第75話  お金と価値

我が家は潤がそこそこ稼いできてくれている。

私も裕彩が保育園に入る前から少し品出しの仕事に出たりもしていたが、今はお休みを頂いている。学生のアルバイトがたくさんいるから少し休んでいる。

それでも贅沢はできないけど十分生活ができ、外食もできる。

でも、少し、自分のものを買うのは気が引ける。

ほしいものを買うときは潤に相談して買っている。

時にはそれはいらないでしょ、と言われ諦めることもあった。

必要最低限のものは持っているが、それ以上に、ほしいなと思うものや、便利なものは買っていない。


そこで、携帯で見ていたものでほしいものがたくさんでてきた。

物欲はそこそこ備わっているのだ。

美容に使うパック、綺麗な色のアイシャドー、そして、冬に可愛いニットのワンピース。

誕生日はもう過ぎたし、買ってとは言いにくい。


そんな時、大輔さんから電話があって、話していた。

ほしいものがある話もしていたし、とくにおねだりしているつもりもなかった。

一旦電話を切ると言われ、夕飯のことを考えながら、冷蔵庫をごそごそしていたら、また大輔さんから電話があり、今から出かけよう、いつものところで待ち合わせだよと言われた。


急いで着替えを済ませ、髪の毛もなんとか整え、運転しながらメイク直しをして、待ち合わせのカフェに入った。

大輔さんはもうついていて、私をみつけたら、こちらに来てお会計をしていた。

不思議に思っていたら、

「今日はさやちゃんの買い物だよ」

そういわれ、財布の中身がいくら入っていたか、ちょっと思い出しながら、ATMに行くことを考えていた。


「お買い物に付き合ってくれるの?嬉しいな、何が似合うかとか言ってね」

と言いながら、ATMを探そうと、ショッピングモールに入ってからきょろきょろしていた。

大輔さんは、早く見に行こうと、腕を少し引っ張ってくれたので。

「急いで出てきたから、お金をおろさなきゃ、ATMどこだっけ?」

というと、

「俺が全部買ってあげる。全部買ってあげるから、さやちゃんは選ぶだけだよ」

そういって、また私の腕を今度優しくつかんで、行こう、と言ってくれた。

そこまでは望んでいなかったけれど、とにかくほしいものがあるかどうかもわからないから、うろうろすることにした。



買ってもらうなんて幼少期以来かも・・・

少しお姫様気分になる。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る