第5話─駅のホーム3─

「なぁ如月」


「なんだ?」



不意に主が話しかけてきたため、端末を見るのをやめる

主はベンチに寝転んで屋根を見ていた



「…雪菜、自分が死神だって知ってたんだな」


「…そのようだな。それは端末を見ればわかることではないのか?」



心の内まで見透かすこの端末であれば、死神を自覚しているという事実を知ることは容易いはずだ



「…死神の能力で、心の裏の裏までは見えないんだよ」



どうやらこの端末は死神の心を見透かすことはできないらしい

この端末は対象の霊力を観測し、波長や強度•位相を見て感情や思考を読む道具だ。死神は魔力を得る代わりに霊力を失うため、機能が追いつかないという



「魔力を読めるようにすればいいだけのことだろう?」


「まぁな。データデバイスの感知機構を別に切り替えれば専用機は作れる。けど、魔力には属性があるんだ。だから一人一人に合わせて作る必要があるんだよ」



ふむ、違いがわからぬ

霊力には属性というものがないように聞こえたのだが…



「霊力は人間に備わる力だ。人間は等しく平等にそれを与えられているから、平常時は波長やらなんやらは変わらない。けど、魔力は人間が得た経験を元に変質する。だから人によって全く異なる挙動をするんだ」


「であれば俺は?」


「お前らのは妖力つってな。人々が噂することで生まれる呪いや伝説の類を糧に生まれるから原則読むことができない。人々がお前に対して覚える恐怖は日によって…いや、その時々で変わるからな」



まるで人を恐怖や畏怖の対象のように言う主を少し横目に睨んだが、どうせ気にも留めていないのだろう

非常に腹立たしい限りだがあえて言及するのはよそう



「であればその者に合わせて作れないのか?」


「…作れるよ。作れるけど、作る必要はない。大体読める」



長年を共にしたことにより生まれる絆、というのだろうか

主には雪菜の思考が読めるという。現に、今霊斗の手に触れようとしたことを言い当てた

なるほど、確かに必要なさそうだな



「…む。主よ、どうやら修羅となりそうだぞ」


「んぁ?…白鷺か、また面倒な奴だ…」



その者の名は先程聞いた

主を殺そうと画策して失敗した人間

取り巻きが多く、容易には突破できない包囲網

霊斗よ、お前はどうやって切り抜ける?

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