第10話─駅のホーム5─
よくわからんが、主の機嫌が悪い
原因はおそらく俺の手にある
どうやら人間界では美食家…というよりはただ色にこだわっていたらしく、この世界の主食であるレーションが気に入らないらしい
「文句を言うなら食うな」
「食わなきゃやってやんねぇし食うけどよ…食糧とかないのかよ…」
「あるはある。稀に冥界や人間界の駅跡地に供えられる食糧なら食えるぞ」
「月1じゃねぇか。しかも不味い粥と味噌溶かしただけのスープ」
「ふむ…あれもかなり美味い方だが…」
「そりゃレーションだけ食ってるやつからすればな」
これは妖怪が好んで食べるものだ
カロリーとかそういう概念ではなく、霊力や魔力が多分に練り込まれているため、これを食えば人間を襲う必要はないという優れもの
これのおかげで閻魔の仕事は減ったというのに
「そういえば主よ。閻魔が会いたいと言っていたぞ」
「そんなんどこで聞いたんだよ。なんで冥府の王が
「伝書鳩が来ていた。これだ」
手紙をカード投げの要領で渡す。これは主が散歩に行く時、暇になるためにやっていた遊びだ
トランプとかいう紙を投げて遊んでいたら、人魂くらいなら殺せるようになってしまった
「…うーん。読めるか!」
「…妖怪語はまだ読めんか。こう書いてある。「拝啓冬風夜斗様。貴方様の扱いについて会議を開いた結果が出ましたので告示いたします。つきましては裁判所に出頭いただきたく思います」だ」
「えー…冥界に入れないからここにいるんだけど…」
「これを預かった。これをつけていると門番が主を死者と勘違いする指輪だ」
「うっわご都合主義…」
投げ渡したのは主の左薬指にちょうどいい指輪だ
こんなもので騙せるとは冥界の門番も大概雑魚である
「いつでもいいとは言っていたが、あまりに遅いと判決が重くなるぞ」
「世知辛いなぁ…」
主は欠伸をしてからため息をついて空を見上げた
今日の空も変わらずただ黒い
「まぁ、行ってくるか…。つか場所知らんのだけど」
「入ってすぐ目の前に見えるデカい建物だ」
「了解。ロクな結果にならないことは目に見えてるなぁ」
主はまたため息をついた
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