第15話 ─駅のホーム7─

主を呼びつけて端末を見るように伝えた俺は、自分の端末に目を落とした



「なぁんか、白鷺に襲われてんな。だからあんだけ路地裏に入るなって言ったのに」


「言っていたのか」


「一応な。まぁ、あいつは俺の言うことなんか聞きやしねぇけどよ」


「ふむ。であればどうする」



主は少し頭を悩ませ、端末をベンチに置いて立ち上がった

そして目を閉じる。しばらくしたところでフラフラと体が揺れ始めた



「何をしている?」


「久遠との接続。死神の従者は、主人にとっては代わりの体にもなる。それを利用して、どんな状況でも操れるんだ」



主がその場に倒れ込んだ

俺はそれを見て体を支えると同時に、主の状態診断を行う



(身体損傷はなし。精神損傷もない。…久遠とやらとの接続がもし、魂魄を一時的に移し身することだとすれば…まさか…)



俺はその考えが正しいか否か、確認するために主が置いた端末を手に取り観測を開始する

雪菜の腕に白鷺の手が触れそうになったその時、ちょうど現れた久遠がその手を



「…移し身を持つ死神…か」



根本的な話だ。魂を司る死神の大きな特徴は、自身の魂の組成さえ操作してしまうことだ

これはほとんど無意識に行われ、これから長い時を生きるために魂を強くする

その過程でどうやら従者に乗り移ることが可能なように改変したらしい



「…夜斗さん、寝てるの?」


「…閻魔か。ああ…なんというか…」


「あ…久遠君に乗り移ってるんだね」


「知ってるのか」


「…むしろそっちの死神はみんなやれると思うよ。よく知らないけど」


「それは世界の法則的にどうなんだ」



当たり前のように現れた閻魔に目を向けることはしない

向けたところで俺には黒い霧にしか見えないのだ

怪異は相手の力を見ることができる

霧はほとんどの場合、その者の力量を示す

そのことからわかるのは、主よりやばいということだけだ



「べっつにー?元々魂を司る死神は冥府の管轄外だし、夜斗さんがやることには私何も言わないもん」


「…そうか。主以外なら?」


「それも別に気にしないよ。さっきも言ったけど、冥府の管轄じゃないの。というか管理できないの」


「できない?」


「魂を司る死神は魔力を持たないからね。霊力だけで動いてる存在をとやかくできないの。それが冥府」



であれば実質やりたい放題か

あの白鷺という男が死神でないことが唯一の救いとも思てきたな



「…でも、あの久遠君については別なの。あの子は殺しもやるし密偵もする。それで助かった人もいたけど…」


「冥府としては判断に困るのか」


「そゆこと。ま、それは追々かな」



閻魔は微かに笑い、ため息をついた

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