第11話─人間界5─

主が裁判所に行っている間暇だな

端末を見てみると、ペットショップで異様に嫌われている霊斗が手を噛まれたところだ



「…久しぶり、霊斗」


「…!純恋すみれ…」


「…どちらさまですか?」


「…元カノ?」


「…なんじゃない?」


「なんで2人してわかってないんですか!」



デート中に元カノと遭遇するとは、中々ついていないな

まぁ霊斗の運のなさは筋金入りで、よくトラックに水溜りの水をかけられたりしていたが



「いやなんか、夜斗に唆されて付き合ったはいいけどそれっぽいことしてねぇんだよなぁ」


「もはやデートとかしたっけとかって記憶だし…?」


「…ちなみに付き合っていたのは…?」


「「5年前」」


「かなり過去ですね…」


「そういえば霊斗、夜斗は?いつも一緒じゃん」


「…あー、そうか。知らないのか。夜斗は行方不明になってて、1ヶ月くらい前に死亡判定になったんだよ」


「ふーん。あいつらしい」


「可哀想に、しっかり嫌われてやがる…」


「嫌いとかじゃない、ただ目障り」



主が見てたら泣いてるぞこれ

タイミングよく呼び出してくれたものだ、閻魔よ



「今の彼女?」


「そうだよ可愛いだろ」


「うっざ…。私はあんた以降彼氏できてないのに、あんたは2人彼女できたのなんか腹立つ」


「ひっど…そういうとこやぞ」


「死にたいの?」


「ごめんなさい」


「…あの、お二人の元の関係は…?」


「…俺から見ると友達の幼馴染」


「私から見ると幼馴染の友達。あと元同じ部活」


「そういやそうだったな」



吹奏楽部、だったか。中学生時代に霊斗と同じ部活をやっていたと聞いていたな

まぁ部活がなんなのかよくわかってないのだが



「暇そうだね、霊斗」


「暇じゃねぇよ見てわかってくれ」


「そ。じゃあ邪魔したわ」



歩み去る純恋という少女。なるほど、こんなところに潜んでいたのか

肩越しに振り返って笑い、その悪魔は主を波乱に巻き込むことを告げた



「私が夜斗の居場所を知ってるとしたら、どうする?」



俺を含め全員に激震が走った

本当に知っているとすれば、ここへ来ることができるということになる


俺は少しの懸念を胸に、端末をポケットに押し込んだ

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