第61話 子育て子育て子育て

ある日、愛彩が言う。

「ママ、今日の夕飯は何?」

私はこれを聞かれるのが大嫌いだ。

何にしても急いでいるのに、これからしようということに対して、急かされてる気分になってしまう。

だからいつも、余裕なく言葉にでてしまう。

「なんでもいいでしょ」

言った後、愛彩は

「何かなぁ、何かなぁ。」

と、楽しそうにしている。

それを見ては直前の自分の言葉と一瞬の自分の汚い心に罪悪感を感じる。


春樹と会うことが多くなって、潤には完全にわからないようにと思ってやっているうちに、他のことが面倒になってくる。


彩南、彩幸、彩斗、愛彩は自分たちでお風呂に入らせる。

4人で浴槽に入ったり、なんだかんだ騒いだりしながら入ってくれている。

その間に夕飯の準備をする。

最近はチャーハンと中華スープや、カレーなどの簡単ですぐできるものをよく作る。

とはいえ、大家族なので作る量が違うからどうしても時間もかかる。

野菜も細かく切って入れる。

そこまでやらないと食べてくれないものもある。

最低限はしてやらないとと思うのだが、自分に余裕がない。

その理由は自分でもわかっている。

優先すべきは家庭だということ。

最優先にするべきは子供だということ。


わかっているのに、なぜかおろそかになってくるのだ。

そのうち、誰かが喧嘩しても私が止めることがなくなり、気が済むまで喧嘩をするということになってきた。

それでも大きなけがはしないと思っていた。


がこん、と音がした。

それと同時に頭を押さえた彩斗がこちらに向かってきた。

彩幸と喧嘩をして、そこらへんにあった愛彩と裕彩の使っているおもちゃで彩幸に投げつけられたと彩斗が逃げてきたのだ。


さすがにだめだと思った。

物を投げつけるなんて、これはと思い、

彩幸に

「さゆちゃん、なんで彩斗にこんな堅いもの投げたの?」

彩幸はちょっと怒られるのかなといった顔をしていた。

返事をしないことから、

「お返事もしてくれないのね、じゃあ出て行って」

と言って玄関にむかって彩幸を抱えて、玄関の扉と部屋に入るまでの間の靴がならべてある場所に彩幸を閉じ込めた。

「いやーーー!ママ!ごめんなさい!」

しばらくしたら、彩幸の鳴き声が聞こえた。

きっと、隣近所にも聞こえているだろう。

それでも、物を投げつけることは許されることではない。

それをわかってほしいから、そのままにして、他のことをする。


彩南は、またなにかしたなという顔をしていた。

彩斗は投げつけられたところを冷やしてやって、愛彩は裕彩の面倒を見てくれていた。

どこであの扉を開けて彩幸を許そうか、考えていた。





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