第32話 紙婚
答えは産む。
これしか私にはない。
夫を説得しようとしたけれど、夫の思いは変わらない。
別居を選んででも産みたい。
だからと言って、そんな簡単にはいかない。
私が家を出ることはできないし、子供たちに何と説明していいかわからない。
話し合った結果、夫が安いアパートを借り、仕事が忙しくて、夜遅くなるから少しの間だけと子供に話した。
子供たちはちょっと寂しそうだったけれど、勘のいい長女の彩南は私の顔を心配そうに見つめていた。
大丈夫、ママとみんなでいつもどおりだよと説得した。
別居となると、お風呂も一人で入るわけにもいかない、家事も仕事もある。
それでも、乗り越えて、この子を産んであげたい。
それまでに、夫の気持ちが変わってくれることを願っていた。
長女は保育園で少しおとなしくなってきたと言われた。
あと一年したら、小学校だ。
発達に問題がないか一応調べてくださいと言われた。
仕事も休みがちになり、彩幸と彩斗は保育園、お迎えまでに仕事、家事を少し済ませて・・・。
思えば、お姉ちゃんだからとなんでもできるように彩南にたくさんのことを教えすぎていたせいかもしれない。
子供たちにも影響はあるもんなんだなと思った。
子供が不幸になることだけは避けたい。
彩南は発達に遅れはなく、ただ、ストレスでよくお腹を壊すようになった。
下のきょうだいの面倒を見てもらったり、一緒に子供たちだけでお風呂に入ってもらったりしていたからきっと疲れてきたのだろうと思った。
わたしが選んだことはいつも誰かに迷惑をかけてしまう。
次第にその気持ちが強くなり、つわりもひどくなり、何もできなくなってきた。
自分が過ちを犯しているのに、その過去は変えられないのに、今の生活すらまともにできなくなり、胸を張ることもできない、母親として、できることをまったくできなくなり、実家の母に泣きついた。
実家の母は、すべてわかっていたかのように、子供たちにご飯を作り、お風呂に入る子供たちにずっと声をかけ、彩南にはとくに優しい言葉をかけてくれていた。
母は、この生活は破綻している、または破綻直前だと。
仕事に行くのはまず無理だ、そうなると生活はどうするのかと。
紙の上では夫婦だけど、今のままだと母子共倒れとなる。
私は最後の覚悟をもって話があると、夫を呼び出した。
子供を寝かしつけて、起きてもわかるように実家の母が寝室にいてくれた。
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