第6話─人間界3─
霊斗は相対する男を睨んだ
生前(?)の主を憎んでいたという男だ
「白鷺…!」
「…っ!」
雪菜が恐怖に顔を染める
そんな雪菜を庇うように左手を広げ、霊斗が立ちはだかっていた
そして2人を取り囲むように10人程度の人間が現れ包囲網を作る
(クソ…!夜斗がいればこんなの突破できるのに…!)
どうやら以前は主が突破口を作っていたらしい
死神の力があればその程度は余裕だったと笑う主を横目に様子を見る
「何しにきやがった…!」
「ははは、つれないなぁ。クラスメイトの墓参りにくることがそんなに悪いかな?」
「テメェだけは悪いって断言してやるよ!」
「負け犬はよく吠えるとよく言ったものだよ」
男が指を鳴らすと、雪菜を捉えようと取り巻きが手を伸ばす
「触るなァ!」
霊斗が殺意をむき出しにして手を払い除ける
主ならどうしていたのだろう?
果たして笑って応対していたのだろうか
「ふ、ふふ…この状況でその態度は中々面白い。勝てるわけがないだろうに」
「勝つ勝たないじゃねぇんだよ…。テメェを、夜斗の後輩に近づかせなんてしたら、死んだ時に怒鳴られるからな!」
中々いいことを言う
確かにこの主は深く長い説教をするだろう
ただでさえ話が長いのだからそうなるのも無理はない
しかしそれだけが理由ではないようだがな
「はぁ…。状況を理解するのも聡明さだよ。君たちは冬風夜斗を失い、ただの木偶と化したんだ。俺の父に頼めば簡単に潰れる程度の存在なのに」
「親父の威を借る雑魚に何ができる?」
霊斗は警戒を解かない
雪菜の手を強く握り、一点突破を狙っていたがしかし
「おや…。こんなところで会うとは奇遇ですね、緋月君」
「…あ、あんたは…」
「
黒淵の名も聞いたことがある
主が属する冬風家の分家にあたるもので、裏で日本を牛耳っているという名家らしい
白鷺家は対照的に、表を牛耳っていると勘違いしている
「白鷺の次期当主ともあろう方がこんなところで何をされていたのですか?まさか、この少年少女を取り囲んで痛ぶっていたわけではありませんね?」
「くっ…!覚えておけ!」
走り去る集団の背中にため息を投げかけて冥賀は霊斗を見た
雪菜は震えてしまっている。人間にはあれが恐怖を感じる事柄なのだろう
「…ふむ。こんなところで相引きとは感心しませんね、緋月君」
「そんなんじゃねぇっすよ…」
「霊斗さん…この方は…?」
「…夜斗の従兄で再従兄っていう謎の関係を持つ人だよ」
「僕の母と夜斗の母が姉妹で、僕の父と夜斗の父は従兄弟なので、そういった複雑なものになりますね」
「そう、なんですね」
これは主に聞いた情報と一致している
古くから冬風家に仕える桜坂家と神楽坂家の内、神楽坂家は夜斗と冥賀それぞれの父に惹かれ、結婚したという話だ
従者と主人の恋愛。普通ならあまり受け入れられることではないのだが、どうにも冬風は緩い
俺は知っている。遠い過去、江戸時代だかその頃に従者に恋をした者が処刑され、従者も奴隷扱いを受けることになったとある城主の話を
「君も冬風に連なる者ですよ」
「…え?」「は…?」
「僕らの曽祖父の妹の孫の嫁ぎ先が神崎だと聞いています」
「…なら、私は冬風先輩の…」
「家族ということになります。しかし、君の母は僕らと関わらせないために冬風や黒淵、母の実家である夜月から遠ざけたようですが」
「…夜斗って何してたんだ?」
「特に何も。死神を総括するというのが冬風当主の仕事であり、黒淵は不穏分子の抹殺を担当しています。現在冬風当主は夜斗の父なので、この後は荒れそうです」
この点は主も懸念していた
しかしもしやその懸念というのは、妹が当主になることそのものだったのか?
或いは妹の夫にその責務が向くことか?
それとも、妹に許嫁が生じることで起きる恋愛制限についてなのか?
それは俺にもわからぬ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます