第56話 長女あれこれ
私が生まれた日、ママはすごくお腹が痛かったけど、とても嬉しかったと話してくれた。
私の記憶では、すでに赤ちゃんの彩幸がいた。
ママに構ってもらいたくて、彩幸の面倒を一生懸命みていた。
彩幸の面倒を見て、賢くしていたら、私のことをたくさん褒めてくれる。
パパは仕事が忙しいとあんまり遊んでくれなかったこともあったけど、それでも愛彩ちゃんが生まれるまではとても楽しかった。
パパの会社の人たちがよく遊びにきてくれて、おやつをくれたり、おもちゃをくれたり、水鉄砲であそんだり、シャボン玉で遊んだり・・・
とても楽しかった。
庭先で食べるおにぎりはいつもよりとてもおいしくて、魔法がかかってるみたいだった。
彩幸が生まれて、彩斗が生まれて、愛彩ちゃんがママのお腹にきてくれたくらいの時から、ママとパパは別人になった。
きっとまた二人とも喧嘩してしまったのかな?と思った。
そして、愛彩ちゃんが生まれる前に、パパは仕事が忙しくなるからと別でお家をかりたといって、帰ってこなくなった。
変なムードはなくなったけど、とても寂しくなった。
ママには悪いけど、私はパパも本当に大好きだったから、ママが夜に彩幸を寝かしつけたあとに、寝たふりをしておいて、夜な夜な静かに泣いていた。
ほどなくして、パパとママは離婚した。
パパとは学校がない日は会えるし、一緒には住めないけどいつでも会いに来てもいいけど、ままを手伝ってあげてねと言われた。
突然のことだったけど、いまいち私にはわからなかった。
パパが家にいなくなってからは私が朝から彩幸と彩斗を起こして朝食の準備や、片付け、前の日に部屋干しされたであろう洗濯物を畳んだりしていた。
それでもママはお腹の赤ちゃんのこともあってかピリピリしていた。
そんな時に私が彩幸と大喧嘩した。きっかけは色鉛筆の使い過ぎ。
この喧嘩はよくある喧嘩だったけれど、ママはそのたびにきちんと私や彩幸にわかるように、話をして、お互いに謝り、姉妹が仲直りするという感じだったけれど、愛彩ちゃんが生まれて少ししてからのこと。
いつものように彩幸と大喧嘩していたら、彩斗が止めに入り、それも気に入らなくて、彩斗を軽く突き飛ばしたら彩斗が泣き始めて、それがきっかけで愛彩ちゃんまで泣き始めた。
その時のママの顔は忘れられない。
鬼の顔だった。
私も、彩幸も、彩斗も、愛彩ちゃんも、おもちゃ部屋に閉じ込められたのだ。
ママは我慢の限界になるとそうして、おもちゃ部屋に閉じ込めてはしばらく開けてくれない。
謝り続けてしばらくしたら、目を真っ赤にしたママが優しく開けてくれる。
開けてくれた時に抱き着いて謝るのはいつも彩幸だ。
ずるい、とおもうけど、私はお姉ちゃんだからと、愛彩ちゃんを抱っこしてごめんなさいといい、彩斗にも謝ることを促して、事なきを得る。
たまにそういうことがあったけれど、ママが機嫌がいい日が続くなと思ったら、ある日突然遊びに来た男の人。
あげく一緒に暮らすようになったんだから、本当に大人はわからない。
おまけに赤ちゃんができて結婚?
ママはいつになったら私に構ってくれるんだろう。
毎日少しずつその思いが強くなっても誰にも吐き出せずに胸に秘めている。
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