第貮話(B-2前編):入隊〝変えると誓った未来の為に〟

 “ フェニクサ共和国きょうわこくぐん ” には、おおきくけていつつの部隊ぶたいがある。

 あの未来みらい回避かいひするためには、そのなかでも、感情獣かんじょうじゅう殲滅せんめつ主任務しゅにんむとする “ ハーモニー・リメイク・フィーリングス ” ――頭文字かしらもじって、通称つうしょうハリフに編成へんせいされる必要ひつようがある。

 もし、それがダメであれば、次点じてんは、ハリフの補佐ほさあたる、“ ランナップ・リメイカーズ ” ――通称つうしょうランリだ。

 それを目指めざして、二ヶ月にかげつ適正てきせい測定そくてい試験しけんのぞむ。

 そのために、まずはこの訓練生くんれんせい訓練くんれんプログラムをこなしていかなければならない。


◆◇◆◇◆◇◆◇


「ネモフィラ教官きょうかん!」


 どうしてもハリフに編成へんせいされたいおれは、一ヶ月いっかげつほどったあるひる休憩きゅうけい時間じかん教官きょうかんつかまえ、相談そうだんをしてみることにした。


「おまえは……ラズライト・シーハ。だったか」

「はっ」

なに急用きゅうようか? 休憩きゅうけい時間じかんにしっかりと休憩きゅうけいをとる。メリハリをけるのもまた、訓練くんれんうちだが?」


 手厳てきびしい……。ってくれるだろうか……。このやく一月間ひとつきかん教官きょうかん観察かんさつしてきたが、厳格げんかくかたなのはかっている。


「はっ。相談そうだんであります!」

「ふむ……。……よろしい。いなさい」


 かった……。いてくれるようだ。


「はっ。有難ありがと御座ございます」

「で? なんだ?」

「はっ。じつおれ……じゃなくて、わたくしですが、ネモフィラ教官きょうかん所属しょぞくする、ハリフに編成へんせいされたいとかんがえておりまして……」

「おお!! そうか!! ハリフにはりりたいのか!!」


 ん? なんか、反応はんのうが……


「ふむふむ。そうかそうか。じゃあ相談そうだんは、どうやったらはいれるか、かな?」

「え、あ、はい!」

「そうかそうか。うんうん。わたし一緒いっしょいかぁ。そうだよなぁ。うんうん。かるよ!! あこがれるよね! わたしもだったもん。」


 ……「もん」? ん? あれ?


「そんなにね、むずかしいわけじゃないんだけどね、でもどうしたらいかはからないよねぇ! そうだよねぇ! わたしときはね、ける教官きょうかん先輩せんぱいなかったから苦労くろうしたんだよ。いやぁなつかしいなぁ、あのころ。あ、はなしれちゃいそうだね。もどすね。えーと、ハリフのはいかただったね。えっとね、情力じょうりょく自体じたいばすことと、コントロールをおぼえるだけだから、そんなにむずかしくないよ!! 今日きょう訓練くんれんわったら、すこっててもらえる? わたし訓練くんれん使つかってたおがりでければ、 “ 情力玉じょうりょくだま ” っていう、さっきってた、情力じょうりょくばすのとコントロールする練習れんしゅう出来できちゃうスゴォイ道具どうぐゆずっちゃうよ!! それ使つかって、いっぱい頑張がんばって、はやわたしところはいっておいで!! わたし教官きょうかんかったね!!」

「…………」

「あ…………」


 教官きょうかんかおあからめ、ゴホンッと咳払せきばらいをしたのち何事なにごとかったかのよう真顔まがおもどす。あからんだほほまではもどっていなかったが。


「あー、ということでラズライト。本日ほんじつ訓練くんれんわったら、のこりなさい」

「いや、教官きょうかん……」

「な、なんだ? らないとうのか?」

「そうではなく、いまながれから、何事なにごとかったかのように、とうのは、すこ無理むりがありませんか?」

「だってぇ……」


 ネモフィラ教官きょうかんたいするイメージが、ガラリとわったのはうまでもない。


◆◇◆◇◆◇◆◇


「それ、なんすか?」


 大浴場だいよくじょうからもどってきた、ルームメイトの “ ノゼアン・ソーダライト ” に質問しつもんされる。


「ああ、これは情力玉じょうりょくだまっていう、情力じょうりょく増幅ぞうふく制御力せいぎょりょくを伸ばす道具どうぐだ」


 ノゼアンも今期こんき入隊にゅうたい同期どうきだ。


「へー。なんすか? ラズライトくんは、ハリフ志望しぼうっすか?」

「まあな、そういうノゼアンは、ランリか?」

「そうすっねぇ、ランリか……、もしくはイリピっすかねぇ」


 イリピ――正式せいしき名称めいしょう “ インテリジェンス・リビルド・ピース ” 。諜報活動ちょうほうかつどう主任務しゅにんむとする部隊ぶたい名称めいしょうだ。成程なるほどいい意味いみで、ノゼアンはどちらかとうと、補佐ほさやく得意とくいそうではある。


