第34話 残ったもの

新しく家を探す。

子供たちにきちんと今の状況を話す。

経済的にもやはり少しでも働かないとやっていけないから臨月まで品出しの仕事を復帰させてもらう。


自分の中で心の整理よりも先に現実の整理をしなければならない。

寂しいおもいや、ひもじい思いを子供たちにさせたくない、だから、物件選びも安くてできるだけ子供たちの様子が見渡せるような家にしたいと思った。

小さい間だけでも、とにかく中学校に彩南が入学するころにはもう少し広いところに引っ越しできるようにしておこうと、必死で探した。

アパートが一番にみつかり、保育園からもそんなに遠くなく。

職場にもお願いして働けることにもなった。


荷物を少しずつ運び、冷蔵庫などの家電は全て夫が持たせてくれたおかげで引っ越しも最小限で価格をおさえることができた。

これは全て、私のためではない、子供たちのためなのだ。

寂しいなんて言ってられない。


おなかの赤ちゃんも元気だし、子供たちも元気だし、私は

母親として、一生懸命頑張るしかないのだ。


新しいアパートに今まで住んでいた家電やタンス、いろいろなものを置くとあっという間に部屋が埋まってしまった。

必要なものだけを持ってきたつもりだったのだが、あの広い大きな一軒家から持ってきたものは全てがあの家にあうものだったからかもしれない。


日常を取り戻し、毎日子供たちと、赤ちゃんと穏やかに過ごせたらいいなと思った。


夫には月に一回と言わず、お泊りに行ってもいいし、子供たちが思うようにしていいと伝えていたが、しばらくはパパに会いたいとは言わなかった。

きっと、長女が気遣っているのかもしれない。

子供たちにも傷をつけてしまったのだと思うと、胸が痛かった。

新しい生活を0からとはいかないもんなんだと痛感した。



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