最醜話(C-4前編):死神の鎌

 いつからだったかな……。もうおもせない。破壊はかいされたまちむら情報じょうほういては、グレンのあとつづける日々ひび……。


◆◆◆◆◆◆◆◆


 ――いつからか、わたしにも異名いみょうけられていた。“ 慈愛じあい死神しにがみ ” 。わたし情能力じょうのうりょく由来ゆらいする異名いみょうだ。


 たしかあれは……、グレンをはじめてすぐのころ


「た……す……け……て……」

「せめ……て、こいつ……だけ……でも……」


 ブーリーン首長国しゅちょうこく首都しゅと “ ムナ ” 跡地あとち一組ひとくみ男女だんじょにかけていた。


いまたすけます」


 ブスッと、女性じょせいかたなす。もちろん感情刀かんじょうとうだ。


「なん……!! ……この、ひとでなし!!」


 まだほかにも、このまちのこりがたみたいだ。この感情刀かんじょうとう能力のうりょく、〝 した相手あいて回復かいふくする能力のうりょく 〟をて、誤解ごかいしたんだろう。

 まぁ、仕方しかたないか……。見栄みばわるいもんなぁ……。

 うす青白あおじろひかりつつまれ、女性じょせいきずえていく。


「あ、ありがとうございます!!」


 つぎ男性だんせいおな要領ようりょういやす。


「ありがとうございます!! この御恩ごおん、どうおかえしすればいか……」

おんだなんて、とんでもない……。りません」


 ――本気ほんきでそうおもっていた。グレンがやったことだ。ようするにわたし責任せきにんでもある。


「いえ、なにかおれいをさせてください!! 二人ふたりともたすけてもらってなにかえせないというのは心苦こころぐるしいです」


 今度こんど女性じょせい男性だんせいわりおれいもうてくる。がらなさそうだ。だったら……。


「でしたら、おしえてください」

「はい!! なんでもいてください!!」

「では、やみ厄災やくさいについて、っていることをおしえてください」

「ひっ……ややや、やみの……厄災やくさいですか?」


 意地いじわるいのは自覚じかくしている。ここをおそったのもグレンだ。たどりいたときくろほのおがまだのこっていた。この二人にとってはトラウマの対象たいしょうだろう。


おれからはなすよ……」


 おびえる女性じょせいかばうように男性だんせいはなはじめる。


やみ厄災やくさい……。二十にじゅう年程前ねんほどまえはじめてあらわれた、人型ひとがた感情獣かんじょうじゅう

感情獣かんじょうじゅう……」

いまは、情獣人じょうじゅうじんなんて呼ばれ方もしているらしいけど、その姿すがたは、ひとうよりも妖魔スペクト鬼魔コンクル幻魔ノネストなどにちかいもので、ころしてもぬことはない」

ころしてもなない?」

「まぁ、揶揄的やゆてき表現ひょうげん一種いっしゅだとおもいます。なにせ、グリフォニアぐんにティモスとルクスリアの連合軍れんごうぐんをたった一人ひとり殲滅せんめつしたってはなしらしいです」


 人魔大戦じんまたいせん終戦後しゅうせんご以降いこう、その姿すがたせることのくなった魔族まぞくたちひとであるはずのグレンが、魔族まぞくか……。


さらには、アイツがるうかたなからはっするやみほのおは、すべてをやしくすまでえることはく、そして、その見境みさかいさから、いま災禍さいかあつかいに認定にんていされている」

「それで、やみ厄災やくさい、か……」

「そして今日きょう、このブーリーンにとうとうあらわれました……。あなたのおかげおれらはたすかりましたが……このくには、もう……」

おしえてくれて、ありがとうございます。先程さきほどまだ無事ぶじかたたようです。こうの方角ほうがくかったので、そちらへってみてはどうですか?」

本当ほんとうですか!? ありがとうございます!!」

たいした情報じょうほうおしえられていないのに、そんな情報じょうほうまでいただいて、ほんとうにありがとうございます」

「あ、あの……」


 と、いままでおび えてふるえていた女性じょせいこえした。


「はい、なんですか?」

やみ……の厄災やくさいは……、あっちの方角ほうがくっていきました」


 この情報じょうほうたすかる。正直しょうじきいままでずっと、まちむら壊滅かいめつし、そこから逃げてきたという人達ひとたち情報じょうほうたよりにってきた。いま後手ごてではあるけど、いままでよりははやかうさき予測よそくができる。


