第17話 夫の純粋
沈黙が続き、そのまま時間が凍っているかのようだけど、刻一刻と過ぎ去っていく。
時計の針が時間を刻む音だけが大きく聞こえてしまうほどの沈黙の中、夫のすすり泣く嗚咽だけが静かに部屋に響く。
それからどれくらいたっただろう。
夫が口を開いた。
「さやかのお腹の中にいる子は全部俺の子だよ」
そう言った。
夫の優しさは大人を超えて純粋無垢と言えばいいのだろうか。
夫は、自分に落ち度があるととらえた。
妻を「母」のように扱っていたのかもしれない、結婚当初の甘い関係でいられるわけではない、現実がおしよせてくるのだから・・・でも、配慮が足りなかった、だから、さやかをこんなふうにしてしまったと・・・。
私はそれを聞き、今まで出したことのないような声で泣いた。
大きくもなく小さくもない、でも、いろんな感情でわけのわからない何とも言えない、確かでも不確かでもない、そんなどうしようもない感情のなか、こらえきれないものがあり、泣いた。
夫婦の在り方とは人それぞれとはいうけれど、私は恵まれているではないか、なのに・・・。
お腹の子には罪はないけれど、私は大きな大きな罪を背負っているんだと、思い、夫に尽くしていこう、そう決め、今後のことを話し合い、夜が更けていった。
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