第60話 浮いたまんまの足

携帯を片手にいつものように朝一番に潤を送り出してから、子供たちの朝ごはん…ちょっと前なら子供たちの好みに合わせていたけれど、今日は春樹と会う日だ。

急いでいる。

なかなか起きてこない彩斗にもイライラする。

彩南は朝から髪をとかし、後ろにひとつに結んでいた。

鏡ばかり見ている。

そんな年頃なのか。

彩幸は起きたら1番にテーブルにあるパンを選んで自分の分と、牛乳を冷蔵庫から出し、優雅に朝食を。

…登校30分前までに起きる約束なのに、15分前になっても起きない。

彩南や彩幸に起こして欲しいとお願いしても、マイペースな2人の耳には届かない。


「あーやーとーっ!!」

ほぼ、叫び声で彩斗を呼ぶ。

布団の中から

「んー」

とだけ声がした。

愛彩に、お兄ちゃんを起こすようにお願いしたら、彩斗の布団の上から愛彩が乗っかった状態で、愛彩が声をかけていたら、彩斗がそのまま起き上がったから愛彩がバランスを崩して後ろにひっくり返って頭を打った。

当然愛彩は泣きわめく。

その声にビックリした裕彩が泣きわめく。

朝からなんて地獄…

自分のことだけを考えていたからイライラが抑えきれなくなってしまう。


「彩斗!何時だと思ってるの!!早く寝ないと朝起きれないよって何度も言ってたのに!遅くまで起きてるから朝起きれなくなるんでしょ!」

おしりを思い切り叩いた。


そこまではしつけだと思う。


そこに、

「早く寝たもん」

と、彩斗が嘘をついてきた。

いつも21時には寝るのに22時30分までゲームを布団の中でやっていたことはバレている、彩斗の布団だけゴソゴソ音がしていたからすぐにわかった。


「嘘つかないの、寝る時間が遅くなってたからでしょ?早く準備してそこのパン食べて!顔洗うんだよ!」

そう言ってもなかなか動かない。


集団登校の時間まであと10分もない。


集団登校で間に合わない児童は保護者同伴で学校にいかなければならない決まりがある。


彩斗は、着替える服をだして着替え出したが寝ぼけているのか手も遅い、ボタンかけ違え、とにかく睡眠不足のようだ。


手を貸してやりたいけど…

自立をある程度させてあげないと…

でも今日は…


色んなことが頭をグルグルし始めた。


「だから言ったじゃない!なんで、こうなること分かってて隠れてゲームしてたの!さっさと学校行きなさい!」

と、少し乱暴ではあったけれど、着替えを手伝った。

半泣きの彩斗を玄関先で、彩南と彩幸が待っている。


朝ごはん抜きにさせて、

「もう早く行きなさい!!」

と怒鳴った。


春樹とデートの日は必ず何かある。

焦る気持ちがこんな風に子供とガヤガヤしないといけないのは少し嫌だけど、帰って来る頃には子供たちも気分も変わって、帰って来るだろう。

愛彩と裕彩を車に乗せて、愛彩を保育園に送り届け、やっと春樹とのデートだ。

コンビニの駐車場で素早くメイクをして、スカートにだけ履き替え、香水を軽くふった。


足取りは軽く、もうすぐ春樹に会えると思うと足が勝手に踊り出しそうになる。


このドキドキがまた私を

「女」

にしてくれるのだ。





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