第94話 他人事

学校に登校するのに、一番時間がかかるのは裕彩ではなく、愛彩だ。

いつも、朝は愛彩ちゃんおいていくよーー、と言われては焦って準備をしている。


いつかの心理士さんに聞いたことによると、愛彩については、耳で聞いて頭に入るのではなく、目で見て頭に入るタイプだと。

だから、何でも書いて説明する方が分かりやすいと言われた。

愛彩の机の回りには何時までにこれをするとかそういうのがたくさん貼ってあるのだが、それも彩幸がなぜ愛彩ちゃんだけなの?と言ってくるので、全員の分を作ることになった。


子供たちが無事登校してくれたことで安心して、家事をこなす。

掃除をしながら、片付けていた。

愛彩以外の子供たちの物や、部屋に久々に触れたような感覚になった。

愛彩に手がかかる、他の子たちは普通に手がかかる。

ひとりでどうしていけばいいのか、出口の見えないような気分だった。

でも、子供はきっと成長するはず。だから、前向きに考えようと決めた。



大輔さんとやり取りをしていて、お昼前に会うことになった。

前に買ってもらったものを着て、お化粧も頑張った。

正直、この時の私は体でなぐさめてもらおうと思っていた。

香水を少しだけふって、下着も普段付けないようなものにした。


出かけて、待ち合わせたカフェは隣町の少し静かなところだった。

そこでランチをしながら愛彩のこと、他の子供のことなどを話していた。

すごくいいアイデアを出してくれるわけでもないけど、聞いてもらっているうちに、自分で答えが出せてくる。

大輔さんってやっぱすごいなと思った。

潤のことも話した。

僕にも難しい問題ではあるから軽はずみなことは言えないけど、障害が見つかったことについてはママである私に一任しないともうどうしようもできないし、下手に口出しもできない、だから、手が追い付かない、他の子供たちに目がいっちゃうんだろうねと。


同じ子供なのに。

5人兄弟なのに。

愛彩じゃなくて、これが裕彩だったらどうしてたんだろう、もっと真剣に取り組んでくれていたのかな。

そんなことまで考えていたら、大輔さんが、

「今日はどこに行こうか?」

と言ってたので、のんびりしたい、そう答えた。

大輔さんの車に乗り、のんびりできる場所に着いた。



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