第76話 二時間のお姫様

大輔さんとお店を見て回った。

ニットのワンピースが欲しかったからどうしてもそれが目に付いてしまう。

ふかいみどりの二っとワンピースがとてもかわいい。

試着もした。

ただ、値段がけっこう高く、やっぱりやめておこうかなと思ったりもしていた。

買えない値段ではないけど、生活費からそれを出すとなると、ちょっとよくないのかなと思い、手にとっては直したり、いろんなものを見ていた。そのお店のブランドが好きなこともあり、わりとグッズも豊富で、メイクポーチも可愛いものが多かった。


大輔さんが、

「さっきのワンピース、すごくさやちゃんに似合ってたよ!」

そういって、持ってきてくれて、他に見ていたものもいくつか持ってきてくれて、あっという間に、店員さんが持ってきてくれた、買い物袋のようなものに、いっぱい、二つほどがいっぱいになる量だった。

さすがに多いし、この中から選ぶと決めていた。

大輔さんが、こちらを見てにこっと笑った後、

「これ、全部お願いします」

と言って店員さんに渡したので、待って、と大輔さんの手を取った。

「今日はお姫様、これくらいは大丈夫だから甘えて。」

そういって、8着の洋服に、バッグが二つ、アクセサリーとポーチ、靴下まで・・・。

たくさん買ってくれた。

あまりの衝撃に声を上げて喜ぶではなく、どうしようという不安があった。

それをよそに、とにかくお礼を言っている私に、

「次いくよー」

と言ってスタスタと前を歩く。

裕彩のお迎えの時間もあるから急いでいるのかなと思っていた。


化粧品売り場で、いろんなものをこれまた買おうとして、必要なものだけ手に取るようにしていたら、あれもこれもとかごいっぱいにされてしまい、すべて大輔さんが買ってくれた。

「大事なさやちゃんにひもじい思いはさせたくない」

そう言ってくれた。

本当に、お姫様の気分だ。


カフェに入って、荷物を眺める私を見て、にこにこした大輔さんが、

「お迎えの時間もあると思ったからさ、少し強引だったけど、俺からのプレゼントだよ」

そう言ってくれた。

うれしいけれど、こんなにお世話になっていいのかなともおもった。

冗談めかしに、

「返して!って言っても返せないよ?」

と言ったら、大きな声で笑った大輔さんが、

「そんなこと言わないから、受け取って!」

と言ってくれた。


お迎えの時間になり、それぞれの車に乗る前に、キスをした。

少し長めのキスをした。

キュンキュンして、それから、お互いにまた連絡するねと言って、

現実に帰る用意をした。


二時間でこんなにたくさんの買い物はしたことない、ほしいものは全てそろってしまった。

何でも手に入れられるお姫様の気分だった。



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