第29話 負わせてしまったもの
夫とはあれから何度も夜を重ねた。
子供たちが寝静まってから二人の時間が多くなったからだ。
お互いを気遣い、子供のことも一緒にかんがえていけるようになっていた。
夫の仕事も落ち着き、帰ってくる時間も早くなってきた。
ちょうど、夕食時に帰ってきて、子供たちが迎えてくれる、そして、続きをみんなでテーブルを囲む。
お風呂は夫が子供と一緒に入ってくれることも多くなり、私は自分の時間もどんどん作れるようになり、心の中に少しだけ余裕ができた。
どこかで立ち読みしていた雑誌に載っていたコスメが欲しいなと夫に言っていると、次のお休みに子供を遊ばせるついでにショッピングモールに行って、買ってあげるよと言ってくれた。
その日を楽しみにまた頑張ろうと思えた。
私はごく普通の主婦として生きることができている。
幸せだ、不満はない。
朝起きた時の気分の悪さから、これは?と思い、仕事が終わってから、検査薬をしてみたら、陽性だった。
四人目だ。
正真正銘、夫の子。
本当に夫の子。
夫に話すのを少し躊躇してしまうのは彩斗の出生のこともあるからだ。
でも、もうやましいこともない、嘘もついていない、本当に、夫の子を身ごもったのだ。
夕食が終わり、夫が子供たちをお風呂にいれてくれ、私もその間に保育園の用意などをすませて、お風呂に入り、子供たちを寝かしつけ、うたたねしていた。
そして、物音で目が覚めた。
夫が小腹がすいたと、卵を焼いていた。
その匂いがちょっと苦手な臭いだと思った瞬間気分が悪くなり、お手洗いに駆け込んだ。
出てきた私をみて、夫は、
「風邪ひいた?」
と聞いてきた。
ここで切り出そう。
喜んでくれるといいな、そう思いながら・・・。
「実はね、ここ最近気分が悪くて・・・検査薬したの、陽性、妊娠したよ、四人目!」
喜んでくれるかなと思った。
まさかそんな言葉がはかれるとは思わなかった。
「それって、俺の子?」
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