3、儀式

ミナトが新たに剣と魔法の世界、グラシアスに転生してからすでに15年の時が経っていた。

ミナトはその間特に何もなく、平和な日常を過ごしていた。

そして今日はそんなミナトの成人の儀式の日でもある。


神はミナトとの約束を守ったらしくミナトが生まれた家は裕福でもなく貧乏でもない普通の家庭だった。

父は大きな商会で働く従業員、母は編み物の内職をしている。

ごく普通の家庭だ。

ミナト自身もどこにでもいる普通の子供だ。

ただある一点を除けば、である。


「偉大なる神よ。ここに成人し新たな力を得んとする者たちが集まりここで神に祈りを捧げん。この声を聞きし偉大なる神よ。彼ら若人に祝福と加護を授けたまえ。」


町で一番大きな協会、そこに今日までに15歳となった者たちが集められていた。

これから神による祝福と加護があたえられる。

おそらくこれまで何十回も言ったであろうセリフを神父が口にし、儀式が始まる。


通常この世界の人々は祝福として神から一つだけ固有魔法ユニークスキルを授かる。

それらは通常の魔法とは異なり魔力も詠唱も必要としない唯一の魔法である。

故に固有魔法ユニークスキルのランクは強さを測る上では外せない。

そしてミナトに与えられたそれはSSSランクの鑑定。

鑑定というスキル自体は珍しいものではない。

武器鑑定や薬鑑定、人物鑑定、金属鑑定、嘘鑑定、文書鑑定など様々なジャンルの鑑定が存在している、100人に一人は持っている程度のスキルだ。

ただミナトが授かったスキルは武器鑑定でも素材鑑定でもない、【鑑定】なのだ。

それはつまりすべてを鑑定することができるというものだ。

ジャンルに関係なく、すべてを。

しかも調べたいと思う事をすべて調べられる。

相手の弱みも強みもだ。


「なんか緊張すんな。こう改めて成人の儀式をされると。俺の固有魔法ユニークスキルなんだろ。なぁ、ミナトはどう思う?」


幼馴染のケイトが小声で話しかけてきた。

儀式中の私語は禁止されているはずだが?


「さぁ、なんでもいいよ。僕はね。」


適当な返事を返すミナト。

その言葉にしゃべるなという気配を感じたのかそれ以降ケイトが話かけてくることはなかった。

ケイトのいうように通常の人はこの儀式まで自身のスキルを知ることができない。

スキルが与えられるのは生まれた時なのだが15歳でこの儀式を受けること初めて正確な祝福となる。

そのため15歳になるまでは自分のスキルを知らないのが普通だ。

だがミナトこの件に関しても例外だった。

転生し、前世の記憶があった為か、この鑑定のスキルの為かはわからないが物心ついた時にはすでにこのスキルのことは知覚していた。


このスキルさえあれば大賢者になることも最強の軍師になることも夢ではない。

現にこの世界が有史の歴史を刻んでから5000年、このスキルをもって生まれたのは先の大戦の英雄、大賢者ミネルバその人のみであった。

このことが国にバレれば間違いなくミナトは大賢者ミネルバの再来として祭り上げられることだろう。

そのことを知ったときにはあの神を呪ったものだ。

望んでいた一般人生活に訪れた危機、成人の儀式でこのことが露見してしまえば英雄ミネルバと同じ道を歩むことになる。

まぁあくまでもの話であるが。

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