「ありがとう!! じゃあ、わたしやみ厄災やくさいいかけるので、失礼しつれいしますね」

「「えっ!?」」

「それと、きずなおってますが、くれぐれも無茶むちゃはしないようにしてくださいね。それでは」


 おどろ二人ふたりわかれをげ、わたしまえすすむ。


 ――結局けっきょく、このあともグレンにいつくことはかなわず、時間じかん経過けいかしていくことになる。おそらくたすけた二人ふたりからひろまったのだろうけど、このころから、“ 慈愛じあいの聖女 ” と、ばれはじめることになる。


◆◆◆◆◆◆◆◆


博士はかせ!! 慈愛じあい聖女せいじょ発見はっけんしました!!」


 ――慈愛じあい聖女せいじょばれはじめ、それにも最初さいしょ気恥きはずかしさなどから抵抗ていこうしていたが、れてきたころ


きみ慈愛じあい聖女せいじょとはねぇ」

「なっ!? おまえは!!」

「やぁっと、つけたよぉ。トリシュナぁあ」

「ノーリッジ!!」


 んでなかった!? いや、んだというはなしいたわけではなかったけど、あのとき、ディレノのまち壊滅かいめつしていたし、このおとこ感情獣かんじょうじゅうはかなりのかずたおされていた。てっきりあのときんだものとおもんでいた。


「いやいやいやいやぁあ。これは運命うんめいえるんじゃなぁいですかぁあ?」

なに運命うんめいだ。反吐へどる」

すこぉおし……すこぉおしじゃないか。まぁあ、ないあいだぁあに、おくちわるぅうくなったみたいですねぇえ」

「おまえけたし、はなかたさら気持きもわるくなったようね」

けたって、ひどぉおいですねぇえ」


 兵士へいし四名よんめい感情獣かんじょうじゅう一体いったいいまわたしならてる。


「まぁまぁまぁあ、トリシュナ。おはなしあとぉおでゆぅうっくりしようかぁあ」


 兵士へいしたち近寄ちかよってくる。


「こと! わる! わよ!!」


 ――このころには、肉体にくたい強化きょうかする情力じょうりょくコントロールを感覚かんかく会得えとくしていた。


 ものの数分すうふん兵士へいしたち制圧せいあつ。ノーリッジをにらみつけてやる。


「おぉお、怖い怖ぁあい。では、はいってみようかぁあ。〝 アドフェクトゥス 〟“ ナヴァラサ・シュリンガラ ”」

『あぁぁあぁぁあぁああぁあアイシテルルルルルル』

「え!? 感情獣かんじょうじゅうしゃった!?」


 ノーリッジがれている以上いじょう改造かいぞう感情獣かんじょうじゅうであるのはかる。けど……、このおおきさ、いびつ姿すがた……。


『アアアアアアイアイアイ……シテ!!』

「あはぁあ。いでしょいでしょお? このきみ情力じょうりょくもとに、ひとからつくったんですよォオ!!」


 は!? わたし情力じょうりょくもとに、ひとからつくった?


「……ふざけるなっ」

「およよ? きみいもうとみたいなもんですよぉお??」


 くるってる。コイツは完全かんぜんくるってる!!


「その感情獣かんじょうじゅうも、おまえも、ここでわらせてやる!!」

「あぁぁあ、ちがいますよォお? この感情獣かんじょうじゅうではなく、情獣神アドフェクトゥスですぅう!!」

るか!!」


 距離きょりめる、がる、頭上ずじょうへかかととし。


『アァァアぁァあ』

「よし、つぎ!!」


 そのままあたまみつけもう一度いちどねる。攻勢こうせいまえわらせる。


「そのまま、る!!」


 情力じょうりょく身体能力しんたいのうりょく底上そこあげしてるとはえ、もともとだ。ちからはどうしてもりない。だから、これをした。


「はぁぁぁあああ!! 感情刀かんじょうとう形状変化けいじょうへんか!!」


 たかい、落下らっかいきおいをりて、くびとす。そのための……


剪定の大鎌フィール・サイズ!!」


 ドスンッ!! と、くびちる。


「あぁあ……。これで、やっと完成かんせいだ」

完成かんせい? 完成かんせいってどういうことよ!!」

言葉ことばどおりぃですよぉお」


 感情獣かんじょうじゅう形状けいじょうくずれていく。

 たおした……で、いいんだよね?


「さぁあ! ほら! ぼくころさないとぉお」


 なにかがおかしい……。けど、かんがえてるひまい。いまこの瞬間ときにもグレンは……。


「ほら。ほら! ほら!!」

「それが! のぞみなら!! 剪定の大鎌フィール・サイズ!!」


 おもって、くびとす。きらいなやつとはえ、とうとう人間にんげんを、ころした……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る