


 後半こうはん情力じょうりょく測定そくていおよび制御せいぎょ試験しけんは、れい情力玉じょうりょくだまでの訓練くんれん成果せいかもあり、問題もんだいなく課題かだいをクリア。


 個人的こじんてきに、いののこる結果となったが、評価ひょうか自体じたいは、歴代れきだい最高点さいこうてんたたきだし、ハリフ適正てきせいありの判定はんていをもらった。


訓練生くんれんせい第一班だいいっぱんは、会場かいじょうのこりなさい」


 評価ひょうかもらえたあと中隊長ちゅうたいちょうよりこえがかかった。


「なんすかね? ダメだったとこでもわれるっすかね?」

「それはちょうだりぃー」

仕方しかたないっすよねー。直前ちょくぜんにすんごいのせてもらってるっすからねー」

「あれはすごかったけど、おれらには無理むりっしょ」


 ノゼアンとアイスが駄目だめしをされるながれではなしているが、あの中隊長ちゅうたいちょうだ、多分たぶん……


「さて第一班だいいっぱん諸君しょくん! 好成績こうせいせきくやった!!」


 ほら。このひとは、きびしくしようと心掛こころがけているようだが、しんのところが甘々あまあまだ。


「よって、げをおこなうぞ!! なーに、今日きょうわたしおごりだ!!」

にくっすか? にくっすか!?」

「やりぃー!!」


 ノゼアンとアイスは素直すなおよろこんでいる。

 正直しょうじきおれは、気分きぶんじゃないんだがな……。上官じょうかんうことにはしたがほかあるまい……。


◆◆◆◆◆◆◆◆


「だーかーらー!! ラズがぁー、一番いちばんー、すごかったぁ!! ってことぉーでー」


 ――数時間すうじかんである。完全かんぜん出来できがっている。しかしおどろくのはまだはやい。


「ほら、中隊長ちゅうたいちょうぎ? ですよ」

「ちゅーたいちょー? わらしわたしころことは、ネムってべぇー!! それにまらまだ一杯目いっぱいめぇーだぁーもーん」


 まさかの一杯目いっぱいめである。

 よわいにもほどがある……。


「ネムさん。みずむっす」


 ノゼアンはくなぁ。


だれが! 貴様きさまに! ネムとんでいいとったか!! ネモフィラ中隊長ちゅうたいちょうべ!!」

「えーっす……。あんまりっす……」


 えー……。って、なるよな。なんかまん。ノゼアン……。


「こりゃあれだな。中隊長ちゅうたいちょうは、ラズライトにがあるな」

「っすねー。二人ふたり特訓とっくんとかしてたっすもんねー」


 何故なぜ二人ふたり視線しせんいたい。おれがあるなど、そんなことあるわけがいだろうに……。


「ラズがぁ、わらひわたしとぉ、いっひょいっしょが良いってぇ、ったんらよぉ」

「はいはい。そうですね。ネモフィラ中隊長ちゅうたいちょうは、尊敬そんけいしてますし、是非ぜひこれからもそばいておいてしいですね」


 色々いろいろわざだとかのこなしだとか、おしえてもらいたいことは沢山たくさんある。


中隊長ちゅうたいちょうには、色々いろいろおそわりたいですしね」

「…………。ずかちいよぉ! もうこんなとこでぇ」

「あれはタラシだな」

「っすねー」

天然てんねんのタラシだ」

「っすねー」


 ……?? 何故なぜそんなにつめたいおれる……!? それにタラシだと? 何故なぜだ??


 このあとから、ノゼアンとアイスも、たすけてくれなくなり、ややしばらく、中隊長ちゅうたいちょう面倒めんどうるはめになった……。

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