4、誤算

「やられた、、、。」


ミナトが物心ついた時に真っ先に思ったことである。

平凡な家庭に生まれた普通の赤ん坊、そう思っていた。

そう、自身のスキルに気が付くまでは。


ミナトは3歳で自らに与えられた神からの祝福、つまり固有魔法ユニークスキルが【鑑定】であることを知ってしまったのだった。

わずか3歳にしてスキルを知覚し使えたこともひとえにこの固有魔法ユニークスキルのおかげなのだがミナトにとっては迷惑以外の何物でもなかった。

そしてこの日からミナトのスキルとの闘いが始まったのだった。

いかにこのスキルを抹消し、平穏な人生を歩むのか、という戦いが。


「では次の者、こちらへ。」


神父に呼ばれケイトが教会の奥に備え付けられた小部屋へと入っていく。

固有魔法はその人の最大の強みでもあり弱みでもある。

その為固有魔法発現の儀式は個別に行われる。


「じゃあ先に行ってくるぜ。期待してろよな。」


「それ、僕には関係ないよね。」


「はは、冷てーな。まぁいいや、後でな。」


そう言ってケイトは奥の部屋に入っていった。

将来は彼の父親のような英雄と呼ばれるような騎士になることを夢に見ているケイトにとってはそれだけこの儀式は大切なのだろう。

仮に戦闘系以外のスキルが与えらるようなことがあれば騎士になることはできるが英雄になることはできない。

適性のない系統は能力値の頭打ちが早いからだ。

だけど心配する必要はないだろう、彼の固有魔法ユニークスキル長剣使いロングソードマスターだという事をミナトは


「次の者、中へ。」


ミナトの順番が来たらしい。

仕方がなくミナトもケイトが入った部屋と同じ部屋に入る。

その小さな部屋の中心にはこの質素な部屋には似つかわない大きな台座がありその上に紫色の大きな水晶が置いてあった。

そして部屋の奥には入ってきたのとは別な扉がある。

儀式が終わった後はそこから出ていけ、という事だろう。


「右手でその水晶に触れてください。神があなたを祝福してくださいます。」


ミナトが扉のすぐそばで立っているとすぐ隣に控えてした巫女装束の女性に声をかけられた。

案内係がこんなところにいるなんて守秘義務はどうした、そんなことを思ったが声には出さない。

ミナトは黙って言われた通りに右手を水晶の上に置く。

すると水晶からあふれた光がミナトを包む。




「ここは、、、」


光に包まれたミナトの視界が戻る。

薄目を開けて確認したこの場所はだ。


「ようやく来たか、問題児。」


後ろから聞こえた聞き覚えのある声に振り向くとそこには想像した通りの人物が立っていた。


「神か。なに、わざわざ祝福する人を全員ここに連れてきてるわけ?」


相変わらず距離感の分からない白い空間を見渡しながらめんどくさそうに尋ねる。

神からの祝福の儀式と聞いてからどうせこうなるであろうことは予想していた。


「お前だけだ。さんざんこの私をてこずらせてくれたからな、意趣返しとでも思ってくれればいい。」


「せこいね、神のくせに。」


「ふふふ、なんとでも言えばいい。お前は私が与えた祝福によって地を見ることになるのだからな。」


こんなのが神で良いのか、この世界は。

まぁ、僕には関係ないか。

それにしてもそんなに悪い顔してるけど神のくせに知らないのか?

僕がすでに自身のスキルを知っていることを。

そしてそのスキルにある《隠し技能》のことを。


「さぁ、今こそお前に与えられた祝福を披露してやろう!私がお前に与えた固有魔法ユニークスキル、それは【鑑定】だ。偉大な大賢者の生まれ変わりよ、とくとこの世界を救うがいい。」


自信満々に声高と叫ぶ神。

金髪ロングの美形なだけに憐れみを誘うその姿は余計残念に見える。

そして神が叫び終わるとどこからともなく空中に一枚の紙が現れた。

この紙が鑑定書と呼ばれるものでスキルの有無や職業、賞罰までも記載される身分証明書である。

教会に行けば更新してくれるらしい。


「ねぇ、神様。これのどこが【鑑定】なの?」


ミナトがそう言って神に突き出した紙。

そこに書かれていた固有魔法ユニークスキル嘘鑑定ライヤーチェック100人に一人はもっている鑑定の中でも末端に位置するDランクの固有魔法ユニークスキルだった。





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