2、転生

「はぁ、わかりましたよ。わかりました。転生すればいいんでしょ。」


ついに湊が折れた。

説得開始からはすでに7時間。

初めは何としても、と意気込んでいた神はもは萎れまくっている。

げっそりとやつれた頬に涙か鼻水かもはやわからない水でぐちゃぐちゃになった顔。

神の威厳などどこにも感じられない。

こんな姿を見せられてしまえば湊が折れるのも致し方がない。

なにせ見るのも嫌なほど汚いのだから。


「つ、ついにわかってくれたか!では手続きをはじめよう。」


ようやく湊が折れてくれたことによって元気を取り戻した神は意気揚々と手続きに取り掛かる。


「まずは転生先だ。王家、上級貴族、下級貴族、騎士、商「平民で。」」


「、、、。では次に名「ミナトで。」」


「、、、、うぉほん。次に魔法「使えなくていいです。」」


「、、、、。ごほん。固有魔「いりません。」」


「、、、。ごほんごほん。最後に天し「平凡で」


「今なん「平凡」」


「人の話を聞けよ。。。」


平民で魔法適正もなし、それに加えて固有魔法ユニークスキルまで拒否。

挙句の果てに天職も平凡なものを望むとは。

完全に世界に埋もれる気か、こいつは。


「もういいですよね。転生するならさっさとおねがいします。」


ブチ。


神様の堪忍袋の緒がついに切れた。

そんなに平凡に生きたいのならそうすればいい。

ただしここまで神をコケにしたんだ。

平凡に生きられるとは思うなよ。


そんな神のくせに器の小さい恨み言を心の中で叫んだ神はミナトを転生させる。

腹いせに最強の固有魔法ユニークスキル【鑑定】を授けて。



真っ白な空間で神に転生の手続きをしてもらったミナトが次に目を覚ましたのは小さな揺り籠の中だった。

起き上がろうとするがうまく体を支えられない。

手を伸ばすが自分の記憶よりもずいぶんと小さな手は揺り籠の淵までなど到底届かない。


「おぎゃぁ、おぎゃぁ。」


人を呼ぼうと喉から出した声は赤ん坊のそれだった。

どうやらあの神がいうように本当に転生をしたらしい。


「あらあら、どうしたのかしら?おなかが空いたの?」


ミナトの視界が赤茶色でいっぱいになる。

そして体に感じた浮遊感。

どうやら自分は母親らしき人物に抱き上げられたらしい。


「おーよしよし、私の小さな赤ちゃん。ゆっくりお休み。」


いくら精神は高校生のままでも体の年齢には逆らえないらしい。

心地の良い暖かさと安心感、そして眠気を誘うゆっくりとしたリズムの子守歌。

ミナトはそれらにいざなわれるがまま意識を手放した。


これが神によって最強の固有魔法ユニークスキル【鑑定】を授けられた男が誕生した瞬間であった。

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