第30話 苦しみ
耳を疑った。
彩斗は今、2歳。
あの頃から2年は経っている。
まさかそんなことを言われるとは思わなかった。
夫は冷たい目だった。
とても冷たい目だった。
もちろん夫の子だし、この二年、ずっと子供たちのこと、夫のこと、家族のこと、将来のことを考えて、毎日を過ごしてきた。過去の過ちは許されないことではあるけど、夫の広い心で一緒にいてくれていた。
愛してくれていた。
妊娠を伝えた瞬間、その場は北極のように凍り付いた。
一ミリも顔が笑わない、冷たい目つき。
夫に
「そうだよ、あなたと私の子だよ?」
そういったあと、黙ったまんまだった。
過去に私がしたことで傷つけているのはわかるけれど、もうそんなことはしてないし、余計なことも考えていなかった。
こうして子供を育て、家庭を築いていくものだと思い込んでいたのは私だけだった。
そのままお互いに無言になって、夫はその後一週間口をきいてくれなかった。
子供たちとはたくさん遊んでくれたし、世話もしてくれた、子供たちの前では私にも話しかけてくれた。
子供たちが寝静まると、私に背を向けたままで夫は過ごし、自分の寝たい時間になれば、黙って布団につき、私とは反対になり、背を向けて寝ていた。
つわりは始まっていたけれど、それよりも、夫のその態度が悲しかった。
過去は過去と思っていたのは私だけだった。
夫に負わせてしまったものは大きな大きな傷だった。
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