第95話 逃げるような

私は大輔さんにのんびりできる場所、と言った。

大輔さんはそれをわかっていたかのように、ラブホテルではなく、普通のビジネスホテルに入った。

いつもと違う感覚だ。

いやらしい雰囲気など一つもない。

どちらかというととてもおしゃれで、セレブ感が漂う。

そして、私たちは8階の角の一室に入った。


部屋は二つあった。

なんならシャワールームも二つ。

なんておしゃれな場所なんだろう。

一生こんな部屋に入ることなんてないだろうと思っていた。

大輔さんは私に何をするでもなく、のんびりできる空間を与えてくれた。

私はシャワーを浴びたいと言ってシャワールームに入った。

香水の香りを落とすためでもある。

タオルを体に巻いて出て行った。


そんな私を、大輔さんは緩く抱きしめて、ベッドに横たわらせた状態で、ちょっと待っててねと優しく耳元でささやいてくれた。

シャワーを浴びに行く彼の背中に少し期待をのせて見届けた。





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