第38話 心のざわつき

生まれてきてくれたことにありがとう。

さやか、よく頑張ったね、男の子だって!

生まれるころには、もう誰の子というより、家族という大きいくくりで考えるようになった。

会社に行けば、この赤ちゃんの父親がいる。

一切の情報を彼には伝えていない。

そこだけはちょっとプライドがたった。


男の子の育児は初めてだから、本当に大変そうだった。

それでも、準備していたものを使ってみたりしたら、可愛くて可愛くてしかたなかった。

さやかによく似た男の子だ。

父親は自分だ。

種親が違うだけだ。

お腹に宿った時から、生まれてくる瞬間から、今も、一緒にいるのは自分なのだから、自分が父親だと、心からも納得できたと思っていた。


ますます仕事を頑張ろうとしていたが、さすがに三人ともなると、さやかも心配だなと思った。

さやかのお母さんが手伝いに来てくださっていたのが本当に助かった。

仕事が早く終わる日は子供とお風呂に入るのが日課となる。

疲れているはずなのに、子供たちの顔を見るとなぜか疲れなんて吹っ飛んだ。


子供たちが寝静まったあとに、音を立てないように、子供たちの明日の準備や、自分の寝支度をしているさやかが、ある日、とても愛おしく思った。

とても愛おしい。

過去はあったけど、今はそれも、すべて納得して自分の中で消化できている・・・。

さやかを抱くことはとても自然な順序だった。


きっとこのままだったら心のざわつきに気づくこともなかったのかと言われてみればそれは嘘になる。


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