第5話 彩南の母だ
私は長女が生まれた日、ちょうど月が南に出ていた。
太陽はみんなを照らすだとか、元気だとか、そういうイメージがある。
実際に早く結婚した友達の子供の名前が「太陽」という名前をつけてるのもあり、お日様があれば、お月さまもある、どちらもなければならな存在ではあるけれど、月は癒し、静かな夜、そんなイメージがあった。
それに、人生に彩りがたくさんあればとおもい、
「彩南」
さいな、と名付けた。
そう、彩南がお腹に宿った時から、私は「母」だった。
彩南を産んだ時、「母」だった。
次女がお腹に宿ってくれたときも、「母」だった。
だけど、私の中で何か物足りなさを感じてきた。
何が、物足りないのか。
生活は苦しくもない、一軒家、車もある、充実した暮らしのはずが、何か足りない。
もともと、私はおしゃれが大好きで、それこそ、近所にちょっと出かけると言っても、ジュースを買いに自販機へって時でも、ばっちりメイクをしていた。
私は女性らしさというものにすごく憧れていた。
特に好きな女性芸能人はいなかったけれど、痩せ体質でもあるから、出産しても、
「ママに見えないね」
と、言われるほど、顔も幼い顔立ちだった。
だけど、物足りない。
それが亮君との関係に変化があった時に、開花したのだ。
そう、刺激が欲しい。
女性として見られたい。
誰からも愛されたい。
欲望が尽きない人間なんて存在しないのだからと自分を正当化する日々が始まる。
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