「やっぱ心情刀しんじょうとうより感情刀かんじょうとうっすか?」

「そうだなぁ、それもあるが、それよりも」

特権とっけんっすね」

「ああ」

「ハリフは現存げんぞんする法律ほうりつ一切いっさいしばられることはない。っすね」

「それだ」


 そう。ぐん在籍ざいせきし、ちから行使こうしすること可能かのうでありながら、自由じゆうがきく。それが目的もくてきだ。


 そのも、情力玉じょうりょくだまでの自主訓練じしゅくんれんをしつつ、ノゼアンと色々いろいろかたった。


◆◇◆◇◆◇◆◇


 ――入隊にゅうたいより二ヶ月にかげつ適正てきせい測定そくてい試験しけん一日目いちにちめ


 今日きょう明日あす二日間ふつかかんで、どのたい編成へんせいされるかがまる。


 やれるだけのことはやった。あとはこの二日間ふつかかん全力ぜんりょくたるだけだ。


 まずは身体しんたい測定そくてい体力たいりょく測定そくてい無難ぶなんしていく。すこ面白おもしろかったのは、体力たいりょく測定そくていときのノゼアンだ。始終しじゅう文句もんくわめきながら、体力たいりょく測定そくていのぞんでいた。

 その大声おおごえしているぶん、むしろ、他社たしゃより体力たいりょくがありそうでわらえた。


 そして学術かぐじゅつ試験しけん。ハリフに編入へんにゅうされるなら、五割ごわりれればいいらしい。が、編入時へんにゅうじ等級とうきゅう結果けっかによって変動へんどうする。

 目指めざすは満点まんてん兵長へいちょうだ。


◆◇◆◇◆◇◆◇


 ――よる宿舎しゅくしゃ自室じしつ


学術がくじゅつ試験しけんほうはどっだったっすか?」

「ああ、もちろんバッチリだ!!」

「っすかー。さすがラズライト君っすね」

「とかってるが、ノゼアンもだろ?」

体力たいりょく使つかわなければなんとかなるっす!!」


 そうはうが、体力たいりょく測定そくていほうも、ノゼアンはわりとしっかりとこなしていただろうに。


明日あしたは、午前中ごぜんちゅう一緒いっしょっすね」

「そうだな。ひるからは別々べつべつか」

「っすね」

明日あすためにも、今日きょうはもうるか」

「もう今日きょうはクタクタっすからね」

「そうだな。とくにノゼアンは大声おおごえてたしな」

「そ、そっすかー?」


 いながらわらう。


「じゃ、おやすみ。ノゼアン」

「おやすみっすー」


◆◇◆◇◆◇◆◇


 ――試験しけん二日目ふつかめ


 ハリフ及びランリ適正てきせい測定そくてい基本的きほんてきに、感情獣かんじょうじゅう大型おおがたである。そのため、この測定そくていでは、他国たこくであり、巨体きょたいであるオグルぞくの国である “ オーガスタ王国おうこく騎士団きしだん ” の協力きょうりょくおこわれる。オグルぞく騎士きしあたまかたどう背中せなかにそれぞれ二個にこずつけられた風船ふうせんを、いくつぶせるか、をはかられる。


われハ、青丹アオニ・ニムオロ。オーガスタ王国おうこく騎士団きしだん第五だいごふく騎士団長きしだんちょうダ。キミたちノ、オ相手たいて今回努つとメル」


 オグルぞく実際じっさい拝見はいけんするのははじめてだ。

 ……でかい。このおおきさでも感情獣かんじょうじゅう平均へいきんサイズより一回ひとまわちいさいとうのだから、ハリフやランリの主任務しゅにんむ相当そうとうなモノだろう。


 ここを突破とっぱ出来できねば、はなしにもならない。と、うわけだ。


「デハ早速さっそく!! アイス・パースランド!!」

「うお!! マジかよ!? おれからか!!」


 これはまた無謀むぼうな……。いままで自身じしんよりはるかにおおきい相手あいて相対あいたいしたことすらいだろうに、きゅうになのか……。


て、青丹アオニ殿どのさきわたし手本てほんせることになっているはずだ」

「コレハマナイ。ソウデアッタ」

「ほっ。かったぁー」


 お調子者ちょうしものの “ アイス・パースランド ” は、心底しんそこホッとしていた。

 たりまえだよな。お調子者ちょうしもののおまえでなくとも、そういう反応はんのうになるだろう……。


 そして、模擬戦もぎせんとはえ、ネモフィラ教官きょうかんたたかいがられる。巨体きょたいとのたたかかた、しっかりとせてもらう。


「では、青丹アオニ殿どのはじめよう」

「ウム。よろシクねがシマス」

よろしくおねがいします」

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